ブックタイトルわかる!身につく!生物・生化学・分子生物学 改訂2版

ページ
3/12

このページは わかる!身につく!生物・生化学・分子生物学 改訂2版 の電子ブックに掲載されている3ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

わかる!身につく!生物・生化学・分子生物学 改訂2版

36  Ⅰ. 生物編 多細胞生物に限らず,分ぶんか化は生物に特徴的な性質の1つである(単細胞生物にも細胞形態の変化や増殖性変化といった「分化」が起こりうる).分化細胞の元になる細胞を幹かんさいぼう細胞というが,分化が起こるときは幹細胞が1個複製されると同時に分化細胞が1個できる(図).組織にある組そしき織幹細胞には表皮幹細胞のように単一の分化細胞をつくるものや,骨こつずい髄中の幹細胞のように複数の細胞に分化できるものがある.p.289で述べる胞胚の内部細胞はほぼすべての細胞に分化できる多たのうせい能性幹細胞(一般には万ばんのうさいぼう能細胞の名で知られている)で,この細胞を培養したものをES細胞(胚はいせい性幹細胞)という.受精卵は完全な1個体をつくる能力をもつ全ぜんのうせい能性細胞である.植物の細胞は全能性細胞である.幹細胞分化細胞複 製図 幹細胞は分裂して1 個の分化細胞と1 個の幹細胞になる解 説 分化と幹細胞ヒトの発生1.性周期 哺乳類の雌ではホルモンにより,卵巣や子宮といった生殖器官に性せいしゅうき周期といわれる規則的な変化が起こる(図3-8).脳下垂体前葉からは卵らんほうしげき胞刺激ホルモン(濾ろほうしげき胞刺激ホルモンともいう)と黄おうたいけいせい体形成ホルモン(黄体刺激ホルモンともいう)が分泌され,前者は卵胞を発達させ,後者は卵胞からの排卵と黄体の形成,そして黄体ホルモン分泌促進や乳腺の発達にかかわる.一方,卵らんそう巣からは生殖器の発達,排卵促進,子宮肥厚にかかわる卵らんほう胞ホルモン(濾ろほう胞ホルモン,女じょせい性ホルモンともいう)が分泌される.黄体ホルモンは卵巣にできる黄体から分泌されて妊娠の継続と排卵の抑制にかかわるため,妊娠中に新たに受精することはない.受精すると黄体ホルモンが出産までの期間,子宮内膜の肥厚を維持し,胎盤からも黄体形成ホルモンが分泌される.出産が近づくと黄体形成ホルモンが低下し,脳下垂体後葉から子宮収縮ホルモンが分泌されて分娩が起こる.受精しない場合は黄体ホルモンの分泌が止まり,子宮内膜は崩れて排出される(月げっけい経.周期はヒトでおよそ28日).2.排卵から出産 卵巣から排卵された卵細胞は減数第二分裂の中期で分裂の進行が停止しているが,輸卵管中で受精すると減数分裂を完了し,すぐに卵割を始め,そのまま子宮へ移動する(図3-9).ヒトの場合,受精後4 ~ 5 日で胞胚すなわち胚盤胞になって子宮壁に着ちゃくしょう床し,成長し始める(~ 6 日目).その後1 ~ 2 週間かけて原腸胚,3 ~ 4 週間かけて神経胚から尾芽胚となり,器官形成が進む.中胚葉の一部は子宮に入り込んで臍さいたい帯(へその緒お)となり,母体から栄養や酸素が供給される.胚は2カ月経つとほとんどすべてD