ブックタイトルここが知りたい職場のメンタルヘルスケア 改訂2版
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ここが知りたい職場のメンタルヘルスケア 改訂2版
187A アセスメントのポイントを知りたい?問う論述式の設問に当たり,情報量は最も多く得られるものの答える側の負担は大きくなり,情報の理解や評価を要する点でいくばくかの不明確さを伴う.このことを理解した上で話を聞くのが面接のコツである. 相談に来た人が問題点を自らきちんと整理して話してくれることは少ないので,こちらから整理しやすいような聞き方を意識することが必要である.ただし,はじめからこちら側が「5W1H」にむりやり誘導しようとすると,面談が機械的で心の通わないものになる危険性があるので,たとえばひととおり相談者の話を聞いた後で,YES/NOやWHICHの質問を加えて確認し整理するとよい.2「 疾病性」と「事例性」に分けて考える 職場でメンタルヘルス関連の問題が疑われる事例が発生した場合,対応する直属上司や同僚などはもちろん,精神科医でない産業医や産業保健スタッフは精神医学の専門家ではないため,専門家と同じようなアセスメントを行うのは困難である.そのように限られた知識や経験の中で問題に対応していく際に重要な考え方は,問題を「疾病性」と「事例性」とに分けて把握し検討していく方法である. 疾病性とは「幻聴が存在する」「被害妄想がある」「うつ病が疑われる」など,どんな症状があるか,そもそも疾患であるのかどうか,疾患であれば疾患名は何か,疾患の重症度はどうか,治療は必要かなどといった対象者の症状や病名に関することであり,精神科医などの専門家が判断するところである.一方,事例性とは「普段のような元気さがなくふさぎこんでいる」「欠勤,遅刻,早退が多く勤怠が不良である」「以前と比べて仕事のミスが多くなっている」「すぐカッとなり周囲とのトラブルが多い」など,職場で問題になっている度合いであり,周囲の人が気づく客観的事実である. 職場で何かメンタルヘルスの問題をキャッチしたら,とかく「うつ病に違いない」「被害妄想が出ている」など疾病性に目が行きがちであるが,まずは事例性に着目してそれに関する情報を収集する.その上で医療の必要性があると判断したら受診につなぎ,疾病性を扱ってもらうことになる.3 医療機関受診を勧奨すべきかどうかを判断するa日常生活や業務に支障をきたすほどの症状がある たとえば,不眠が続くため職場でいつも眠気に襲われる,不安が強くて仕事に集中できずミスが多くなる,疲労感が強くて休日は何もせずに横になっていることが多いなどである.このように日常生活や業務に支障が出るレベルかどうかが受診勧奨の一つのポイントになる.① YES or NO② WHICH③ WHAT, WHO④ WHERE, WHEN, HOW⑤ WHY情報量 明確さ 答え難さ図3-1 疑問文の性質1)