ブックタイトル創薬研究のための薬事と知財の連結戦略ガイド

ページ
8/10

このページは 創薬研究のための薬事と知財の連結戦略ガイド の電子ブックに掲載されている8ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

創薬研究のための薬事と知財の連結戦略ガイド

151│ 5 - 2 ナルフラフィンの創薬事例事例解析臨床試験の経過と開発方針の転換 臨床試験は1990 年代半ばから開始されたが,第Ⅱ相試験の結果から,術後疼痛の患者で中等度の鎮痛作用は認められたものの,用量を上げた場合には安全域(十分な治療効果を示し,なおかつ重篤な有害事象を生じない血中薬物濃度の範囲)がせまくなることが予想され,モルヒネや既存の鎮痛薬に対する優位性は期待できないと判断された.したがって,鎮痛薬としての開発は中断することになった.開発段階としては,基礎研究,前臨床試験,第Ⅰ相試験,第Ⅱ相試験と進んできたところで,登山に例えると,ちょうど7 合目あたりのところであった. こうしたとき,開発部門では,それまでの臨床試験データを総ざらいして今後の開発可能性を徹底的に吟味するものである.その結果,意外な事実が見いだされた.治験に協力した約100人にも及ぶナルフラフィン投与の被検者のなかに,痒みを訴える者が全くいなかったのである.実は,麻酔科などの臨床現場では,モルヒネなどのオピオイドμ受容体作動薬は強力に痛みを抑えるものの,かなりの頻度で痒みを誘発するという意外な現象が従来から観察されており,原因不明の現象としてとらえられていた.データ点検後に,麻酔科医とのあいだでナルフラフィンでは痒みがいっさい誘導されなかった点が議論されたが,結局,明確な理由はわからなかった.図5 -2 ナルフラフィンの化合物設計OHO OOHN OH OH NNHアクセサリー部位の最適化オピオイドκ受容体拮抗薬norBNIOCH O 3OOHN OHNオピオイドκ受容体作動薬ナルフラフィン