このページは,雑誌「治療」の連載記事(2004年6月~2006年3月)を公開したものです.
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Palmのなかには? ─内科応用編─

前回は,内科の先生方が(他科の先生方もですが)どんなソフトを持っていたら便利か,その基本的なものをまとめました.今回は,各専門別にどんなソフトが便利かを検討してみたいと思います.

1.循環器

この分野でまず持っておきたいソフトは,CardioMathだと思います.50以上の計算式がまとめられた,MedCalcの循環器版のようなソフトです.超音波検査や心電図,負荷試験などに関連した各種計算や一般的な医療計算,単位変換などができます.

計算ソフトにはほかにも,「パーム プログラミング クラブ」で公開されているUCGCI(心超音波検査用計算ソフト)やBGA(SaO2>PaO2変換機能付き血液ガスのデータ解析ソフト),ワーファリン(ワーファリン投与管理ソフト)があります.

さて,それではテキスト類はどうでしょうか.「National Heart, Lung, and Blood Institute」にはAct in Time to Heart Attack Signs--Physician Quick Reference ToolやJNC 7(High Blood Pressure Guidelines)ApplicationなどがPalm用のデータとして用意されています.「Mobile Medica」のAPPRISORというセクションでは,APPRISOR形式のファイルとして,American Heart Associationの各種ガイドラインが多数無料で提供されています.各種の良質なテキストを出している「Skyscape」からは,5mCardiac(The AHA Clinical Cardiac Consult)やACC Pocket Guidelines,The Washington Manual Cardiology Subspecialty Consultなどが出ています.

日本語のテキストでは,福井の下條先生のWebに,J-file5.0(データベースソフト)用の正常値やPTCAガイドなど,各種データが公開されています.

心電図の勉強は,無料のPalmEKGがよいと思います.25の不整脈について,実際の波形を見ながら学習できます.

2.呼吸器

呼吸器疾患に特化した計算ソフトというのは多くありません.MedCalcなどの計算ソフトにある程度の計算式が含まれていますので,これを利用する場合が多いようです.それでも,前述の「パーム プログラミング クラブ」では,小児呼吸機能検査評価用のPulmoが公開されています.また海外では,Puffという肺機能検査評価用ソフトもあります.

テキスト類については,喘息・COPDなどにいくつかのデータが公開されています.

まず「National Heart, Lung, and Blood Institute」ではAsthma Treatment Guidelinesが公開されています.また「Mobile Medica」のAPPRISORには,ACP/ACCP Management of Acute Exacerbations of COPD Algorithmが収載されています.

iSilo用の各種データが公開されている「MeisterMed」には,AsthmaMeisterがありますが,若干データとしては古いかもしれません.

CollectiveMed.com」のAllergy & Immunologyのセクションには各種リファレンスが集めてあり,なかにはTreatment Strategies in Allergy and Asthmaなどが収載されています.かつてここに収載されていたAnti-IgE Therapy in Asthma and AllergyやClinical Allergy and Immunologyなどは,現在は「Mobipocket」から入手可能です.このWebにあるリファレンスは,Mobipocket Readerという電子ブックソフトを利用して読みます.

Medical Wizards」には,カラーできれいな解剖アトラスのRespiratory System Anatomy Flash Cardsも紹介されています.

Skyscape」にはPocketMedicine's Treatment Strategies in Allergy and AsthmaやThe Washington Manual Allergy, Asthma, and Immunology Subspecialty Consult,PocketMedicine/IM-Pulmonary Medicineなど,やはり便利なリファレンスが多数そろっています.トップページのBrowse by subjectから専門領域を探してみるとよいと思います.

3.内分泌

内分泌疾患に特化した計算ソフトは,検索した範囲では見つかっていません.やはりMedCalcなどの計算ソフトに入っている式を利用するのが一般的です.あるいは必要な式が見つからなければ,MedCalc の作者に相談をしてみると,次回バージョンアップで対応していただけるかもしれません.

