ブックタイトルいまどきの依存とアディクション

ページ
11/12

このページは いまどきの依存とアディクション の電子ブックに掲載されている11ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

いまどきの依存とアディクション

2114.プライマリ・ケア医が知っておくべき司法上の問題司法上の問題Q&A特に薬物乱用・依存の患者の治療を行っていると,さまざまな司法的な問題と遭遇します.警察を呼ぶべきか,呼ばないほうがよいのか,守秘義務が優先なのか,それとも犯罪を告発すべきなのか…などなど,挙げだしたら切りがないほどです.このセクションでは,プライマリ・ケア(PC)の現場でも遭遇しそうな司法的問題をいくつかピックアップし,Q & A 方式でまとめてみました.では,さっそく始めましょう.Q.意識障害で搬送されてきた患者にトライエージ?を実施したら,覚せい剤反応が陽性になりました.警察に通報すべきでしょうか?A.結論を先にいうと,通報してもしなくてもどちらでも問題ないです.まず,理解しておいてほしいのは,いかなる違法薬物に関しても,医師に警察通報を義務づけた法令はありません.それでは,通報した場合には,守秘義務違反になるのかといえば,過去の判例では,通報しても守秘義務違反にはなりません.一市民の当然の権利として犯罪を告発したにすぎないからです.では,先生が公立病院に勤務する公務員である場合はどうでしょうか? 刑事訴訟法239 条の2 には「公務員の犯罪告発義務」が規定されており,これをそのまま受け取れば,公立病院の医師に限っては通報する責務があるようにも理解できます.しかし,そうではありません.過去の判例によれば,教育,相談,援助,治療を本務とする公務員が,更生・治療上の観点から守秘義務を優先するという裁量は許容されるとの判断がなされています.したがって,通報するかどうかはすべて医師の裁量に委ねられています.なお,トライエージ?などの簡易薬物検査キットの結果は,裁判において覚せい剤使用の証拠にはなりません.覚せい剤の自己使用罪を根拠患者に対する援助家族に対する援助/介入のコツ地域ネットワークを活かすプライマリ・ケア医が知っておくべき司法上の問題