ブックタイトル薬剤師のための臨床思考トレーニング ケースで学ぶ薬物治療

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概要

薬剤師のための臨床思考トレーニング ケースで学ぶ薬物治療

49Lesson1 小児における薬物治療の問題点 医療事故は,人為的なミス,あるいはシステムの欠陥などにより引き起こされます.多職種が関与する入院治療においては,薬剤選択から投薬までの一連のプロセスのどの時点においても医療事故は起こりえます. 米国のインシデント報告のシステムにはFDAのMedWatchプログラム,米国薬局方(USP),医薬品安全使用協会(ISMP)のMedication Error Report(MER)プログラムなどがあり,インシデントの状況とその対策について情報提供しています. 日本においてはまだインシデント情報収集の歴史は浅く,日本医療機能評価機構が医療事故情報収集等事業(www.med-safe.jp)として,2005年より報告書を毎年発表しています. USPが1995~1999年に行った調査によると,小児で報告された医療事故のうち有害作用あるいは死につながったケースは31%であり,成人では13%であったと報告しています4()表3-2).小児で一番多く報告された事故は,計算ミスを含む投与量や用法の間違いであり,その理由として,体重換算量での計算,小数点を含む薬用量,mgとgmでの表記の違いなどがあげられています5).Marinoらは,小児の6.4処方に1の割合でミスがあったと報告しています6). 米国小児学会(American Academy of Pediatrics;AAP)は,病院内における小児領域での医療事故防止のために,病院全体のシステム,処方者,処方者の教育,薬剤部,薬剤師の教育,看護師,看護師教育,患児とその家族,それぞれについてガイドラインを発表しています(7)www2.aap.org/saferhealthcare/files/5922_AAP_Policy-prevention_of_Medication_Errors.pdf). 米国の調査では,小児に用いられる薬剤の多くが,FDAの認可を得ていないOff label使用であることが,インシデントの原因としてあげられています8). 2002年に森田らは,小児科領域で日常的に用いられている医薬品のうち,添付文書上に小児における用法・用量,安全性などの情報がない適応外医薬品は77%だったと報告しています9).医薬品の添付文書は,治験やその他の臨床試験で得られたエビデンスに基づき記載されますが,製薬企業は一般的に,利益が見込めない限り医薬品の臨床試験や開発受胎後週数(Postconceptional age) 在胎週数+出生後日数早産児(Preterm infant) 在胎37週未満の新生児正期産児(Term infant) 在胎37週以上,満42週以下の新生児新生児(Neonate) 生後28日未満乳児(Infant) 生後28日以上1歳未満幼児(Toddler) 1歳以上7歳未満(日本)小児(Child) ・7歳以上15歳未満(日本)・1歳以上12歳未満(米国)思春期(Adolescent) 12歳以上18歳未満(米国)成人(Adult) ・15歳以上(日本)・18歳以上(米国)表3-1 小児の年齢区分(文献 1,2)より作成)小児における医療事故小児薬物治療の問題点1.能力不足(performance deficit)2.手順やプロトコールの不遵守3.コミュニケーション不足4.不正確・不備な処方5.不適切な記録6.医薬品配給システムのエラー7.知識不足8.計算ミス9.コンピューター入力のエラー10.システムセーフガードの欠如表3-2  小児における医療事故の原因 Top10(USP調査.1999-2000年)(文献 4)より引用)