リファレンス類はさまざまです.「UCLA Division of Endocrinology, Diabetes and Hypertension」では,DOCフォーマットの各種リファレンスを無料公開しています.ざっとみても,Cushing's Syndrome,Hypercalcemia,SIADH,Euthyroid Sick Syndromeなど,特にこれから勉強をしようと思っている若手の先生に向けたリファレンスがそろっています.すでに専門家としてご活躍の先生方にも,きっと参考になると思います.

Skyscape」にはPocketMedicine/IM-Endocrinology, Metabolism, and Bone DisordersやEndocrine Drugs, Lab Values, and Diagnostic Testsなどのリファレンスがあります.ワシントンマニュアルにも内分泌の分冊があります.

Medical Wizards」には,Endocrine Anatomy Flash Cardsという内分泌系のきれいな解剖カラーアトラスがあります.

4.代 謝

代謝系で充実している情報は,やはり圧倒的に糖尿病だと思います.糖尿病の管理用ソフトは,それこそ数え切れないほど公開されています.その多くは,患者さんが自分の血糖値推移を記録するものですが,医療者側が便利に使えるツール類も少なくありません.

日本のソフトでは,栄養アセスメント支援プログラムが筆頭です.患者さんの栄養管理をするために使う指標(標準体重,BMI,BEE,TEEなど)の計算を行えます.

パーム プログラミング クラブ」では,理想体重を求め,1日当たりの最小限必要な総摂取エネルギー量を求めるDMdietや,コレステロールと中性脂肪からLDLを求め,高脂血症の診断基準や治療指針も示してくれるLDLが公開されています.

患者向けソフトでは,血糖値ログブックのPalm版というのが,多数公開されています.HanDBaseなどのデータベースソフト用であったり,単独で動いてグラフまで表示できるUTS Diabetesなど,それこそ数え切れないほどです.「Handango」や「PalmGear」で,"diabetes"というキーワードを入力して検索すると,多数見つかると思います.もっとも日本では,Palmユーザーの患者さんは少ないでしょうから,データの共有は難しいかもしれませんが.

HanDBase用のソフトは,「DDH Software Medical Solutions」のgalleryからMedical categoryを選ぶと,Diabet DBなどいくつか見つけられると思います.

リファレンス類としてはまず,「National Heart, Lung, and Blood Institute」にはClinical Guidelines on Overweight and Obesity in Adultsがあります.さらに前述の「UCLA Division of Endocrinology, Diabetes and Hypertension」では,Diabetes Mellitus,Diabetic Nephropathy,Diabetic Retinopathy,Diabetes Insipidusといったリファレンスが公開されています.

5.神 経

神経学用の計算ソフトは,検索した範囲ではほとんど見つかっていません.MedCalcなどの計算ソフトにも,該当する式は収載されていないようです.「FreewarePalm」に,Anoxic Brain Injury Prognosisという無酸素脳障害の予後計算ソフトがある程度かもしれません.

解剖アトラスは,「Medical Wizards」にNervous System Anatomy Flash Cardsが,「Medical Piloteer」にeNervesがそれぞれ公開されています.それぞれとてもきれいなカラーアトラスです.

リファレンス類は「Skyscape」に多くそろっています.The Massachusetts General Hospital Handbook of NeurologyやThe 5-Minute Neurology Consult,The Washington Manual Neurology Survival Guideなど多数ありますから,一度サイトをご覧になってください.

6.腎 臓

腎疾患の管理で必要な計算というと,まずクレアチニン・クリアランスでしょうか.遠い昔(?)研修医の頃,病棟にプログラム電卓を持ち込んで計算していたのを思い出します.ですからPalm用の計算ソフトで最も多いのは,このジャンルの計算ソフトです.探してみると意外に多く見つかるのですが,そのいくつかをご紹介します.

まずNephrology Calculatorです.クレアチニン・クリアランスだけでなく,2種類のGFR計算,Fractional Excretion,IVC/BSA Ratioその他,腎疾患管理用の便利な計算式が収載されています.

クレアチニン・クリアランスの計算ならば,「パーム プログラミング クラブ」にCCRというソフトがあります.その他「PalmGear」などを検索すると,有料・無料各種見つかります.

