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カテゴリー: 精神医学/心身医学  |  産婦人科学

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クロストークから読み解く周産期メンタルヘルス

1版

三重大学保健管理センター 教授 岡野禎治 編集
順天堂大学順天堂越谷病院メンタルクリニック 教授 鈴木利人 編集
愛媛大学大学院医学系研究科産科婦人科学教室 教授 杉山 隆 編集
北里大学看護学部生涯発達看護学 准教授 新井陽子 編集

定価

3,850(本体 3,500円 +税10%)


  • B5判  206頁
  • 2016年8月 発行
  • ISBN 978-4-525-38061-8

医療・保健関係者がタッグを組んで周産期の課題に取り組む!

周産期における精神的な課題に対しては,産科医や精神科医のみならず,助産師や保健師などさまざまな職種による支援が求められる.本書は,これらの課題に対する多職種連携の様子を対話形式で示した.周産期メンタルヘルスに関わるすべての医療・保健関係者に贈る,現場での臨場感あふれる連携の醍醐味が描かれた1冊!

  • 序文
  • 目次
  • 書評
序文
 今日,周産期のメンタルヘルスは新たな局面を迎えています.その一つに,先端医学の進展に伴って,不妊治療,出生前検査,流産による死別反応などといった準臨床的問題に対するメンタル・サポートが求められていることがあります.一方,最近の周産期精神医療では,発病リスクの高い妊産婦を対象に妊娠早期からエビデンスに基づいた方法による介入に注目が集まっています.
 さて,こうした課題に対応するためには,第一に周産期メンタルヘルスに関与する各専門家の情報の共有(特に母子保健と精神保健)が必要となります.そして,多職種が院内外において連携を通して,妊産婦のケア・プランが共有されなければなりません.さらに,母子の育児・生活の場に関連する社会保健福祉機関などからのアウトリーチ支援の構築も検討しなければなりません.つまり,今日の周産期のメンタルヘルス・ケアは,多職種のマンパワーが緊密な相互連携を保ち,さらに包括的な支援を構築する能力が求められる時代になったといえます.
 そこで,主に総合病院における周産期メンタルヘルスの代表的な架空事例を想定して,それに関与するさまざまな職種の医療保健福祉関係者が,クロストーク(対話形式)による治療を展開するというユニークな企画をもとに本書が作られました.なお,本書は「精神科医×薬剤師クロストークから読み解く精神科薬物療法」(南山堂)から発展して生まれました.
 目的は,クロストークを通じて多職種間連携を容易に習得でき,統合された実践的治療が進展することです.本書は,従来の事例集とは異なった内容です.クロストークの相手は,産科医,精神科医,助産師,看護師,保健師,臨床心理士,精神保健福祉士,新生児医,小児科医などです.また,対話は精神科医×産科医や精神科医×助産師といった1対1のほか,産科医×精神科医×助産師×薬剤師など複数名のクロストークが連続する場合もあり,ダイナミックに展開します.クロストークの方法も,対面式以外に電話やミニカンファレンスなど,さまざまな場面で展開されています.さらに,各領域の専門用語についてはできるだけ解説を入れました.完成して読み直すと,多職種間における実践的な臨床場面の連携の様子が,クロストークによって生き生きと展開され,さながらな醍醐味のある「物語」ができました.また,事例からは,執筆者のこれまでの臨床経験や妊産婦に対する優しいまなざしを彷彿とさせる場面も読み取ることができました.
 本書は,周産期メンタルヘルスの臨床的課題の中で,過去に苦労をされた方,最新の母子精神保健の情報を入手したい方,社会福祉関係との連携がもう一つわからない方に最適の実用書であると思います.
 最後に,本書のユニークな企画と編集に対して,最後まで柔軟で忍耐強いご尽力をいただいた南山堂の山田歩様はじめ皆さまにお礼を申し上げます.また,周産期メンタルヘルスの現場の臨場感あふれる連携の醍醐味を記載していただいた筆者の皆さまに感謝申し上げます.

2016年7月
編者を代表して 岡野禎治
目次
第1章 周産期メンタルヘルス概論
1 産科領域
 ・出生前診断とハイリスク妊娠

2 精神科領域
 ・産褥精神病
 ・統合失調症と周産期 −リスクの捉え方と多職種連携協働を中心に−
 ・気分障害と妊娠
 ・妊娠中の向精神薬による薬物療法

3 助産領域
 ・医療機関における妊娠期のケア−助産師外来における支援−
 ・産後ケア
 ・医療的にハイリスクな母親の心理的問題
 ・特定妊婦・虐待

4 妊娠期からのスクリーニングと早期介入
 ・周産期における介入が必要な背景
 ・妊娠前期の精神疾患の予測リスクとその対策
 ・予防と早期介入
 ・おわりに

第2章 事例で読み解く周産期メンタルヘルス<妊娠期編>
1 妊娠を契機に再燃した統合失調症
 ・アリピプラゾールの妊娠への影響
 ・服薬を拒否する患者への対応
 ・持効性注射剤の妊婦への使用
 ・医療と地域が連携した育児サポート

