ブックタイトル事例・症例に学ぶ 栄養管理 改訂2版

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概要

事例・症例に学ぶ 栄養管理 改訂2版

2病態栄養不良蛋白質・エネルギー低栄養五味郁子●Gomi Ikuko神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部 栄養学科PEM とはどういう状態か 蛋白質・エネルギー低栄養状態protein energymalnutrition:PEMは,人が生存し活動するための最も基本となるエネルギーと蛋白質の欠乏状態である.すなわちエネルギー消費量あるいは蛋白質の異化に対して摂取量が不足した状態である.エネルギーは三大栄養素から産生されるが,人の体内には,糖質は0.2?0.5kgしか存在しないことから,PEMは体内蛋白質と脂肪組織の減少として観察される.PEMは,表1に示す3つに分類される.PEM の原因 PEMの原因は,栄養素摂取の減少による一次的なものと,手術・外傷・疾病などに起因して体内必要量の増大による二次的なものとに区分される.栄養摂取不足は食欲不振,口腔内の痛み,摂食・嚥下障害などが主な原因となる.慢性的な栄養摂取量の不足に,疾患によるストレスや代謝異常が加わるとPEMは急速に悪化する.したがって,入院患者要介護高齢者においてPEMはかなり多く存在し,医療・介護サービスにおける病院・施設・在宅での継続的な栄養ケア・マネジメントが必要とされている.PEM の栄養アセスメント身体計測 PEMの潜在的状態を評価・判定するには身体計測が用いられる.BMI BMI 18.5?20の低BMI者では,疾病罹患率が増大し,BMI<18では非活動時間の延長が起こり,地域自立高齢者ではBMI<20で診療所への受診率や医薬品利用率が増大し,さらに身体機能の低下,入院率,合併症率の増大,回復遅延が引き起こされることが報告されている.体重減少率 体重減少はエネルギー摂取不足のときに起こる.BMIが標準値であっても体重減少がみられるときはPEMの注意が必要である.健常者では急激な5%の体重減少があると活力感の低下,自発的身体活動量の低下,疲労感の増大が起こり,体重減少が10%では筋機能の低下,体重管理障害がみられ,入院患者では,外科手術ならびに化学療法後のアウトカム不良を引き起こす.20%の体重減少では,これらの状態はさらに重症化している. 一方,杉山らは,介護の必要な高齢者で1年で5%以上の体重減少があった者は,1年後の日常生活の自立度の低下リスクがより大きいことを観察している.高齢者では,3%未満は正常な個人内変動とし,1か月に3?5%,3か月に3?7.5%,6か月で3?10%の体重減少がPEMの栄養スクリ?ニングに用いられている.上腕筋面積,下腿周囲長 上腕筋面積は筋蛋白質指標として,下腿周囲長は体重との相関性が高い指標として活用する.これらの身体計測値表1●蛋白質・エネルギー低栄養状態成人マラスムス型悪液質,体筋肉・脂肪の消耗血清アルブミン,トランスフェリン値は正常エネルギーと蛋白質の摂取不足が原因マラスムス・クワシオルコル型体筋肉・脂肪の消耗と低アルブミン血症ストレスまたは蛋白質の摂取不足成人クワシオルコル型低アルブミン血症傾向腹水,手足の浮腫蛋白質の異化が同化を上回っている