ブックタイトル事例・症例に学ぶ 栄養管理 改訂2版

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概要

事例・症例に学ぶ 栄養管理 改訂2版

5栄養不良NM スケールN式老年者用精神状態尺度.老年者および認知症患者の日常生活における実際的な状態・行動・能力を,評価する目的で作成された尺度.精神科医や臨床心理士などの専門家でなくとも評価でき,検査場所を選ばないので,在宅や施設の老人の評価にも使える.N-ADLN式老年者用日常生活動作能力評価尺度.老年者および認知症患者の日常生活動作能力を,多角的にとらえ評価する目的で作成された行動評価尺度で,NMスケールと併せて使用することにより老年者を総合的にとらえることができる.栄養管理の実施と経過入院2か月後 ゼリー食を拒否するようになりムース食に切り替え,さらに本人が希望する固形食品も提供していったため, 経鼻栄養も1,200kcal から900kcalの3回となる.栄養状態は若干の改善がみられたが血清TP 6.3g/dL,血清Alb 3.5g/dLと低い状態ではある.体重の変動はみられない.入院6か月後 4か月後に昼のみ経口摂取となり経鼻栄養は900kcalから600 kcalの朝・夕2回となる. 5か月後には朝と昼が経口摂取となり夕のみ経鼻栄養300kcal施行. 6か月目に入って本人の強い希望もあり,経鼻栄養をはずし,3食経口摂取となるも食事の摂取状況は本人が食べたいものと食べられるものとのギャップもあり6割くらいしか摂取できていない状況である.日によって飲み込みに時間がかかることがあり,食事後半に疲労がみられるときはむせ込みもあり,食事中に吸引をすることがある.時折37℃後半の発熱がある.  栄養状態は体重の変動はみられない.血清Alb3.5g/dLと低い状態で推移している. 経鼻栄養がはずされ,栄養必要量が充足できていないため栄養状態の低下が懸念されるので,昼の栄養補助食品を1.6kcal/mLのものから2 kcal/mLのものに変更する.入院9か月後 38℃の発熱あり.右肺炎と診断.抗生物質治療により改善がみられるが,今後も再発を繰り返す恐れはある.栄養状態は体重の変動はみられないが,血清Alb 2.9g/dL,CRPは1.5である.食事も1週間絶食となりその間は点滴静脈注射が施行される.胸水があり,低蛋白血症改善のため,その後も点滴を施行する.入院10か月後 胸水は減少し,その後発熱はみられない.食事が再開されるが食欲はあまりなく4割の摂取.経鼻栄養や胃瘻造設をすすめるが本人が経口摂取で栄養を摂りたいと断固拒否. 栄養状態は体重の変動はみられないが,血清Alb 3.2g/dL,CRPは0.6と炎症反応も改善されてきている.しかし時折37℃後半の発熱がある.2kcal/mLの栄養補助食品は濃厚なのでほとんど飲まないため,今後は3食とも1.6 kcal/mLのものに変更する.ミキサー食にこだわらず食べられるもので食べたいものをなるべく献立に取り入れる.入院11 か月後 食事にムラがあり,低栄養状態が続くと離床も減り,廃用症候群に移行しやすくなるため,食事内容について家族を交えてのカンファレンスを開催する. 経鼻栄養は本人にとって好ましいものではないことを家族と話し合うが,家族からの説得により栄養状態の低下を防ぐうえでも経鼻栄養が朝と夕のみ再開となる.しかし家族からは肺炎のリスクを承知のうえで食べたい物を食べさせてあげたいという要望がだされた.内容もミキサー状のものではなく普通食を要望され,昼の食事のみ全粥の常食をだすことになった.入院1年後 食事中,咽頭の残留がないが時折発熱することもあり,声が有声化しないことが多いようだ.食事は送り込みに時間がかかり4割食べるのが精一杯のようであるがおいしそうに食べている. コミュニケーションはとれているが,言葉が以前と比べて聞き取りづらくなっている.時折37℃後半の発熱がみられる. 栄養状態は,体重に大きな変動はみられないが減少傾向にある.Alb 3.3g/dL で改善されてきているが依然低い状態が続いている. 今後,栄養補助食品は好んで摂取されているので継続する.栄養状態の改善にはまだ時間がかかるが,経鼻栄養も再開されたので,経鼻から栄養量を増やすことが可能である.今後も継続したモニタリングが必要である。