ブックタイトル肛門疾患

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概要

肛門疾患

 痔核は肛門静脈叢の静脈瘤様変化で,静脈の異常な拡張,静脈壁の萎縮,特に弾性線維の著明な減少,間質の浮腫が本質的な変化である.次いで間質の弛緩,上皮や粘膜下組織の過剰,肛門括約筋の萎縮などの二次的変化が起こる. 痔核の成因には4 つの主な説がある1).すなわち, ① 上中痔静脈の支流のネットワークである内痔静脈叢の静脈の異常な拡張 ② 肛門クッションをなす動静脈吻合の異常な拡張 ③ 肛門クッションの下垂または脱出 ④ 支持組織の破壊などである. 発生部位により内痔核と外痔核に分けられる.歯状線上方に位置する内痔核は上・中直腸静脈に流入する内痔静脈叢が,歯状線より下方に位置する外痔核は下直腸静脈に流入する外痔静脈叢が静脈瘤様に変化したものである.内痔核と外痔核の間で歯状線にまたがるものを内外痔核あるいは中間痔核と呼ぶ場合があるが,本質的には外痔核と考えられる. 脱肛 anal prolapse とは,痔核や肛門上皮が肛門外へ脱出する状態のことである.脱出した痔核が急激にうっ血,血栓形成,浮腫などをきたし還納不能となったものを痔核発作 hemorrhoidal attack という. さらに外痔核の血栓・浮腫により,口側の内痔核が脱出し,肛門管外で絞扼され血行障害に陥り暗赤色調を呈したものを嵌頓痔核 incarcerated hemorrhoid という.嵌頓痔核は支持組織が強固で普段は脱出しにくい痔核症例に発症することが多く,支持組織が弱く常習的に脱出・還納を繰り返すような症例にはむしろ起こりにくい.平素から支持組織が強固であるため,内痔核と外痔核の境界である歯状線は深く輪状の溝のようになっている.? 概念・原因・病態および症状 外痔核は急性と慢性の2 つのタイプに分けることができる.急性外痔核は外痔静脈叢の中に血栓を形成したり,その周囲に浮腫を伴ったりするものである.慢性外痔核は外痔静脈叢の拡張やうっ血を主体としたものである1). 急性外痔核のうち血栓を主体とするものを血栓性外痔核(図5-1?11),小血栓周囲の浮腫を主体としたものを浮腫性外痔核(図5-12?20)と呼ぶ.血栓性外痔核は循環障害によって外痔静脈叢に血栓を生じたもので血栓は被膜に覆われている.時に血栓や血腫が被覆している上皮や皮膚を穿破して出血する.ごくまれではあるが被膜が破れて血腫となり皮下出血をきたすこともある.浮腫性外痔核は循環障害のためにリンパのうっ滞を生じ,血栓周囲の腫脹が増大するものである. 急性外痔核は,便秘・下痢,妊娠・分娩,過度な労作・スポーツ,あるいは香辛料の過食,寒冷に身をさらすなどさまざまな条件の下で,外痔核帯の循環障害がもたらされたときに生じる.原因となるような事柄を詳細に尋ねれば,多くの症例で確かめることができる. 病変が小さいときには痛みを伴わないが,通常,一定の大きさを超えれば痛みを伴う.小さい病変は数mm の小さいものから,肛門の全周に及ぶ巨大な脱転をきたすものまである.A 外 痔 核第5章痔 核