ブックタイトル向精神薬と妊娠・授乳 改訂2版

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概要

向精神薬と妊娠・授乳 改訂2版

1 妊婦・授乳婦への有益性 うつ病の生涯リスクは10?25%で,挙児希望年齢で最も有病率が高い1).妊娠第1三半期,第2三半期,第3三半期のうつ病の有病率は,それぞれ7.4%,12.8%,12.0%との報告がある2).年々妊娠中のSSRI 使用は増加しており,米国での妊娠の約6%がSSRI 曝露妊娠であった3). 妊娠中に抗うつ薬を中止した場合,症状の悪化,再発のリスクが高いことを示した報告がいくつかある4-7).妊娠中のうつ症状やストレスは,妊婦健診や社会的支援を受けないことや,栄養状態の悪化,喫煙,アルコール,薬物使用につながる可能性があり,流産,早産,胎児発育不全,新生児合併症などのリスク増加と関連するとの報告がある6-11).また,近年,自殺が周産期死亡の原因として重要であることが指摘されている12).したがって,妊婦にとってうつ病を治療することの有益性は高い.また,産後のうつ病は育児行動に影響を与えることもあり,母児双方にとってリスクになるため,授乳中も適切な治療が必要である.2 妊娠期妊娠初期の使用による胎児への影響? 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI) 妊娠第1三半期のSSRI 曝露による先天大奇形発生のリスクについて調べた疫学研究は多数報告されており,一部に心奇形等との関連を指摘した報告がある.研究によって結果は異なっているが,多くの研究では先天大奇形全体のリスク増加はみられなかったと報告されている13-24).主な研究を表3-1 に示す. 最もサンプルサイズが大規模な全米メディケイド分析抽出コホート研究からの報告は,抗うつ薬曝露児64,389 例〔セルトラリン14,040 例,パロキセチン11,126 例,fluoxetine(国内未発売)11,048 例〕を含んでおり,抗うつ薬と心奇形,SSRI と心奇形,パロキセチンと右室流出路閉塞奇形,セルトラリンと心室中隔欠損症ventricular septal defect(VSD)の間にはいずれも関連がみられなかったとしている18). また,1996?2010 年に生まれた210 万人以上の生産単胎児と,SSRI またはベンラファキシンに曝露した乳児36,772 人を含む北欧5カ国(デンマーク,フィンランド,ノルウェー,アイ1 SSRI・SNRI・NaSSA 表3-1 妊娠初期のSSRI 曝露についての主な疫学研究研 究デザインサンプルサイズ薬剤の種類結 果備 考Cole JA,et al13)製薬会社による妊娠レジストリ前向きコホート研究他の抗うつ薬n=4,936パロキセチン n=1,020パロキセチン:先天奇形aOR 1.89[1.20 to 2.98]パロキセチン:心奇形aOR 1.46[0.74 to 2.88](他の抗うつ薬曝露群と比較)もともとはGSK が行ったブプロピオン妊娠レジストリ.米国の保険請求データを利用しているため,選択バイアスの可能性がある.中間報告では心奇形も有意に増加していた.Jimenez-Solem, etal14)デンマーク国民のレジストリ全国民対象のコホート研究SSRIn=4,183(第1三半期)非曝露対照群n=843,797シタロプラム n=1,606fluoxetine n=928セルトラリン n=817パロキセチン n=568エスシタロプラムn=293SSRI:先天奇形 aOR 1.33[1.16to 1.53]SSRI:心奇形 aOR 2.01[1.60 to2.53]シタロプラム:大奇形 1.51[1.21to 1.87]セルトラリン:大奇形 aOR 1.41[1.03 to 1.92]曝露情報は処方データから得ている.Reis M,et al15)スウェーデン医学的出生レジストリ全国民対象のコホート研究SSRIn=10,170対照群n=1,062,190(一般集団)fluoxetine n=1,522シタロプラム n=3,950エスシタロプラムn=153パロキセチン n=1,208セルトラリン n=3,297フルボキサミン n=42不明 n=86SSRI:嚢胞腎 aOR 2.39[1.09 to4.54](n=9)fluoxetine:比較的重篤な奇形 aOR1.29[1.00 to 1.67]パロキセチン: 心奇形aOR 1.66[1.09 to 2.53](n=24)(12 例はASD/VSD)パロキセチン:尿道下裂aOR 2.45[1.12 to 4.64](n=9)曝露情報は妊娠初期に集めている.検出バイアスの可能性がある.Malm H,et al16)フィンランドレジストリ全国民対象のコホート研究SSRIn=6,976非曝露群n=628,310シタロプラム n=2,799fluoxetine n=1,818パロキセチン n=968セルトラリン n=869エスシタロプラムn=441フルボキサミン n=240fluoxetine:VSDaOR 2.03[1.28 to 3.21](n=19)パロキセチン:右室流出路障害 aOR4.68[1.48 to 14.74](n=3)シタロプラム:神経管閉鎖障害 aOR2.46[1.20 to 5.07](n=8)曝露情報は処方データから得ている.右室流出路障害と神経管閉鎖障害については症例数が少ない.アルコールの影響を調整できていない.EinarsonA, et al17)マザーリスクなど8 つのTeratologyinformationservice の前向きコホート研究パロキセチンn=1,174催奇形性物質曝露のない対照群n=1,174パロキセチン n=1,174心奇形0.7%, aOR 1.1[0.36 to2.78](n=9)自然治癒した心奇形を除外している.Huybrechts,etal18)全米メディケイド分析抽出コホート抗うつ薬n=64,389SSRIn=46,144SNRIn=6,904抗うつ薬非曝露n=885,115セルトラリンn=14,040パロキセチンn=11,126fluoxetinen=11,048抗うつ薬と心奇形,SSRI と心奇形,パロキセチンと右室流出路閉塞,セルトラリンとVSD のいずれも関連なし.曝露情報は処方箋をもとにしている.(次ページへ続く)1 SSRI・SNRI・NaSSA86 87