ブックタイトルわかる!身につく!生物・生化学・分子生物学 改訂2版

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概要

わかる!身につく!生物・生化学・分子生物学 改訂2版

8.酵素:反応速度を高め,代謝を調節するタンパク質  938医療と酵素1.医薬と酵素 疾患のなかには酵素が欠損して起こるもの,あるいは酵素が疾患の進行に深くかかわるものがあり,疾患に対して酵素を人為的に追加したり阻害するなどの措置がとられる.a 酵素医薬 酵こうそいやく素医薬で多いものはペプシン,トリプシン,リパーゼなどの消化酵素で,消しょうかほじょざい化補助剤として,酵素によっては消しょうえんざい炎剤として用いられる(表8-3).リゾチームも抗菌消炎剤となる.このほかには,血栓溶解剤,血清脂肪改善剤,ラクトース(乳にゅうとう糖)不ふたいしょう耐症(小腸粘膜細胞のラクトース分解酵素の欠損・低下によりラクトースが消化できず,下痢症状を呈する.牛乳を飲むと下痢をする)の治療薬としても酵素が使われる.b 酵素阻害剤 医療分野で使用される酵こうそそがいざい素阻害剤はほとんどが可逆的阻害剤である(p.94,表8-4).抗生物質,低分子化合物など,細胞に入りやすいものが使われる.ウイルスの酵素を阻害するものは抗ウイルス薬として重要である. 抗インフルエンザ薬としては,ノイラミニダーゼ阻害薬のオセルタミビル(タミフルR)やザナミビル(リレンザR)などや,RNA ポリメラーゼ阻害薬のファビピラビル(アビガンR)がある.これらに加えて,2018年春に承認された新しいタイプの抗インフルエンザ薬バロキサビルマルボキシル(ゾフルーザR)は,ウイルスのもつ酵素のキャップ依存性エンドヌクレアーゼを阻害する.この酵素は宿主細胞のmRNA の5? 末端のキャップ領域を切断し,これを自身のゲノムRNAの転写に使う.解 説 新しい抗インフルエンザ薬F表8-3 医薬として用いられる酵素酵素名作 用適応例ジアスターゼ(アミラーゼ) デンプンの分解消化補助ペプシンタンパク質の分解消化補助トリプシンタンパク質の分解抗炎症作用リパーゼ脂質の分解消化補助キモトリプシンタンパク質の分解抗炎症作用プロメラインタンパク質の分解抗炎症作用リゾチーム細菌の菌体分解抗炎症作用,抗菌トロンビン血漿中のフィブリノーゲン分解止血,血液凝固ストレプトキナーゼ* プラスミノーゲンの分解,活性化血栓の溶解ウロキナーゼプラスミノーゲンの分解,活性化血栓の溶解エラスターゼタンパク質の分解血中脂質の改善プロナーゼタンパク質の分解抗炎症作用ガラクトシダーゼラクトースの分解ラクトース不耐症治療カリクレインキニノーゲン キニン降圧剤(高血圧治療薬)アスパラギナーゼl -アスパラギンの分解抗がん剤,抗白血病薬* 溶血性連鎖球菌の毒素でもある.