腎疾患があるときの薬剤投与には注意が必要ですが,このあたりの計算をしてくれるのがClinRxです.クレアチニン・クリアランスの計算はもとより,バンコマイシンやアミノグリコシドの投与量計算,Hartford Nomogram,Urban-Craig Nomogramその他がまとめられています.

ざっと機能を見る限り,かなり便利なツールのように思います.

リファレンス類ですが,The Kidney Disease Outcomes Quality Initiative(K/DOQI)には慢性腎不全の治療プラン(CKD Clinical Action Plan)が公開されています.

NephroToGoというソフトは,計算機能も持つリファレンスで,急性腎不全の対応から腎移植まで,幅広い情報がまとめられています.腎疾患を専門にされていらっしゃる先生には,かなり有益なソフトだと思うのですが,最近開発元のWebが公開停止になり,PalmGearなどでも入手ができなくなっています.どなたかダウンロードされたかたはいらっしゃるでしょうか?

Skyscape」にはPocketMedicine/Kidney and Urologic DiseaseやThe Washington ManualR Nephrology Subspecialty Consult,PocketMedicine's Treatment Strategies in Nephrology and Hypertensionがあります.

以上,内科の各専門領域に特化したソフトについてまとめてみました.今回まとめ切れていない専門領域が残っていますが,これらについては,また別の機会に整理させてください.

ここでご紹介したサイトやソフトは,「医療関係者のためのPalmリンク集」に収載されています.内容をご覧いただくと気づかれると思いますが,リファレンス類の多くは「Skyscape」で入手可能です.このサイトで入手したソフトの場合,使い勝手がある程度統一され,他のソフトとの連携もよいのが特徴です.まったく同じリファレンスは「Handheldmed」などでも入手可能ですので,これらのサイトもご覧いただくとよいと思います.

次回は小児科領域をまとめてみたいと思います.

(参考URL)
1)CardioMath:http://www.cardiomath.com/
2)パーム プログラミング クラブ:http://www.geocities.jp/palmpro/
3)National Heart, Lung, and Blood Institute:http://www.nhlbi.nih.gov/
4)APPRISOR:http://www.apprisor.com/
5)Skyscape:http://www.skyscape.com/index/home.aspx
6)下條先生のWeb:http://jns.ixla.jp/users/shimojo973/myweb1_001.htm
7)PalmEKG:http://emedic.com/product_EkgP_free.asp?OS=EKGP
8)Puff:http://www.metaworks.com/healthcare.html
9)MeisterMed:http://www.meistermed.com/index.htm
10)CollectiveMed.com:http://www.collectivemed.com/software.shtml
11)Mobipocket:http://www.mobipocket.com/en/HomePage/default.asp
12)Medical Wizards:http://www.medicalwizards.com/client/newhome.aspx
13)MedCalc:http://www.med-ia.ch/medcalc/contact.html
14)UCLA Division of Endocrinology, Diabetes and Hypertension:http://www.endocrinology.med.ucla.edu/Palm_Pilot_Resources.htm
15)栄養アセスメント支援プログラム:http://members2.jcom.home.ne.jp/babelkund/basic01.html
16)UTS Diabetes:http://utracksys.com/
17)Handango:http://www.handango.com/
18)PalmGear:http://www.palmgear.com/
19)DDH Software Medical Solutions:http://www.ddhsoftware.com/gallery.html
20)Clinical Guidelines on Overweight and Obesity in Adults:http://hin.nhlbi.nih.gov/obgdpalm.htm
21)FreewarePalm:http://www.freewarepalm.com/
22)Anoxic Brain Injury Prognosis:http://www.freewarepalm.com/medical/anoxicbraininjuryprognosis.shtml
23)eNerves:http://www.archive.org/details/tucows_330256_eNerves
24)Nephrology Calculator:http://www.tinkershop.net/nephro.htm
25)ClinRx:http://www.clinrx.com/
26)CKD Clinical Action Plan:http://www.kidney.org/professionals/kdoqi/cap.cfm#palm
27)医療関係者のためのPalmリンク集:http://www.lab.toho-u.ac.jp/med/peds/link2/index.html
28)Handheldmed:http://www.handheldmed.com/