このページは,雑誌「治療」の連載記事(2004年6月~2006年3月)を公開したものです.
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データベースについて ─HanDBaseやJFileなど─

今回はPalmで利用できるデータベースソフトウェア(以下DBソフトウェア)のご紹介です.PC向けのDBソフトウェアには,電子カルテや診療予約システムなどに利用されるOracleやIBM DB2,Microsoft SQL Serverなどの本格的なものから,Microsoft AccessやFileMaker Proなどの個人でも比較的簡単に利用できるものまでさまざまなタイプがあります.

一方,これからご紹介するPalm用のDBソフトウェアは,機能も使い方もPC向けとは比較にならないくらいシンプルです.つまり,PC用のものと比べると限られた機能しかありませんが,それゆえにその機能を理解し操作方法を習得するのに,専門知識はそれほど必要ではなく気軽に使い始めることができます.また,PCのDBソフトウェアと連携して使うことができるものも多く,Palmのモバイル性能と相まって,アイデア次第ではさまざまな場面で活用できるでしょう.さらに,古くから使われ広く普及しているものには,多岐にわたる分野の多様なデータ群が専用データとしてインターネット上に公開されており,それらを利用できるという恩恵もあります.

Palmを所有しているのならば,DBソフトウェアの一つくらいはそろえておいて損はないと思いますので,どうかしばらくの間お付き合いください.

1.汎用型DBソフトウェア

扱うデータに合わせてフィールドを追加することができ,テキストや数字などフィールドのタイプを設定することができる汎用型のPalm用DBソフトウェアの主だったものを表にまとめてみました.

ソフトウェア名

作成者・メーカー,URL

備 考

FileMaker Mobile

ファイルメーカー社
http://www.filemaker.co.jp/

FileMaker Proとの連携に優れている

CollectIN

AKIRA SUZUKI-ソフトウェア工房
http://homepage2.nifty.com/suzukieng/index.htm

AccessデータやCSVデータをPalmで入力することに特化

CurrentDB

Shifrol Corporation
http://www.shifrol.co.jp/Cdb2/index.html

Accessでフォーム作成,データ同期

HanDBase

DDH Software
http://www.ddhsoftware.com/handbase.html

リレーショナルなDBソフトウェア,専用データが多数公開されている

JFile

Land-J Technologies
http://www.land-j.com/

Palm用DBソフトウェアとして長い歴史を誇っており,専用データが多数公開されている

list

Andrew Low
http://www.lowtek.ca/list/

フリーウェア,フィールド数に制限あり

MobileDB

Handmark Software
http://www.handmark.com/

ExcelやAccessとの連携ソフトあり(有料)

Pico

Shirou I
http://plaza9.mbn.or.jp/~shirou_bb/index-ja.html

JFile 4.x形式のデータベースビューア,フリーウェア

Pilot-DB

GPL GNU General Public Licence
http://pilot-db.sourceforge.net/

フリーウェア

PsDB

せんべ
http://www.jove21.com/palm/palmware/psdb/

フリーウェア,外部メモリに置いたCSVファイルを直接読み書きできる

フリーウェアはもちろんのこと,有料であっても多くは試用版が提供されていますので,自分の使用目的に合うかどうか気軽に確かめることができます.

表の中から代表的なものをいくつか選んでその機能や特長をこれから解説していきますが,じつはPalm用DBソフトウェアの機能や操作方法は,基本的なところではそう大きな違いはありません.そこでまず最初にPalm用DBソフトウェアの老舗的存在であるJFileを題材としてPalm用DBソフトウェアの基本的な部分を説明し,その後は各DBソフトウェアに特徴的な部分を解説していくことにしましょう.

A.JFile

最も有名なPalm用DBソフトウェアといえばJFileでしょう.データの入力,追加,ソート,検索,抽出といったDBソフトウェアとしての基本的な機能が,シンプルな操作方法にまとめられているカード型データベースです.

実際の操作をみていくには何かデータが必要ですので,ここではJFileの開発元であるLand-J Technologiesのサイトで無料公開されているデータの中から医薬品のデータベースである「eDrugsDatabase」をダウンロードして使用することにします.このように無料公開されているデータが豊富にあることもJFileの魅力の一つです.

では基本的な使い方をみていきましょう.JFileを立ち上げると使用可能なデータベース名がリストアップされます.

データベース名の右横にはデータ数が示されています.

リストから「eDrugsDatabase」を選んでタップするとデータベースが開き,画面最上部にデータベース名とデータ数,その下にフィールド名,そして1レコードが1行としてデータがリスト表示されます.

