ブックタイトルまるわかり!基礎生物

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まるわかり!基礎生物

116分子標的薬 ― 新しい創そう薬やくの戦略 タンパク質の機能は何によって決まるのでしょうか.第10 章で学んだように,タンパク質は遺伝子の情報に基づいて,まずアミノ酸の配列(一次構造)が決まります.次に,この一次構造をもとにタンパク質の立体構造(二次構造,三次構造)が決まります.そして,この3 次元の立体構造こそが,受容体の結合特性や酵素の基質特異性など,それぞれのタンパク質がもつ固有の機能に関わっているのです.まさに,ミクロやナノのレベルで「形態(かたち)」と「機能(はたらき)」とが不可分に結びついています. 現在の知識では,アミノ酸の配列から立体構造を完全に推測することはできません.しかし,単離され精製されたタンパク質の立体構造を解明する技術はすでに確立されています.条件が整えば,タンパク質で最も重要な部分(活性中心)の立体構造を原子レベルで明らかにすることが可能です.この技術を新薬開発に役立てているのが,分子標的薬あるいは分子標的創薬です. これまでの(今でも)新薬開発は,自然界に存在する化学物質や,さらにそれをもとにして合成されたさまざまな化学物質を,かたっぱしからテストするという方法で行われてきました.もちろん,この方法で多くの新薬が生まれてきたのは事実です.ただし,この方法は効率が悪く,膨大な時間,経費,マンパワーが必要です.そこで,薬物治療の上で標的となるタンパク質を絞り込み,その活性中心の立体構造を明らかにして,その部分にぴったりとはまり込むような物質を,あらかじめデザインしようというアイデアが生まれました. たとえば,あるがん細胞では,上皮細胞成長因子受容体(EGFR)と呼ばれる分子の一部に変異があり,異常な細胞内情報伝達の結果,細胞が悪性化することが知られています.そこで,この異常なEGFRの立体構造を明らかにし,その部分に強固に結合して異常な細胞内情法伝達を遮断することのできる分子(ゲフィチニブなど)がデザインされました(図).このような分子標的薬物は次々と開発されています.病気のしくみの細胞レベルでの理解,タンパク質の立体構造の解明,薬物となる分子の合成など,さまざまな領域の科学が先端医療を支えていることがわかるでしょう.ワンポイント生物講座応用編!活性中心デザインした分子標的薬(ゲフィチニブなど)本来結合するはずの物質(がんの増殖因子など)結合の阻害構造を調べて… 分子標的薬で,がんの増殖などの機能を阻害する細胞内第9章 ● タンパク質の基本的性質