このページは,雑誌「治療」の連載記事(2004年6月~2006年3月)を公開したものです.
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Palmのなかには? ─情報収集編─

20回にわたった一連の連載の最後は,インターネットの世界に広がるさまざまな情報サイトについてまとめてみたいと思います.あわせてこれからPalmがどこに進むのか,私見をまとめてみます.

1.国内情報サイト

自分でPalmを使うようになって知ったのですが,初期のPalmからユーザーであった医療関係者はけっして少なくないようです.ときどき学会その他で,はるか昔のPalm機種の名前をうかがい,「その頃からユーザーでした」と教えていただくことがあります.そしてSONYのCLIEが発売中止になった最近も,確かにPalmユーザーは増えています.しかし自ら情報発信をしている人はまだまだ少数ですね.

そんな医療関係者のPalmユーザーの中で,もっともPalmの普及に尽力をつくされているのが,右脳耳鼻科医こと粟飯原先生です.おそらくPalmを手にされたら,一度は右脳^^部屋というサイトを訪れたことがあるのではないでしょうか.日記(blog)形式で,PalmをはじめとするPDA全般,あるいはデジタルガジェットについて,精力的に書き込みをなさっています.

またMP-Palmという,医療関係者(M)とPalmソフトのプログラマー(P)との架け橋となるサイトも運営され,ここから便利なソフトも誕生しています.最近はCLIEの発売中止を受けて,英語版Palmを日本語で使う!という,英語版Palmを日本語化する方法を,Palm初心者にもわかりやすく説明したサイトも開設されました.このサイトは,CLIEの発売中止に衝撃を受けていたPalmユーザーたちに大きな助けとなって,英語版Palmを使おうと考えているユーザーには,いまやバイブル的な存在となりました.

右脳先生は,今後もおそらく強力なPalmユーザーとして,医療関係者の代表の一人として,業界(?)を牽引していく大きな力であり続けるのでしょう.

一方,医療関係者のあいだでPalmの便利さが理解されるようになったもう一つの原動力は,多くの医療用Palmソフトの存在です.国内でもこれらソフトを自作・公開されていらっしゃる先生が,少しずつ増えてきました.

おそらくそのはしりは,麻酔薬の薬物動態シミュレーションを行うPalmacokineticsを公開された内田先生や,Palm医薬というサイトで医薬品辞書のpdrugを公開され更新し続けていらっしゃる勝木先生だと思います.勝木先生はご多忙のため,pdrugの更新停止を検討されたようですが,最近のサイトを拝見すると,ご負担にならない範囲での更新を継続されるとのことでした.以前に比べて入手可能な薬剤情報が増えてきましたので,モチベーションが下がってしまうのは止むを得ないのかとは思うのですが,pdrugの使いやすさは不変ですから,無理のない範囲でも更新が続くことはとても嬉しいことです.

また最近は,パーム プログラミング クラブを主宰され,微量点滴の計算ソフトであるDrug(Dose.prc)をはじめとする多くの秀逸な医療ソフトを公開されていらっしゃるYoshi先生や,ベッドサイドPalm化計画でCBDCA(カルボプラチン)の投与量を計算するCBDCA Calculatorなどを公開されていらっしゃる河野先生,「麻酔と救急のために(第5版)Palm版」(fAnesthesia)を公開されたSanuki先生,小児計測値SD計算ソフト(SoDaChi)などを公開されたあきちゃん先生など,日本語で利用可能なPalmソフトの輪は少しずつ広がっています.海外には多数の医療用ソフトが存在しているわけですが,国内で日本語のソフトが使えるというのは,大変便利ですしユーザー獲得には必須条件かもしれません.

活用法などの情報を発信されているかたはさらに多くて,半熟ドクターさんのPalmしましょうでは医者とPalmの関係についてよくまとめられています.また「勉強しましょう」のページには診断基準その他のノートが多数まとめられていて,いずれもPalmに移せばとても便利に使えると思います.

福井の下條先生は,研修医必携 PDAの活用法というサイトを作られています.このサイトの"MY DATA"には,やはり診断基準や標準値その他の情報がまとめられています.

あるいは例えばレジデント初期研修用資料などのようにインターネット上に公開されている医学情報を,iSiloなどの取り込み・表示ソフトでPalmに持ってくる方法もあります.最近は,日本語pdfファイルも問題なく扱えるようになりました.

さらにこのほかにも,少量ながら良質な情報はあちらこちらに存在していて,こうした情報を1つにまとめたいと思い,医療系Palmデータ集という情報サイトを立ち上げました.目指すのは,Palm系のさまざまなソフトやデータが集められているMuchy's Palmware Review!の医療版です.登録数はまだまだけっして十分といえませんが,登録されている情報は良質で,すぐに役立つものばかりだと思います.これをご覧の皆さんで,公開してもよいとお考えの情報がありましたら,ぜひ登録をよろしくお願いいたします.