上下のハードウェアキーもしくは画面右横にあるスクロールバーで,リストを縦スクロールさせることによりすべてのレコードを見ることができます.もちろんジョグダイアルがついている機種ではジョグダイアルを使用して縦スクロールさせることも可能です.

最上部右端にある右向きの三角矢印をタップして画面を横スクロールさせることで,Generic Name,Trade Name,Use or Class,Dosage Form,…などPalmの小さな画面では隠されてしまっていたフィールドのデータも参照することができます.

画面下部には左から,データベースを閉じてデータベースリストの画面に戻るためのDoneボタン,新規データを追加するためのAddボタンがあり,続いて,検索を開始する虫眼鏡アイコン,再検索をするための+アイコン,ソートを行うアイコン,フィルターを指定するアイコン,データベースの切り替えを行うアイコン,レコード削除のためのゴミ箱アイコンなどが並んでいます.

レコードの詳細データを見るにはリストされたレコードをタップします.するとタップしたレコードのみのフィールドデータが1ページに表示されるレコード編集画面になります.

この画面では各フィールドの編集が可能となり,データの入力は主にこの画面で行うことになります.

もうおわかりだと思いますが,JFileではレコードリスト表示画面でレコードの検索や抽出を行い目的のレコードを探し出し,レコード編集画面に切り替えてそのデータの詳細を確認し編集する,というのが基本的な操作スタイルです.

では試しに医薬品データの中から第3世代の抗生物質を検索してみましょう.レコードリスト表示画面で虫眼鏡アイコンをタップすると下のように検索条件を設定するためのウィンドウが開きます.

ここでは検索条件に「3rd generat」と入力していますが,検索対象フィールド(Field to Search)はデフォルトのAll Fieldsのままです.「3rd Generation Cephalosporin」といった情報はNotesというフィールドに入力されているので,ここではNotesを指定すべきなのですが,じつはすべてのフィールドを検索対象にしてもNotesフィールドに対象を限定しても検索は瞬時に終わってしまいます.つまりレコード数2,500,フィールド数8程度のデータ(約470Kbytes)では検索スピードがとても速いので,検索対象フィールドを指定する必要がないのです.

検索はレコードリストの先頭から行われ,最初に検索条件に合ったレコードのところで止まります.次に再検索するために「+」アイコンをタップするとリストの続きから検索が行われ,これまた瞬時に次に見つかった検索条件に合うレコードを選択した状態で止まります.これを繰り返すことでリストの中から「第3世代の抗生物質」を順次探してゆくのです.

では次に第3世代の抗生物質だけをリストアップ(抽出)してみましょう.レコードリスト画面の下部にある右から3番目のフィルターアイコンをタップして表示されるメニューから「Define Basic Filter」を選択すると,抽出条件を入力するウィンドウが開きます.

ここでは検索対象フィールドにきちんとNotesを指定して,抽出条件(「3rd Generation」)を入力します.「Filter」ボタンをタップすると下のようにNotesフィールドに「3rd generation」というデータが含まれる10薬品だけが抽出され表示されます.

B.HanDBase

次にご紹介するのはHanDBaseです.検索や抽出,編集といった基本的な操作方法はJFileとほぼ同じですので,HanDBaseに特徴的な部分だけ解説します.

HanDBaseの特長といえば何といってもリレーショナル機能を持っていることでしょう.2つのテーブル(データの集まり)の間に共通するフィールド(キーフィールド)を介してデータの結合や抽出を行うことができます.たとえば郵便番号と住所のテーブルがあれば,住所データを持っていない別のテーブルで作業していても,郵便番号を入力するだけで住所データを表示するといったことが可能です.

HanDBaseの特長としてもう一つ取り上げておきたいのが,データ編集画面のレイアウトのデザインが可能であることです.ただしこれを実現するにはHanDBase Formsというソフトウェアが必要ですが,HanDBase FormsはHanDBaseのラインナップの中のProfessional Edition以上にしか付属しませんのでご注意ください.

HanDBase Formsを使えばタップしたときの動作を指定できるボタンやタブを配置したレイアウトの作成も可能となりますので,先に述べたリレーショナル機能と組み合わせるとかなり使いやすいデータベースをつくることができます.例えば多くのフィールドを持つ医薬品集データベースでも,下のようにタブを用いて編集画面をデザインすればすっきりとまとめることが可能です.

さらに,この医薬品集データベースでは薬群分類をキーフィールドとして自己リレーションを設定しており,薬群分類フィールドの値によって抽出を行う機能を「類」ボタンに設定しています.よって「類」ボタンをタップすることにより現在表示している薬品と同じ薬群に分類されている薬品を簡単にリストアップすることができます.

