このページは,雑誌「治療」の連載記事(2004年6月~2006年3月)を公開したものです.
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日常診療メモの作り方

Palmを手にして少しずつ使い方に慣れていくと,単にソフトをインストールして使うだけでは飽き足らなくなっていきました.もっといろいろな使い方ができるはずだ.そう考えたときに,真っ先に思い描いたのは,「診療メモをPalmに持ちこめないのか」でした.研修医時代からコツコツと書きためたメモ.先輩に教わったコツ,よく使う薬の薬用量,教科書やマニュアルの縮小コピー,これらがまとめられたシステムノートの中身をPalmに持ってこられたら,さらに便利になるに違いない.けれどこれが意外と思うようにならなかったのでした.

今月はそんな診療メモをPalm上で活用する方法についてまとめてみたいと思います.

1.メモ帳の活用

診療メモ,といわれてまず「メモ帳」を思い浮かべるかたも,けっして少なくないと思います.Palmに用意されているメモ帳を利用するのは,一番簡単で安上がりです.メモ帳で扱えるものは,文字だけのデータに限られ,図や表はそのままでは扱うことができません.図や表も駆使したメモを考えられる場合は,後述の方法をご検討ください.

さまざまなメモのファイルは,まず「カテゴリ」に「小児科」や「救急」といったわかりやすい分類項目を付けて,この項目に従って整理していきます.こうしておけば,あとで項目を見れば中にどんなメモ類が入っているかだいたい推測ができます.もっとも「検索」機能を使えば,必要な単語を検索することも可能ですが.メモ帳ならパソコンとの連携も確実ですから,パソコン上でメモを作成して,HotSyncでPalmに流し込めば,さらに充実したメモの作成が楽だと思います.

さて,それではメモ帳からメモ帳へのリンクはどうしたらよいでしょう.あるメモ帳の中にある特定の言葉をクリックすると,関連する別のメモ帳に飛ぶ,というハイパーリンクは,通常のメモ帳で可能なのでしょうか.

一つの方法は,PalmWikiというソフトだと思います.メモ帳の中の特定の言葉を特別なタグで囲んであげると,その言葉をタイトルにつけたメモ帳とリンクを作成します.これにより,擬似的なハイパーリンク環境を提供することができます.

もう一つの方法はLinkPakでしょうか.メモ帳を含めた基本ソフトを置き換える必要がありますが,その分,リンクの張り方はもう少し楽になっています.

しかしどちらの方法にしても,ある言葉から飛べる先は,別のメモファイルで,その中の特定の言葉にリンクするのは難しいようです.

それならばいっそ項目をきちんと分類すればよいのではないか.その一つの方法が,アウトラインプロセッサの利用だと思います.

2.アウトラインプロセッサを用いたら

アウトラインプロセッサというのは,項目をツリー(枝分かれ)構造で階層的に管理できるソフトです.Muchyのエディタの項を見ると,じつにたくさんのアウトラインプロセッサが公開されています.なかにはNotes Plus!のように,メモと画像その他をまとめて管理できるソフトも最近公開されているようです.

これら多数公開されているアウトラインプロセッサならば,どれを選んでも階層管理はできますから,「救急」とか「薬用量」とかの必要な項目別に階層管理すれば,見やすいメモが作れると思います.筆者は,やはり画像ファイルをメモと同列に扱えるSeton Notesを利用したことがあります.

シェアウェアで有料ですが,それに見合うだけの機能が用意されていると思います.FireViewerなどの画像ファイルにリンクを張ることができますから,メモと関連する画像をあわせて整理できるでしょう.

3.データベースソフトを用いたら

たくさんの項目があると,メモ帳の検索機能では心もとなくなってきます.必要な情報を検索して該当するメモを見ようとするなら,データベースソフトを用いるのも一つの手だと思います.

このジャンルのソフトも,じつにいろいろなものが公開されています.まずフリーソフトとして無料で入手できるものに,Listがあります.データベースとしては一番基本的なシンプルな構造ですが,項目を複数設定できるので,大項目?中項目という分類をして,便利に使えると思います.

有料のソフトになると,国内でもさまざまなデータが公開されているデータベースソフトの定番JFileや,海外では医学関連データも多数公開されているHanDBaseなどがあげられると思います.いずれもExcelのデータなどと関連させることができます.

これらデータベースソフトは,入力画面として表計算ソフトの表と同じものが用意されていますので,最初の列いくつかに大・中・小の項目(見出し)を作り,次の列にメモの内容を貼り付けます.ちょうどアウトラインプロセッサでツリー構造にメモを整理しているのと同じ状況ですが,検索機能はデータベースソフトのほうが充実していますので,便利に使えるのではないでしょうか.