最近流行のblogには医療関係者のものも少なくなく,なかにはPalmネタが取り上げられることがあるサイトも見受けられます.すべてを網羅するのは難しいですが,blogを見つけるたびに,医療関係者のためのPalm?ひとりごとの"Link"の項に「リンクに載らないblog」としてまとめてご紹介しています.けっしてPalmの話題ばかりではなく,むしろほかの話題のほうが多いblogもありますが,それぞれとても読み応えのある面白いサイトばかりです.

2.国外情報サイト

さて,情報収集の目を海外に向けると,これはもう驚くばかりの情報量に圧倒され,下手をするとひたすら電子の網の中をさまよい歩く羽目になります.この連載を開始して,まさに筆者が陥った状況です.

もともとPalmは英語圏で作られ発展してきたわけですから,英語圏には非常に多数のユーザーがいるわけです.そしてその利点から医療の現場でも当たり前のように利用され,それを支えるソフトや情報が多数提供されています.以前のデータでは,医師の9割以上が,医療現場で何らかのPDAを利用している,という報告もありました.こうした事情を背景に,医療関係者に向けたPDAの,特にPalmに関連した情報は,探せばきりがないほど見つかるのが実情です.

ここではまず,筆者がしばしば情報を求めるために訪れてきたサイトを,ご紹介します.このサイトは,ほぼ毎日情報が更新されています.その情報量を考えると非常に大変な作業だと思うのですが,日々更新し続けているバイタリティには頭が下がります.

サイト名を,The Palmdoc Chroniclesといいます.2002年の11月から,医療とPalmに関する情報をblog形式で流し続けています.Ectopic Brainを参照して,そこで扱われた情報を再度まとめていたこともありますが,そのほかのリソースから集めてきた面白い情報も少なくありません.サイトは2006年夏に引越しをしていまして,古いほうのサイトにも情報は満載です.このサイトを定期的にチェックしていれば,医療に関連したPalmの最新情報は,容易に入手できます.

かつて,The Palmdoc Chronicles以上に情報の宝庫だったサイトが,Ectopic Brainです.医療に関連したPalmのソフトや機器などについて,最新の情報を発信し続けてきました.以前はPeripheral Brainといい,2000年の6月から,こうした医療とPalmに関する情報を扱っていました.現在のサイトはblog形式で運用されているため,サイト上で公開されているのは2001年11月から現在までの情報ですが,インターネットの壮大なる過去ログ集Wayback Machineを使えば,開設時の記事までさかのぼって参照が可能です.こんなにも昔から医療とPalmとの関係について情報を流していたサイトがあったのか,と驚かれることと思います.とても残念なことに,2007年1月をもって更新が停止しました.「今後はThe Palmdoc Chroniclesを訪れてね」だそうです.

そのほかにも,非常に多くの個人サイトや大学のWebが,ソフトの紹介や,利用方法の説明,データベースについてなど,医療に関連したPalmの情報を扱っています.これらのサイト情報は,医療関係者のためのPalmリンク集の「海外情報サイト」にまとめてあります.ぜひご参照ください.

一方,Palmwareと呼ばれるPalm関連のソフトやデータそのものを探すにはどうしたらよいでしょうか.これには前回までの連載でしばしば登場したいくつかのサイトが役に立つと思います.

まず,PalmGearです.世界でもっとも有名なPalmwareのサイトで,Medicalの項には700を超えるソフトが収載されています.もう一つの雄が,Handangoです.Medicalのカテゴリーには800を超えるソフトが収載されています.医療関連ソフトの多くは,大概このどちらかのサイトで見つけることができます.

またFreewarePalmにも,計算機やデータベースその他,名前の通り無料で手に入る各種ソフトが集められています.MemoWareはDOC形式やJFile形式,iSilo形式,HanDBase形式など,各種データベース形式でのデータを集めたサイトです.カテゴリーMedicineを探してみてください.

Healthy Palmpilotは800以上の医療用ソフトが分類されて紹介されていて,ユーザーの意見も書き込めるためとても便利ですが,現在更新が停止しています.むしろその親サイトであるpdaMD.comのほうが,最近は情報が充実しているようです.各種ソフトは,Productsの項に用途別に分類されて収載されています.

そのほか,MeisterMedにはiSilo形式の各種データが収載されていますし,独自の秀逸なデータも無料公開されています.

教科書を入手するには,やはりSkyscapeは必見でしょう.筆者は教科書のほとんどをこのサイトから入手しています.ソフト間の連携が取れていて便利です.もう1つのサイトはHandheldmedです.eBook Storeから多数の教科書を入手可能です.

3.Palmのこれから

2005年の夏,SONYがCLIEシリーズの発売を停止したことにより,最初から日本語が使えるPalm機種は,現在市場に出回っている中古か,英語版を日本語化して売っているものだけとなってしまいました.CLIE TJ-25とTH55の爆発的な売れ行きと,それに伴う新規ユーザーの増加は,まさに熱狂的とも思えるほどのPDAブームを巻き起こしたのですが,その後の急速な冷え込みはなぜなのでしょうか.多くの論証が発表されてきましたが,その本当のところはなかなか見えてきません.

