ブックタイトルぶらなび 血液疾患診療ナビ 改訂2版

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概要

ぶらなび 血液疾患診療ナビ 改訂2版

MEMO ヘプシジンヘプシジンは2000 年から2001 年にかけて発見された物質であり,肝臓で産生され血中や尿中では25 アミノ酸からなるペプチドホルモンとして存在する4).ヘプシジンは網内系細胞や腸上皮細胞に存在する鉄トランスポーターであるフェロポルチンの発現を制御することによって,生体内の鉄動態を調整している.ヘプシジンが発見されたことによって,長年の間謎であったACD における鉄代謝異常の原因が分子レベルで解明された.4. 患者さんのマネジメント◆◆ ACD の治療は,まず慢性炎症の原因となる基礎疾患の除去やコントロールが優先となるが,実際にそれが不可能な疾患/ 病態も多い.◆◆ ACD の多くは軽度の貧血なので,定期的な全血球計算 complete blood counts(CBC),のフォローアップのみを行うだけでよく,積極的な貧血治療の適応となるケースは少ない.心不全などの基礎疾患がある場合や,貧血が進行する場合は治療の対象となる.◆◆ フェリチンが高値で ACD 単独の病態と考えられる患者には鉄剤の投与は行わないこと.先に述べた病態により,ACD では腸からの鉄吸収は低下しており,吸収された鉄も網内系細胞に貯蔵されるだけなので,血清鉄は上昇せず,貧血の改善も期待できない.◆◆ ACD と IDA が共存する場合(例:関節リウマチによる ACD を有する患者が,消炎鎮痛薬の副作用による胃潰瘍のために消化管出血を起こした)は,鉄剤投与の適応はある.しかし,診断の項で述べたように,プライマリ・ケア医が実施可能な臨床検査のデータのみからACDとIDA の併存を正確にアセスメントするのは難しいこともある.◆◆ 輸血の対象となるのは,生命にかかわる高度な貧血の場合だけである.◆◆ ACD に対して赤血球刺激因子製剤 erythropoiesis stimulating agent(ESA)を投与して貧血が改善したとする報告はあるが,わが国では,慢性腎臓病chronic kidney disease(CKD)に伴う貧血以外のACD に対する保険適用はない〔CKD におけるESA 製剤の使い方については,? 4-D(p.140)で詳述する〕.5. こんなとき専門医へ◆◆ 正球性正色素性貧血のパターンで,ACD/ 二次性貧血を疑うものの,原因となる基礎疾患や鉄代謝異常の所見が見つからず,貧血の鑑別診断に苦慮する場合.◆◆ 小球性貧血で ACD と IDA が共存しているかどうか判然とせず,鉄剤を投与すべきかどうか迷う場合.◆◆ ACD であると考え経過を観察していたが,貧血の程度が進行して輸血などの積極的な治療が必要となった場合.138