ブックタイトル医薬品のレギュラトリーサイエンス 改訂2版

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概要

医薬品のレギュラトリーサイエンス 改訂2版

92う約束で判断するか,それとも寿命の延び(延命効果)や,あるいは病気の症状が治まっている期間の長さで判断するかなどである.安全性についても,臨床開発の段階では被験者数が少なく,重い合併症や併用薬などのない患者しか観察しておらず,しかも観察期間が限られるなど,制約の多いなかでの成績と評価である.多様性に富む実地医療の場における安全性をどの程度代表できるかは常に検討課題となっている.これらをどのように克服し,求める患者にできるだけ早いタイミングで新たな薬物療法を提案していくかを,以下の解説を通して学ぶ.Ⅰ 臨床第Ⅰ相試験 臨床第Ⅰ相試験は,各非臨床試験結果(毒性,安全性薬理,薬効薬理,薬物動態など)に基づいて試験デザインが設定され,被験薬が初めてヒトに投薬される試験である(図5-1).一般に健康成人を対象に行われ,単回投与および反復投与において,用量を低用量から段階的に増量させ,安全性,忍容性,薬物動態(吸収,分布,代謝,排泄),薬力学などの検討が行われる.食事,性,年齢の影響,民族間差も臨床第Ⅰ相試験において検討されることが多い.通常は単回投与試験が行われ,その結果(安全性,忍容性,薬物動態など)に基づいて反復経口投与試験が計画される.反復投与試験では,定常状態での安全性,忍容性,薬物動態,薬力学などの評価が行われる.1 安全性および忍容性 安全性は,被験者の医療上のリスクに関するものであり,通常,臨床検査(臨床化学,血液学を含む),バイタルサイン,臨床的有害事象(疾患,徴候,症状),その他特別な安全性検査(心電図,眼科学など)によって評価される.忍容性とは,明白な有害作用が被験者にとってどれだけ耐えうるかの程度を示すものであり1),薬物の服用により有害事象が生じても,それが十分耐えられる程度であれば「忍容性が高い(良好)」,耐えられない程度である場合は「忍容性が低い」といわれる. 臨床第Ⅰ相試験では,単回投与および反復投与において,用量を低用量から段階的に増量させ,安全性,忍容性の評価が行われる.この情報は,薬物曝露量に関する情報(例えば後述のCmax やAUC)と関連づけられ,臨床開発を進める上でベースとなる情報となる. また,臨床第Ⅰ相試験は初めてヒトに被験薬が投薬されるステージなので,試験計画時には,毒性試験,薬効薬理試験結果などからヒトに安全に投与できる用量を設定するとともに,起こり得る作用を予想し,その前兆を含め発現可能性のある有害事象を監視・管理するためのリスク管理方法を事前に定めておく必要がある.特にファー