PDA全体の売り上げが落ちているのは世界的な傾向ではありますが,ではニーズがなくなってしまったのか,と問えば答えは違うようです.特に本家アメリカではPalmは現在も多くの新機種が発売され,OS別のシェアこそPocketPCが逆転しましたが,Palm社は相変わらず世界のトップシェアを維持しています.PocketPCもPalmの牙城を崩すべく,ユーザーの拡大をはかっています.

それでは,我々にとってPalmのこれからはどうなっていくのでしょうか.この点を考えるときにもっとも重要なことは,医療の現場ではどう使われ,何が求められているのか,です.

携帯電話が普及して,その性能が向上し,スケジュールをはじめとする基本的な手帳機能や,pdfを読める機能さえ搭載されるようになったことで,携帯電話は限りなくPDAに近づいています.スマートフォンと呼ばれる携帯電話とPDAが合体した機種も,最近ではかなりの反響を呼んでいます.一般の人にとっては,わざわざPDAなど持たなくても,携帯電話でことが足りるのかもしれません.しかし「いまさらPDAか?」という問いかけは,少なくとも医療の現場では答えが違いそうです.

オーダリングシステムや電子カルテなど,医療の現場にどんどんコンピュータが入り込んでいるこの頃ですが,その使い勝手はどうかといえば,不満を感じることは少なくありません.起動に時間がかかる,持ち運ぶには大きく重過ぎる,バッテリーの持ちが悪い,などなど.とっさに調べ物をしたり,メモを残したり,計算をしたり,スケジュールの管理をするには,パソコンでは大げさすぎます.もちろん携帯電話では,逆に小さすぎて操作性に不満が残りますし,なにより医療の現場で携帯電話は使いにくい.まさにこれらの点が,PDAが重宝される利点といえます.

この利点は,どんなにパソコンの性能が向上してもWindowsやMacOSの呪縛から逃れられない限り,あるいは携帯電話が電話として電波を発信し続ける限り,PDAの優位性として揺らぐことはありません.要するに,便利なのです.

この便利なPDAの中で,医療関係者がユーザーに多く,情報交換がさかんに行われているのは,過去も現在もPalmということになります.前述の各サイトをみていても,医療関連のソフトは現在も日々更新され,新しいものが登場しています.それに伴う多くの情報交換も,インターネットを介して活発に行われています.

わが身を振り返ったとき,もはやPalmは手放せない便利なツールとなっていますから,仮に今後は英語版のPalmしか手に入らないとしても,それを日本語化して,やはりPalmを使い続けるのだと思います.同様のかたは少なくないようで,こうしたユーザーがいる限り,今後もPalmは便利なツールであり続けるのでしょう.

以上,20回にわたって,Palmについてまとめてみました.連載の機会をくださった南山堂の皆様に,心から感謝申し上げます.

お読みくださった皆様にも感謝です.いつかお会いできたとき,Palm談義に花を咲かせられたら幸せです.

(参考URL)
1)右脳^^部屋:http://unoubeya.main.jp/
2)MP-Palm:http://www.asahi-net.or.jp/~rn6t-aihr/MP_Palm/MPindex.html
3)英語版Palmを日本語で使う!:http://unoubeya.main.jp/e_palm/
4)Palmacokinetics:http://homepage1.nifty.com/o-uchida/palmacokinetics/
5)Palm医薬:http://www5.ocn.ne.jp/~palm-med/
6)パーム プログラミング クラブ:http://www.geocities.jp/palmpro/
7)ベッドサイドPalm化計画:http://www006.upp.so-net.ne.jp/kono/index.htm
8)fAnesthesia:http://msanuki.com/pub/
9)SoDaChi:http://homepage3.nifty.com/aki-chan/sodachi.htm
10)Palmしましょう:http://www8.ocn.ne.jp/~halfboil/palm/pda00.html
11)研修医必携 PDAの活用法:http://jns.ixla.jp/users/shimojo973/myweb1_001.htm
12)レジデント初期研修用資料:http://medt00lz.s59.xrea.com/
13)医療系Palmデータ集:http://www.lab.toho-u.ac.jp/med/peds/palmdata/c-board.cgi
14)Muchy's Palmware Review!:http://muchy.com/
15)医療関係者のためのPalm?ひとりごと:http://medicalpalm.seesaa.net/
16)The Palmdoc Chronicles:http://palmdoc.net/
17)The Palmdoc Chronicles(旧):http://palmdoc.blogspot.com/
18)Ectopic Brain:http://pbrain.hypermart.net/index.html
19)Wayback Machine:http://www.archive.org/web/web.php
20)医療関係者のためのPalmリンク集:http://www.lab.toho-u.ac.jp/med/peds/link2/index.html
21)PalmGear:http://www.palmgear.com/
22)Handango:http://www.handango.com/
23)FreewarePalm:http://www.freewarepalm.com/medical/medical.shtml
24)MemoWare:http://www.memoware.com/
25)Healthy Palmpilot:http://www.healthypalmpilot.com/
26)pdaMD.com:http://www.pdamd.com/vertical/home.xml
27)MeisterMed:http://www.meistermed.com/
28)Skyscape:http://www.skyscape.com/
29)Handheldmed:http://www.handheldmed.com/
30)それでも私はpalmを使う 野村弘明著 P-Work発行 ISBN 4-939128-09-1