2 向精神薬を慎重に選択した統合失調症
 ・妊娠初期の向精神薬の選択
 ・妊娠糖尿病のリスク
 ・妊娠後期から出産前の向精神薬の選択
 ・向精神薬の投与と授乳の是非

3 妊娠期における中等症のパニック障害
 ・妊娠初期における中等症のパニック障害への対応
 ・妊娠初期の薬物療法
 ・妊娠中期〜後期の薬物療法が与える影響
 ・妊娠後期の薬物療法が与える影響

4 妊娠中の重症の強迫性障害
 ・妊娠期の強迫性障害への対応
 ・強迫性障害が母体に与える影響と妊娠期の薬物療法
 ・医療ソーシャルワーカーと保健師による家庭訪問の活用
 ・分娩前後の薬物療法

5 妊娠期からの摂食障害
 ・摂食障害とは
 ・妊娠期の摂食障害
 ・心理面での援助・子育ての援助

6 妊娠・出産を経験したパーソナリティ障害
 ・妊娠期の境界性パーソナリティ障害への対応
 ・妊娠中・産後の薬物療法
 ・患者情報の共有と今後の対策の検討
 ・育児中の衝動行為への対応

7 周産期に受けた身体的・性的・心理的暴力
 ・医療者が妊産婦の暴力被害に気付いたときの初期対応
 ・妊婦に対するIPVのスクリーニング
 ・IPV被害女性,パートナーの臨床像
 ・IPV被害女性の家庭・社会的背景を考慮した対応
 ・医療機関と地域支援機関との連携

8 不妊治療中に発症したうつ病
 ・不妊治療とうつ病
 ・不妊治療の終結と精神症状

第3章 事例で読み解く周産期メンタルヘルス<産後編>
1 緊急入院を要する産褥精神病
 ・産褥精神病への対応
 ・保健師と連携した地域支援
 ・産後の薬物療法の説明と処方薬の決定

2 地域で支える産後うつ病−多職種ミーティングの活用−
 ・初期介入の検討
 ・出産後の支援の方向性を共有する
 ・おわりに

3 産褥期に再発して入院に至った双極性障害
 ・双極性障害とは診断のために注意すべき症状・再発リスクが高い時期
 ・双極性障害の薬物療法
 ・薬物療法と授乳
 ・双極性障害における心理的変化
 ・安心して妊娠・出産・育児ができるように

4 双極性障害へ診断変更された産後うつ病
 ・産科から精神科への紹介
 ・精神障害合併妊婦の妊娠・分娩管理
 ・躁症状の疑い
 ・双極性障害の薬物療法
 ・切迫早産と躁症状の悪化,産科病棟への入院
 ・産後うつ病と双極性障害

5 ボンディング障害
 ・ボンディング障害とは
 ・ボンディング障害と産後うつ病との関連
 ・サポートの実践
 ・おわりに

6 死産経験から発症した悲哀
 ・悲哀反応の診断・評価と対応
 ・悲哀反応と対処行動の性差
 ・悲哀過程と対人関係の変化
 ・死別体験からのposttraumatic growth

索引
書評
学問的だが,読み物としても面白いユニークな一冊!

野村総一郎(一般社団法人日本うつ病センター 副理事長)

 周産期を時間軸で見ると,妊娠後期,出産,産褥期,子育ての開始と,いろいろな異なる局面が展開される.併せて,不妊治療,出生前検査などを巡る生命倫理的な課題も発生し,それがメンタルな面へも影響を与えることもあり,多くの精神医学的な問題が醸し出される.さらに,もともと心の病気を持っている場合,それに応じた対応も必要である.加えてこれを誰が担うのか,ということになると,多くの医療職種の共同作業という,言うのは簡単だが,実際にはマニュアルどおりに進まないプロセスを乗り越えねばならない.このように考えると,周産期の医療,特にメンタルヘルスを適切に運ぶという作業は,5元6次方程式を解くようなものであり,コンピュータの助けでも借りたくなるくらいである.
 しかし本書は,コンピュータ的にではなく、人間的な方法で実にうまく乗り越えている.それは,クロストークという方法によってである.通常の事例集とは異なり,メンタルヘルスで現場が苦慮した多くのケース,例えば妊娠で再燃した統合失調症,妊娠期のパニックや摂食障害,周産期の暴力,不妊治療中のうつ病,産後うつ病への対応,死産の問題などを,産科医,精神科医,助産師,看護師,保健師,臨床心理士,精神保健福祉士,小児科医などいろいろな職種間で話し合い,相談し合った,その会話が架空のクロストーク(対話)として,生き生きとした日本語で再現されているのである.「架空の対話」と言ったが,どの対話も執筆者の実経験に基づいている.そうでなければ,このようなリアルさは出なかったであろう.本書は学問的にも価値の高い内容を持っているが,それと同時に他書にない分かりやすさがあるのは,この形式の成功の成せる技であろう.

最後に,クロストークでこの書評も閉めたいと思う.
精神科医:周産期のメンタルヘルスがうまく整理され,学問的でありながら,分かりやすい.とても実用的な本に仕上がっていますね.
執筆者:そう言っていただけると嬉しいです.現場のチーム医療を成功させるためにも役に立つと自負しています.
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