カテゴリー: 総合診療医学/プライマリ・ケア医学
緩和ケア ポケットマニュアル
改訂2版
湘南鎌倉総合病院 総合診療科 宇井睦人 著
定価
2,420円(本体 2,200円 +税10%)
- 三五変型判 220頁
- 2022年4月 発行
- ISBN 978-4-525-20982-7
現場でサッと開いて,すぐわかる!
医師・看護師・薬剤師などが必要な事を現場でサッと確認できるマニュアル本.
緩和ケアの疼痛コントロールを中心に,病棟・外来・在宅など具体的な利用シーンを踏まえた豊富なTipsを簡潔に記述.巻末資料にはオピオイド換算表などがまとまっており,現場で本当に必要な情報を持ちやすく見やすいサイズにまとめました.通読すれば緩和ケアに必須の知識を一気に獲得することも可能です.
- 序文
- 目次
- 書評
序文
初版発行後の3年間で,私は二人の祖母を失った.母方の祖母が亡くなったのは昨日である.コロナ禍のため,孫である自分も葬儀にすら参列できない.やり場のない喪失感をどうすれば良いのかわからず,目に涙を浮かべながらこの原稿を記している.
緩和医療の業界では,この3年間でヒドロモルフォンとメサドンが一定の評価を獲得し,「非がんの緩和ケア」という言葉をよく耳にするようになった.医療者主導のアドバンス・ケア・プランニング(ACP)は隆盛を極め,意思決定支援やグリーフケアの方略も一見大きな進化を遂げているように感じるが,総合診療と緩和ケアを専門とする私は,自分自身のスピリチュアルペインでさえ癒せない.
しかし,それでも,と思う.
「おかげさまで痛みが取れて仕事に復帰できました」という患者さんの喜びや,「先生の的確な投薬のおかげで苦しまずに逝けました」というような想像を絶する衰弱と死の過程を乗り越えたご家族の声を聞くたびに.人の心の深淵にはまだ届かないが,症状を緩和することの有意義さとその価値を,このマニュアルを通して私は伝えたかったのだと思う.
現場に即した一冊として,緩和ケアに関わる多くの方に手に取って頂ければ,筆者望外の喜びである.
2021年12月
前日に祖母を亡くした深き喪失の日に
宇井睦人
緩和医療の業界では,この3年間でヒドロモルフォンとメサドンが一定の評価を獲得し,「非がんの緩和ケア」という言葉をよく耳にするようになった.医療者主導のアドバンス・ケア・プランニング(ACP)は隆盛を極め,意思決定支援やグリーフケアの方略も一見大きな進化を遂げているように感じるが,総合診療と緩和ケアを専門とする私は,自分自身のスピリチュアルペインでさえ癒せない.
しかし,それでも,と思う.
「おかげさまで痛みが取れて仕事に復帰できました」という患者さんの喜びや,「先生の的確な投薬のおかげで苦しまずに逝けました」というような想像を絶する衰弱と死の過程を乗り越えたご家族の声を聞くたびに.人の心の深淵にはまだ届かないが,症状を緩和することの有意義さとその価値を,このマニュアルを通して私は伝えたかったのだと思う.
現場に即した一冊として,緩和ケアに関わる多くの方に手に取って頂ければ,筆者望外の喜びである.
2021年12月
前日に祖母を亡くした深き喪失の日に
宇井睦人
目次
prologue 緩和医療の現場で心がけていること
第Ⅰ章 緩和ケアの入り口
Ⅰ-1 緩和ケアの定義
Ⅰ-1-A WHO(世界保健機関)の緩和ケアの定義
Ⅰ-1-B 緩和ケアの定義に関する詳細
Ⅰ-2 全人的苦痛(トータルペイン)の考え方
Ⅰ-3 疾患の経過(illness trajectory)
Ⅰ-4 予後予測
Ⅰ-4-A PiPS models
Ⅰ-4-B PPI
Ⅰ-4-C PaP score
第Ⅱ章 痛みのマネジメント
Ⅱ-1 がんの痛みについての基礎知識
Ⅱ-2 WHO方式がん疼痛治療法
Ⅱ-3 痛みの評価
Ⅱ-4 投与経路変更とオピオイドスイッチング
Ⅱ-5 緩和ケアで欠かせない皮下投与
第Ⅲ章 痛みに使う薬剤のまとめ
Ⅲ-1 非オピオイドの選び方と原則