C.FileMaker Mobile

FileMaker Mobileはその名の通りファイルメーカー社がファイルメーカーシリーズのラインアップの一つとして発売しているPalm用DBソフトウェアだけあって,PC上にあるFileMaker Proで作成されたデータベースとのファイルの同期が非常に簡単になっています.DBソフトウェアとしての機能はシンプルですが,FileMaker Proで蓄積したデータをPalmで持ち運びたいというかたには便利なソフトウェアではないでしょうか.

ちなみにJFileにはWindows上でCSVファイルとJFile専用データとの相互変換を行うjconv5.exeというソフトウェアがついてきますので,CSVファイルを介してPC用DBソフトウェアとのデータ交換が可能です.JFileのデータをAccessやFileMaker Proとデータ交換するPC用ソフトウェアも販売されています.

また,HanDBaseではPC上でHanDBaseのデータを編集できるソフトウェア(HanDBase Desktop)が同梱されていますし,Professional Edition以上であればWindows用にはAccessと,Macintosh用にはFileMaker Proとデータ交換を可能にするソフトウェアが付属します.

D.PsDB

PsDBは外部メモリー上にあるCSVデータを直接開いて閲覧・編集することが可能なソフトウェアです.CSVデータを保存したメモリースティックをPCにマウントしたときにはエクセルで,Palmのスロットに入っているときにはPsDBでデータを読むといった使い方が可能です.データの検索や並べ替えはできませんが,変換作業なしでにCSVデータを扱えるので何かと便利です.

E.Pico

JFileのファイル形式には主としてJFile4.x形式とJFile5.x形式の2種類が存在していてお互いに互換性がありません.JFile4.x形式は古いバージョンの形式とはいえJFileのデータ資産の多くはJFile4.x形式で作成されているためその存在は無視できるものではありません.そこでバージョン5以上のJFileにはJFile4.x形式のデータをJFile5.x形式に変換する機能がついています.

PicoはJFile4.x形式で作成されたデータ専用のデータビューアです.フリーウェアとはいえ,レコードの追加,削除,検索,ソート,抽出といったPalm用DBソフトウェアとしての標準的な機能は一通り備えており,スモールフォント表示やワイドハイレゾ画面にも対応しています.新規にデータベースを作成する機能は備えていませんので,手元にあるJFile4.x形式のデータを活用したいだけ,というかたにはぴったりのソフトウェアです.下の画面はインターネット上に公開されている医療用語・略語集をPicoで閲覧している様子です.

2.特化型DBソフトウェア

さて,ここまでPalm用の汎用型DBソフトウェアを駆け足で眺めてきましたが,Palmには特定の分野のデータを扱うのに特化したDBソフトウェアという分野も充実していますので,最後になりましたがここで少しみておきましょう.この特化型DBソフトウェアに当てはまるのは,例えば外食店の情報を管理する目的で作られた「ぐるグル」(フリーウェア)や「TealMeal」,書籍の情報管理専用の「Librarian」(フリーウェア),DVDコレクションのデータ管理用の「DVD-In-One」などがあります.

入力されるデータが決まっているためフィールドの種類や数が固定されている場合が多いですが,専用特化しているだけあってそれぞれ個性的で使いやすく作られています.汎用型DBソフトウェアでいちいちデータベースを作りこむのが面倒だというかたは,自分の目的に合った特化型DBソフトウェアを探し出して利用するという手もあります.考えれば医学用の教科書や辞書などもこのタイプのDBソフトウェアといえるのではないでしょうか.

おわりに

Palm用ソフトウェアの真髄はハードウェアのパフォーマンスにあわせた絶妙なる機能の取捨選択であり,それはZen of Palmと呼ばれています.データベース分野においてもこれは例外ではありません.本文でも述べましたようにPalm用のDBソフトウェアはPC向けのそれと比べて機能的にずいぶんと非力です.しかしそんな非力なソフトウェアであっても,Palmのモバイル性能とそれを使う人の創造力とをうまく組み合わせることによって大きな力を生み出すことでしょう.

本稿が,先生方がPalm用DBソフトウェアに可能性を見出し,過大な期待をかけることなく楽しく利用していかれるきっかけになればこんなに嬉しいことはありません.PalmのDBソフトウェアについて長々と書いてきましたがようやくおしまいです.お付き合いありがとうございました.

(参考URL)
1)医療用語・略語集:http://www.vector.co.jp/soft/other/pilot/se188854.html