4.図や表も扱う究極の診療メモ

さて,ここまでご紹介してきた方法は,いずれもテキストデータ(文字だけの情報)が中心になります.一部は画像も扱えるのですが,白衣のポケットに入っている診療メモのように,文字も画像も表も同じページで扱う,というところまでは対応できません.

それでは,これまでためてきた診療メモをPalm上で実現するにはどうしたらよいのでしょうか.ずっと悩んでいたその問題に一つの解答が示されたのは,Palm掲示板への書き込みから始まりました.「自分用の診断治療マニュアルをhtmlファイル化して,これをXiinoなどのhtml閲覧ソフトで参照できないか」という質問が掲示板に書き込まれ,これに対する回答でiSiloというソフトを教わりました.htmlファイル形式というのは,ちょうどインターネットのWeb画面を作っている形式ですが,これを独自形式に圧縮してPalmに流し込み,参照するソフトでした.検索機能は充実していましたし,何よりhtmlファイルなら,Webを見ているのと同じように,図や表もテキスト文章と混在させることができます.Webをそのまま取り込んでPalmに持ってくることさえできます.まさにシステムノートに書きためた診療メモを電子化するのにふさわしい方法だと思いました.

同様のソフトには,他にもHandStoryPluckerというソフトがあります.Pluckerは無料で,HandStoryは最初から日本語対応というメリットがありますが,一方のiSiloは,海外ではiSilo形式のデータソフトが多数公開されていますから,これらを利用することを考えると他のソフトと比較しても,メリットは少なくありません.早速iSiloと,パソコン上でiSilo用にhtmlファイルを変換するiSiloXというソフトをダウンロードして用意しました.

まず,いつもWeb作成に利用している「FrontPage」でサンプルを作ってみました.

筆者の診療メモは,アクセスしやすいように内容のタイトルを五十音順に整理しています.「胃液補正」や「嘔吐(胃透視)」は「あ」行,「胸部レントゲン」や「呼吸機能」は「か」行です.内容がとても多いメモは1つのhtmlファイルにまとめ(「a-2.html」),逆に内容が数行で足りるものは寄せ集めて1つのファイルにまとめました(「a-1.html」.これらとは別に,項目の目次ファイルを作り(「Menu.html」),まず目次を開けば,そこから必要な項目へとジャンプできるよう,ハイパーリンクを設定しました.

メモファイルはhtml形式で書きますから,画像や表も同じページにまとめて表示が可能です.例えば自作の「予防接種スケジュール表」という図がありますが,これを白紙のhtmlファイルに貼り付け,さらに必要なコメントを少し書き足しておくと,これもちゃんと表示されます.

薬用量など,もともと表で用意してある情報も,問題なく表示できます.

こうして用意した一連のファイル群をひとまとめに,iSiloXという変換ソフトを使ってPalm上で利用可能なように変換します.あとはHotSyncするだけで,Palm上に診療メモが作成されます.

htmlファイルの特徴はリンクを張って,関連する言葉を結び合うことです.iSilo用に用意した診療メモは,キーワードを互いにリンクで結ぶことで,Palm上ではタップ1つで次々に関連した言葉とそのメモを渡り歩くことができます.このリンクと,検索機能をあわせて使うことで,システムノート上のメモよりもはるかに,使い勝手の向上したメモができあがりました.

iSiloXで変換するときにはいくつかコツがあるようです.例えば,日本語の文字が化けないためのフォント設定や,画像を表示させるときの大きさ,リンクをどこまで追いかけた変換ファイルを作るか,などでしょうか.いろいろ試行錯誤された結論が,筆者のWebの「診療メモを作ってみる」や「iSiloとiSiloXの使い方」にまとめられていますので,興味を持たれたかたはぜひ参照していただけたら,iSiloをさらに便利に使えるようになることと思います.

診療メモを用意するには他にも良い方法があるのかもしれませんが,リンクが使える,画像や表があわせて扱える,という点からは,htmlファイルを用いたメモの作成は,現時点では最良な方法の一つであることは間違いないでしょう.最近のPalmではpdfファイルが扱えるようになってきましたから,wordなどで作った診療メモをpdfファイルにする方法も検討したのですが,一度htmlファイル形式に慣れてしまうと,メモとメモを結ぶリンクが張れない,というのは思いのほか不便でした.

かくしてiSiloを用いたhtmlファイルによる診療メモを作り始めたわけですが,これがなかなか楽しい作業でした.一度にすべてのメモをPalmに移行することは難しいですが,診療メモの整理をかねて,暇を見つけては少しずつメモの充実をはかっています.