Ⅲ-1-A アセトアミノフェン
Ⅲ-1-B NSAIDs
Ⅲ-2 弱オピオイドの選び方と原則
Ⅲ-2-A コデイン
Ⅲ-2-B トラマドール
Ⅲ-3 強オピオイドの選び方と原則
Ⅲ-3-A モルヒネ
Ⅲ-3-B オキシコドン
Ⅲ-3-C ヒドロモルフォン
Ⅲ-3-D フェンタニル
Ⅲ-3-E タペンタドール
Ⅲ-3-F メサドン
Ⅲ-4 鎮痛補助薬
Ⅲ-4-A 抗けいれん薬
Ⅲ-4-B 抗うつ薬
Ⅲ-4-C NMDA受容体拮抗薬
Ⅲ-4-D 抗不整脈薬
Ⅲ-5 ステロイド
第Ⅳ章 痛み以外の身体的苦痛のマネジメント
Ⅳ-1 呼吸器症状
Ⅳ-1-A 呼吸困難
Ⅳ-1-B 死前喘鳴
Ⅳ-2 消化器症状
Ⅳ-2-A 悪心・嘔吐
Ⅳ-2-B 消化管閉塞
Ⅳ-2-C 便 秘
Ⅳ-2-D 腹 水
Ⅳ-3 その他の重要な病態
Ⅳ-3-A 転移性脳腫瘍
Ⅳ-3-B 脊髄圧迫
Ⅳ-3-C 高カルシウム(Ca)血症
Ⅳ-3-D 上大静脈症候群
第Ⅴ章 精神的苦痛のマネジメント
Ⅴ-1 不 眠
Ⅴ-2 不安・うつ
Ⅴ-3 せん妄
第Ⅵ章 社会的苦痛のマネジメント
Ⅵ-1 社会的苦痛とは
第Ⅶ章 スピリチュアルペインのマネジメント
Ⅶ-1 スピリチュアルペインとは
Ⅶ-2 スピリチュアルケアの基本的な姿勢
第Ⅷ章 鎮 静
Ⅷ-1 鎮 静
■Further Reading─さらに学びを深めたい方のために─
■巻末資料
①内服の頓用指示例一覧
②坐剤の頓用指示例一覧
③経静脈または皮下投与の頓用指示例一覧
④オピオイド持続注射の指示記載例
⑤モルヒネ・オキシコドン持続注射の組成シート
⑥ヒドロモルフォン持続注射の組成シート
⑦オピオイドスイッチングと投与経路変更の例
⑧経口・貼付オピオイド製剤一覧
⑨オピオイド製剤換算表
■索 引
第Ⅰ章 緩和ケアの入り口
Ⅰ-1 緩和ケアの定義
Ⅰ-1-A WHO(世界保健機関)の緩和ケアの定義
Ⅰ-1-B 緩和ケアの定義に関する詳細
Ⅰ-2 全人的苦痛(トータルペイン)の考え方
Ⅰ-3 疾患の経過(illness trajectory)
Ⅰ-4 予後予測
Ⅰ-4-A PiPS models
Ⅰ-4-B PPI
Ⅰ-4-C PaP score
第Ⅱ章 痛みのマネジメント
Ⅱ-1 がんの痛みについての基礎知識
Ⅱ-2 WHO方式がん疼痛治療法
Ⅱ-3 痛みの評価
Ⅱ-4 投与経路変更とオピオイドスイッチング
Ⅱ-5 緩和ケアで欠かせない皮下投与
第Ⅲ章 痛みに使う薬剤のまとめ
Ⅲ-1 非オピオイドの選び方と原則
Ⅲ-1-A アセトアミノフェン
Ⅲ-1-B NSAIDs
Ⅲ-2 弱オピオイドの選び方と原則
Ⅲ-2-A コデイン
Ⅲ-2-B トラマドール
Ⅲ-3 強オピオイドの選び方と原則
Ⅲ-3-A モルヒネ
Ⅲ-3-B オキシコドン
Ⅲ-3-C ヒドロモルフォン
Ⅲ-3-D フェンタニル
Ⅲ-3-E タペンタドール
Ⅲ-3-F メサドン
Ⅲ-4 鎮痛補助薬
Ⅲ-4-A 抗けいれん薬
Ⅲ-4-B 抗うつ薬
Ⅲ-4-C NMDA受容体拮抗薬
Ⅲ-4-D 抗不整脈薬
Ⅲ-5 ステロイド
第Ⅳ章 痛み以外の身体的苦痛のマネジメント
Ⅳ-1 呼吸器症状
Ⅳ-1-A 呼吸困難
Ⅳ-1-B 死前喘鳴
Ⅳ-2 消化器症状
Ⅳ-2-A 悪心・嘔吐
Ⅳ-2-B 消化管閉塞
Ⅳ-2-C 便 秘
Ⅳ-2-D 腹 水
Ⅳ-3 その他の重要な病態
Ⅳ-3-A 転移性脳腫瘍
Ⅳ-3-B 脊髄圧迫
Ⅳ-3-C 高カルシウム(Ca)血症
Ⅳ-3-D 上大静脈症候群
第Ⅴ章 精神的苦痛のマネジメント
Ⅴ-1 不 眠
Ⅴ-2 不安・うつ
Ⅴ-3 せん妄
第Ⅵ章 社会的苦痛のマネジメント
Ⅵ-1 社会的苦痛とは
第Ⅶ章 スピリチュアルペインのマネジメント
Ⅶ-1 スピリチュアルペインとは
Ⅶ-2 スピリチュアルケアの基本的な姿勢
第Ⅷ章 鎮 静
Ⅷ-1 鎮 静
■Further Reading─さらに学びを深めたい方のために─
