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カテゴリー: 歯学  |  組織学/発生学

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口腔の発生と組織

改訂4版

東京医科歯科大学 准教授 田畑 純 著

定価

4,400(本体 4,000円 +税10%)


  • B5判  162頁
  • 2019年4月 発行
  • ISBN 978-4-525-81024-5

めざしたのは黒板の絵!
難しい内容を簡潔に示したイラストで理解度UP!

組織学の教科書でありながら,「板書の絵」のようなカラーイラストによる入門書.4版では「ヒトの発生」と「口腔の組織」,とりわけ,初期発生,頭部の骨形成,顎関節,加齢などについて加筆.多くの文章と図を直して,必要十分でバランスのとれた内容とした.口腔組織・発生学の教科書であるが,国試対策や臨床家の要求にも応えた充実の改訂.

  • 序文
  • 目次
序文
 歯や口腔をかたちづくる細胞たちは個性豊かです.歯はかなり精巧な硬組織ですし,顎関節や舌や歯肉なども特徴的な組織や構造をもっています.それゆえ,これらをきちんと理解するには,解剖・発生・生理・生化・病理などの関連知識も併せて学ぶ必要があります.そこで,3版では知識のレベルを歯科医師国家試験と共用試験CBTに合わせて盛り込みましたが,4版では臨床に役立つ内容も含めるようにしました.つまり,4版は卒業後も役立つことを意識した改訂です.
 4版改訂の目玉は2つあります.1つめは,「第2章 ヒトの発生」と「第3章 口腔の発生」の拡充による「発生学」の充実です.2つめは,「第9章 唾液腺」,「第10章 口腔粘膜」,「第11章 頭蓋骨と顎関節」の新設による「口腔の組織学」の充実です.
 従来の口腔組織学の教科書は,「口腔」といいながら「歯」中心でした.しかし,臨床家にとっては,「歯」と同じぐらい「口腔」は重要ですから,今回の改訂で,やっとその声に応えられたと思っています.また,近年の歯科医師国家試験の傾向から,エナメル質や象牙質などの特異的タンパク質についても追記し,加齢変化は第12章にまとめました.このほか,図の多くを描き換え,本文を見直し,コラムの多くを入れ替えました.
 本書の特徴は,組織学の本でありながら,組織写真を極力使わず,「板書の絵」のようなスキーム(模式図)を使って,ほとんどの説明をしているところにあります.かつての大学の授業は,板書のみで進めることが普通で,どの教員もすらすらと見事な絵や図を描き,英語・ドイツ語・ラテン語も交ぜながらどんどん解説をしていく,という形式でした.資料配布は滅多にありませんでしたし,話が終わるとすぐに消されてしまうので,学生は必死に書き写し,教員の言葉を書き留める必要がありました.書きとり,聞きとりの不足を補うためには,教科書も必携でした.
 組織学の講義はとりわけ図が多く,色づかいも豊富でしたが,「板書の絵」には要点が凝縮されていました.簡略化,構図,色の使い方,描く手順などにも意味があったからです.そこで本書もこれに倣い,ほどよい簡略化と構図を心がけ,色使いも統一しました.例えば,全ての絵で,上皮とエナメル質は青,間葉と象牙質は赤,間葉ではあるけれどセメント質と骨のふたつは灰色などとしています.上皮と間葉(結合組織)を意識することが,組織学の基本であり,青と赤はヘマトキシリン・エオシンの染色像に準ずるものです.本書では,かつての授業のよい面を幾ばくかでも伝えたいと考えています.
 本書はもともと10名による共著の本でしたが,3版で大幅な改訂を行い,この4版で単著となりました.こうした改訂をお許しくださった明海大学名誉教授・久米川正好先生,大阪大学名誉教授・栗栖浩二郎先生のお二人に深く感謝いたしますとともに,旧著者の先生方にも感謝申しあげます.
 それから,次の方々にも御礼申し上げます.徳島大学・角田佳折先生には,マクロ解剖学のご教授をいただき,内容確認にご協力いただきました.赤ちゃん歯科ネットワーク代表・石田房枝先生には,小児歯科臨床の立場からさまざまなご教示をいただきました.著者所属教室の技官・杉浦真琴さんには,模式図の元となる組織切片をいくつも作製してもらいました.この3名に加え,大学院生の坂口もも子さん,学部生の渡部準也くんの計5名には校正作業にご協力いただきました.図の彩色は秘書・山本智子さんに手伝ってもらいました.いろいろな方からの感想,質問,ご意見,Webでの好評価も大きな励みになっています.そして,3版から引き続いて担当してくださっている南山堂編集部の齋藤代助さんならびに制作・印刷関係の方々にも御礼申し上げます.多くの方のさまざまな工夫や知恵で本書は作られています.
 学問には創造と継承の二面があります.分野によって,このバランスは異なりますが,組織学や解剖学は継承のウェイトがかなり大きく,200年以上前の文献や古い切片から学ぶことがあるほどです.一見,古くて深くて複雑な森ですが,古木や大木が見事なかたちに枝を広げあっていて,思いがけない発見が潜んでいたり,思わぬところに道が通じていたりします.本書が,この森を探索する方々の道しるべとなれば幸いです.

