ブックタイトルここが知りたい職場のメンタルヘルスケア 改訂2版

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概要

ここが知りたい職場のメンタルヘルスケア 改訂2版

4chapter-1 おさえておきたい疫学データ2 統合失調症 統合失調症を含めた精神病性障害は,これまで述べてきたような一般地域住民を対象とした構造化面接による調査ではうまく特定できないという限界があるため12),WMH調査では有病率は報告されていない.先述のWMH調査の米国調査であるNCS-R では,非感情性精神病〔nonaffectivepsychosis(NAP),統合失調症,統合失調症様障害,失調感情障害,妄想性障害,特定不能の精神病性障害〕としてまとめて有病率が推定されており13),生涯有病率は1,000人当たり3.1人(標準誤差1.5),12ヵ月有病率は1,000人当たり1.4人(標準誤差1.0)であった. Saha ら14)の系統的レビューでは,統合失調症の有病率についてメタ分析を行っている.まず,21の研究に基づいた時点有病率の中央値については,1,000 人当たり4.6 人(80%信頼区間は1,000人当たり1.9 ~ 10 人),34 の研究に基づいた期間有病率(1 年以内)の中央値については,1,000 人当たり3.3 人(80%信頼区間は1,000 人当たり1.3 ~ 8.2 人)であった.最近フィンランドで行われた一般地域住民に対する調査では,統合失調症の生涯有病率は0.87%,統合失調感情障害は0.32%と推定されている15).3 パーソナリティ障害 一般地域住民におけるパーソナリティ障害(PD)の有病率は,林16)がCoid 17)の総説に基づく有病率と,米国で2001~2002年にかけて行われたNational Epidemiologic Survey on Alcohol andRelated Conditions(NESARC;n = 43,093)18)からの有病率とを一覧表にしている.これらをまとめると,少なくとも1つのPDを持つ者は4.4 ~14.8%とかなり多い割合が存在することになる.それぞれのPDの割合は表1-1のとおりである. WMH調査からは,世界13ヵ国(中国,ナイジェリア,南アフリカ,コロンビア,メキシコ,米国,レバノン,ベルギー,フランス,ドイツ,イタリア,オランダ,スペイン;n = 21,162)の一般成人地域住民におけるPD有病率が報告されている19).これによれば,何らかのPDを持つ者は2.7 ~7.9%と国によりばらついており,総合すると6.1%とされている.有病率はクラスターA(妄想性,統合失調質,統合失調型),クラスターB(演技性,自己愛性,境界性,反社会性),クラスターC( 回避性, 依存性, 強迫性)ごとに報告され, 各国の有病率はクラスターAで表1-1  パーソナリティ障害の類型別有病率16)類 型有病率(%) 類 型有病率(%)反社会性0.6?3.7 統合失調質0.4?3.2境界性0.7?2.0 統合失調型0.1?5.6自己愛性0.4?0.8 回避性0.8?5.0演技性1.9?2.1 依存性0.5?1.7妄想性0.7?4.4 強迫性1.7?7.9NESARCからのGrantらの報告18)では,強迫性PDが7.9%と多く,次に妄想性PDの4.4%,反社会性PDの3.7%と続いていた.