南山堂

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イナダ(研修医)も学べばブリ(指導医)になる

現場のプロと臨床推論のプロが教える診断能力アップ術

1版

福井大学医学部附属病院総合診療部 林 寛之 編
東京大学大学院医学系研究科医学教育国際研究センター 大西弘高 編

定価

3,300(本体 3,000円 +税10%)


  • B5判  181頁
  • 2017年8月 発行
  • ISBN 978-4-525-28181-6

デキる研修医は出世もできる!?

おドジな研修医イナダ君の日々の診療風景をのぞいてみると……「あらあら(><)」なことが多いようです.でもそんなミスや思い込み,誰だってついうっかりやってしまうのでは?本書は,現場のプロと臨床推論のプロがイナダ君を手取り足取りやさしく指導!彼の診断能力はメキメキ向上!あなたのスキルもさらに高まりますよ!!

  • 序文
  • 目次
序文
現場のプロより

 臨床は実に面白い.病歴と身体所見でほぼ80%疾患を絞り込むことができるといわれるものの,時に診断も苦労するもの.研修医や若手医師たちが結構苦労しているのをよくみかけませんか?
 「患者が座れば,ピタリと当たる」なんて,よほどの占い師か詐欺師じゃないとあり得ないのが臨床の世界.
 患者の自発的な話を聞いているだけでは診断にたどり着かない.患者各々の症状に対する解釈も異なれば,期待も異なります.患者の訴えを有機的につなげて,本当の主訴は何なのか,そして自分の臨床推論と論理的につきつめる作業が大事なのです.
 話を長々と聞けば患者の満足度が上がると勘違いしてもいけません.正確な診断ができなければただの●▲×だ(失礼!).漫画『ワンピース』のなかでチョッパー(医者見習い)が,ドクターくれはに,こっぴどく叱られるシーンがある.「いいかい? 優しさだけじゃ,人は救えないんだ.人の命を救いたけりゃ,それなりの知識と医術を身につけな.腕がなけりゃ,誰一人救えないんだよ」
 系統立てた臨床推論は1つ1つ疾患と照らし合わせながら,けして受動的ではなく能動的に,患者から根ほり葉ほり生活背景まで含めてカギとなる話を引き出して,訴えをパッケージングしつつ,論理展開していくから面白いのです.
 本書はcommonな主訴を取り上げるようにしたので,日常臨床の一助になればと思います.さらに各章の後半部分で論理武装してもらえば,若先生たちへの指導に役立つこと間違いなしでしょう.ほめ育ての極意,「ほめる→改善点を具体的に指導→ほめる」の愛のサンドイッチで,若先生たちをその気にさせましょう.
 正確な診断によって患者の笑顔が得られるよう,心より応援しています.

林 寛之

臨床推論のプロより

 筆者が初期および総合内科後期研修を行っていた頃,医学界はEBM(evidence-based medicine:根拠に基づく医療)をどう学ぶか,EBMにどう対応するか,EBMで医療はすべて改善できるかといった議論に満ちあふれていました.一時は,「診断を最適化するにはEBMが非常に重要である」という言説も聞かれましたが,一方でEBM以外にも重要な考え方があるはずだといった議論もまた非常に激しかったです.
 2000年からは,医療者教育の学習と臨床推論の研究をする2年間を過ごし,EBMは仮説演繹法と相性がよいが,診断仮説が思い浮かばないときにEBMは全く無力であることがよく理解できました.また,日本を含め東・東南アジア諸国ではPBL(problem based learning)テュートリアルへの関心が高まり,臨床推論の学習と関連づけた議論も多くありました.とはいえ,当時は徹底検討法,仮説演繹法,パターン認識をどのように用いればよいかすら,まだよくわかっていませんでした.
 当時の臨床推論領域の研究は,どちらかというと認知心理学者によるものが中心であり,臨床医は方法論の面でなかなか研究に迫ることができませんでした.筆者が当時指導を受けたのも認知心理学者のElstein氏であり,少しは自分で研究ができるようになりたいと思っていましたが,臨床推論の理論を紹介する程度の活動しかできておらず,今も力不足を痛感しています.
 本書は,そのような臨床推論の理論を,臨床の指導的事例を通じて関連づけていこうという新しい試みの書籍です.指導的事例は,臨床のプロ中のプロである林 寛之先生が,日頃指導しておられる様子を通じて事例として展開されています.さらに,研究者的視点を入れて振り返ると,どのような意味づけができるか,さらなる振り返りが生まれるかという観点で読んでいただければと期待しています.

大西弘高

目次
Ⅰ 診断推論

1 足が腫れたんですけど……
浮 腫
診断推論の枠組み,網羅的情報収集,徹底検討法と仮説演繹法

2 首にしこりが……
リンパ節腫脹
high yield,SQ

3 めまいが,めまいがぁぁぁ
めまい
臨床推論の教育的配慮,スクリーニングと絞り込み

4 この風邪は,風邪じゃない!?
発 熱
AIUEOTIPS,早期閉鎖,治療開始の意思決定

5 眼が真っ赤で,頭は真っ白!??
結膜充血
直感的思考と分析的思考,視診の重要性

6 胸痛に惑わされて……
胸痛(急性冠症候群)
より詳細な診断,分析的思考

7 エコーは最コー!
排尿困難
発熱の鑑別診断,シマウマ,オッカムとヒッカム

8 頭がおかしくなった?
意識障害
病態生理と病態図

9 痩せが止まらない……
体重減少
傾聴と病歴情報,解釈モデルの意義

10 夜中トイレが近いんです……
多尿,頻尿
受診動機,予防医学的観点

11 目が,目がみえんのじゃーっ
視力障害・視野障害
検査手技の質管理とジェネラリスト,コンサルテーションの意義

Ⅱ 診断と確率論

12 太っただけ!?
体重増加
みた目の重要性,ベイズの定理と診断に関するEBM

13 頭がしめつけられる,突然……??
頭 痛
clinical prediction rule:SpIn,SnOut

14 風邪なんですけど……
急性発熱
診断に関するEBMの実際

15 先生! こ……腰が!!!
腰 痛
検査閾値,治療閾値,PROACTIVEアプローチ

Ⅲ 治療やマネジメントも含めた推論

16 赤は,止まれ!
褥 瘡
重症度診断,多職種連携,予防の重要性

17 先生! おじいちゃんの鼻血が,鼻血が止まらないんですけど!!
鼻出血
予後判断,マクシミン・マクシマックス原理

18 なぜショック? ステロイドもステたもんじゃない!?
ショック
頻度,症状や所見の非特異性,緊急対応の必要性,服薬歴の重要性

19 「外傷だ~.これは,すぐに頭部CTだ~」……ではないよ!
外 傷
治療やマネジメントも含めた臨床推論,救急診療の特徴

20 いつ紹介するの? 今でしょ!?
肉眼的血尿
診療のゴール設定における緊急度・重症度の重要性

21 ヒツジと薬の,その前に……
不 眠
対症療法の意味,価値に基づく診療(VBP)

22 もう歳だから?
身体機能低下
CGA,高齢者診療の特徴,VBP

23 最近,元気がなくって……
気分障害
精神科的な診断や治療と長期的展望を考慮したVBP

本書の振り返り
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