2019年3月
田畑 純
目次
第1章 歯とは
1.歯のかたち
2.歯の定義
3.4つの硬組織
Column 上皮と間葉

第2章 ヒトの発生
1.精 子
2.卵
3.受 精
4.卵割期~胚盤胞期
5.着床期~二層性胚盤期
6.三層性胚盤期~神経形成期
7.神経形成期
8.器官形成期
9.胎児期以降
Column アジのひらき

第3章 口腔の発生
1.咽頭弓
2.神経堤細胞
3.口腔の開通と咽頭弓器官
4.舌の発生
5.顎顔面の発生
6.上顎の発生
7.下顎の発生
8.歯の発生
9.口腔の発生障害
Column A Child Is Born

第4章 歯冠形成期
1.開始期(肥厚期)と蕾状期
2.帽状期
3.鐘状期初期
4.鐘状期後期
5.エナメル質と象牙質の形成
6.咬頭形成
7.歯堤の分岐と消失
Column 魔法のサンドイッチ

第5章 歯根形成期
1.歯根形成開始期
2.歯根伸長期
3.萌出期
4.咬合開始期と機能期
5.歯根の分岐
6.歯の交換(乳歯脱落)
Column 歯の起源

第6章 エナメル質形成
1.エナメル芽細胞
2.基質形成期
3.成熟期
4.エナメル小柱
5.エナメル質の組織構造
6.エナメル質特異的タンパク質
Column 2人のトームス

第7章 象牙質形成と歯髄
1.象牙芽細胞
2.基質小胞
3.球状石灰化と板状石灰化
4.石灰化球
5.象牙質の成長線
6.象牙質の分類
7.象牙質の組織構造
8.歯 髄
9.象牙質の知覚
10.歯髄神経
11.象牙質特異的タンパク質
Column 象牙の象牙質

第8章 セメント質形成と歯根膜
1.セメント芽細胞とセメント細胞
2.セメント質の構造
3.歯根膜
4.歯根膜の線維
5.歯槽骨
Column シャーピー線維の作り方

第9章 唾液腺
1.唾液腺の構造
2.唾液腺の種類
3.大唾液腺
4.小唾液腺
Column 毒腺の作り方

第10章 口腔粘膜
1.口腔粘膜の構造
2.口腔粘膜の種類
3.口 唇
4.歯肉と歯槽粘膜
5.歯肉の構造
6.歯肉溝上皮と歯肉溝滲出液
7.歯肉の付着上皮
8.歯肉線維
9.口 蓋
10.舌 背
Column 口の進化

第11章 頭蓋骨と顎関節
1.骨と軟骨
2.軟骨性骨と膜性骨
3.関節
4.頭蓋骨の発生
5.咀嚼筋と開口筋
6.顎関節
Column 関節の作り方

第12章 加齢変化
1.加齢変化
2.エナメル質
3.象牙質
4.セメント質
5.歯 髄
Column 解剖学のハンター
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