ブックタイトル免疫学コア講義 改訂4版

ページ
4/12

このページは 免疫学コア講義 改訂4版 の電子ブックに掲載されている4ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

免疫学コア講義 改訂4版

8.細胞間相互作用63は精製したウイルス血球凝集素(HA)タンパク質がワクチンとして使用されている(第25章 参照).8-2 抗原提示細胞とT 細胞の相互作用1)抗原提示 T 細胞はそれ単独では抗原を認識できず,抗原の断片を細胞表面に表出する細胞と相互作用することによって初めて抗原を認識する.この細胞間相互作用を介してT 細胞に抗原を認識させる免疫反応を抗原提示antigen presentation とよぶ.抗原提示には,主要組織適合遺伝子複合体majorhistocompatibility complex(MHC)に抗原ペプチド断片が結合したMHC- 抗原ペプチド複合体が細胞表面に発現することが必要であり,抗原提示の実体は,抗原提示側の細胞上のMHC- 抗原ペプチド複合体とT 細胞上のTCR との結合である.第5章と第7章で述べたとおり,MHC クラスⅠは,赤血球を除くほぼすべての細胞に発現し,細胞内に存在する病原体などの抗原を自身のMHC クラスⅠ上に表出することにより,CD8+T 細胞に抗原を提示する.一方,CD4+T 細胞に抗原提示を行う染症状)を呈する.症状の出現から2週間程度で一次免疫反応はピークを迎え,病原体A は体内から排除される.免疫記憶は一次免疫反応後に成立するので,たとえば1 年後に病原体A が再感染しても,迅速かつ強力な二次免疫反応によって,症状が出現することなしに病原体A は排除される(図8 -1 赤実線).免疫記憶や二次免疫反応は病原体A に特異的であり,病原体A とは異なる病原体B に初めて感染した場合には,病原体A に対する免疫反応とは独立して,病原体B に対する一次免疫反応が起こる(図8 -1 青破線). 予防接種vaccination は,ある特定の病原体に対する一次免疫反応を人為的に起こさせて免疫記憶細胞を産生させることにより,実際に病原体が侵入した際に,最初から二次免疫反応を起こさせようとするものである.すでに述べたとおり,二次免疫反応は,病原体が体内で増殖する前に病原体を排除し,症状の出現を防ぐことができる.人為的な一次免疫反応を起こさせる抗原をワクチンvaccine とよび,一般的に,弱毒化した病原体や病原体由来のタンパク質が用いられる.たとえば,麻疹や水痘の予防接種ではそれぞれの弱毒化したウイルスが,インフルエンザウイルスの予防接種で図8-1 一次免疫反応と二次免疫反応の時間経過010,0001,0001001001 2抗体値(理論値)病原体Aに対する一次免疫反応病原体Aに対する二次免疫反応病原体Bに対する一次免疫反応再感染: 症状出現症状出現せず3 4 5 52 53 54 55 56症状出現病原体Aに初感染病原体Aに再感染病原体Bに初感染:病原体Aに対する免疫反応, :病原体Bに対する免疫反応病原体Aに初感染してからの期間〔週〕