■巻末資料
①内服の頓用指示例一覧
②坐剤の頓用指示例一覧
③経静脈または皮下投与の頓用指示例一覧
④オピオイド持続注射の指示記載例
⑤モルヒネ・オキシコドン持続注射の組成シート
⑥ヒドロモルフォン持続注射の組成シート
⑦オピオイドスイッチングと投与経路変更の例
⑧経口・貼付オピオイド製剤一覧
⑨オピオイド製剤換算表
■索 引
書評
柏木秀行(飯塚病院 連携医療・緩和ケア科)
ポケットマニュアルと冠する本に対して,われわれが求めているのはどういったことだろう.ポケットという名に恥じない,コンパクトさは必須だろう.では,マニュアルは? マニュアルというくらいだから,ある程度の網羅性は備えておきたいが,ここに矛盾が生じる.必要なことをしっかりと網羅しつつも,ポケットに入る網羅性.そんな都合のよい本があるわけがないという固定観念を打ち崩すのが,この「緩和ケア ポケットマニュアル 改訂2版」だ.
緩和ケアの臨床実践で汎用性の高い知識については,しっかり網羅されている.第1版もなかなかのものだったが,第2版はさらにパワーアップしているのである.ゆっくり調べながら対応するべきことは大胆に割愛しつつ,よく遭遇する諸問題はほぼカバーしている.これは本当に緩和ケアの臨床実践を経験しないとできない取捨選択である.たくさん書くよりも,重要なことを絞るほうが難しいのだから.
ここで第2版となってとくに目を引いたポイントに触れておこう.それは具体的な処方例がより最新で豊富になったことだ.がん疼痛はもちろん,呼吸困難,不穏など緩和ケアで必ず遭遇する症状に対して,具体的な薬剤と指示が明記されている.皮下投与についても詳しく追記された.
よく勉強している研修医が,実際に指示を出そうとすると,とたんに手が止まる場面をよく目にしてきた.理論を勉強するのはもちろん大切だ.でも,臨床実務は具体的な行動まで落とし込まないと,知識は活用できないんだよなぁ.その知識と実践をつなぐための準備が,学んだことを患者に届けるために重要なのである.学びを患者に届けるための,ラストワンマイルがこの本なのだ.「現場でサッと開いてすぐわかる!」というコンセプトの通り,是非とも現場で活用してもらいたい.
ポケットマニュアルと冠する本に対して,われわれが求めているのはどういったことだろう.ポケットという名に恥じない,コンパクトさは必須だろう.では,マニュアルは? マニュアルというくらいだから,ある程度の網羅性は備えておきたいが,ここに矛盾が生じる.必要なことをしっかりと網羅しつつも,ポケットに入る網羅性.そんな都合のよい本があるわけがないという固定観念を打ち崩すのが,この「緩和ケア ポケットマニュアル 改訂2版」だ.
緩和ケアの臨床実践で汎用性の高い知識については,しっかり網羅されている.第1版もなかなかのものだったが,第2版はさらにパワーアップしているのである.ゆっくり調べながら対応するべきことは大胆に割愛しつつ,よく遭遇する諸問題はほぼカバーしている.これは本当に緩和ケアの臨床実践を経験しないとできない取捨選択である.たくさん書くよりも,重要なことを絞るほうが難しいのだから.
ここで第2版となってとくに目を引いたポイントに触れておこう.それは具体的な処方例がより最新で豊富になったことだ.がん疼痛はもちろん,呼吸困難,不穏など緩和ケアで必ず遭遇する症状に対して,具体的な薬剤と指示が明記されている.皮下投与についても詳しく追記された.
よく勉強している研修医が,実際に指示を出そうとすると,とたんに手が止まる場面をよく目にしてきた.理論を勉強するのはもちろん大切だ.でも,臨床実務は具体的な行動まで落とし込まないと,知識は活用できないんだよなぁ.その知識と実践をつなぐための準備が,学んだことを患者に届けるために重要なのである.学びを患者に届けるための,ラストワンマイルがこの本なのだ.「現場でサッと開いてすぐわかる!」というコンセプトの通り,是非とも現場で活用してもらいたい.