このページは,雑誌「治療」の連載記事(2004年6月~2006年3月)を公開したものです.
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いろいろな薬剤データ

診療の現場で,もっとも利用するテキストは何でしょうか.診断学の本?それとも治療方法のいろいろでしょうか?確かにこれらのテキストを紐解くことも少なくないでしょうが,ほとんどのかたにとって,もっとも多用するのが治療薬ガイドの類だと思います.今月はこの薬剤情報についてまとめてみたいと思います.

1.医薬品辞書 pdrug

Palmがまだこれほど一般的になっていなかった2000年の夏,ひっそりと公開されたのがこのソフト(データ集)です.以来薬剤の追加・修正による改訂を重ね,最新版は第69版になりました.2006年9月現在の7388種の薬品について,一般名,薬効,分類,規格,用法,適応についてまとめられています.後述の「今日の治療薬」が世に出る前には,Palmで利用可能な日本の薬剤データとしては唯一のものでしたから,このソフトにお世話になったかた(そして今でもお世話になっているかた)は少なくないと思います.

ソフトは循環器内科の勝木先生が作られ,「Palm医薬」というWebで公開されています.関連ソフトとして,「医薬品一般名辞書 d-inn」と,「薬剤コード辞書 d-code」がありますが,すべて個人の努力で維持管理されていますのでその負担は大きく,現在は2002年改訂版で更新が停止しています.

A.インストールの前に

pdrugは,じつはそのままでは動きません.ソフトと呼んでいますが,正確には薬剤データ,薬剤辞書に分類されるものだからです.そのため,まずこのデータを参照するソフトを別に用意する必要があります.pdrugには異なった辞書形式それぞれに対応した,2種類が用意されています.1つはKDICという辞書ソフト用のデータ,もう1つはWDICという辞書ソフト用のデータです.

KDICはPalm上で動作する,高機能・汎用の辞書ソフトです.シェアウェア(1000円)ですが,未登録でも制限なく利用可能ですから,まず使ってみて,継続的に使おうと決めてからライセンスを購入されてもよいかもしれません.検索は高速で,最大8個の辞書を同時検索可能です.辞書データはメモリースティックなどの外部メモリに保存可能です.自分でデータを作成する方法が簡単なことから,Palmの辞書としては最も使われていて,インターネットの世界には種々の辞書が公開されています.d-innとd-codeは,KDIC対応版のみ公開されています.

WDICは,パソコン上で利用可能なPDICという辞書形式のデータを,Palm上で利用可能にしたソフトです.やはり検索は早く,複数の辞書を同時検索可能です.PDIC用の辞書としては,収録語彙数100万語を超える「英辞郎」や,皮膚科の先生が作られた約4万語の「医学辞書データ」などがあります.PDIC用の辞書をWDICで利用する場合は,辞書の変換作業が必要になる場合があります.

B.インストール

それではpdrugを使えるようにしましょう.ここではKDIC版を利用します.まず,「Palm医薬」のWebから,KDIC用辞書をダウンロードしてください.ダウンロードしたファイルはzip形式で圧縮されていますので,Lhasaなどの圧縮解凍ソフトを使ってファイルを解凍します.次にKDIC本体も入手しましょう.やはりこれも解凍作業が必要です.

まずKDICのインストールです.kdic.prcとkdic_da.prcをPalmにインストールします.マイコンピュータからファイルを表示させて,それをダブルクリックすればインストールの準備は完了ですから,あとはHotSyncするだけです.輸入版のPalmをお使いの場合は,locjkdic.prcもインストールすれば,メニューが日本語化されます.

ちょっとだけ面倒なのが,pdrugのインストールです.サイズは1.4MBくらいですので,Palm本体のメモリに余裕があるなら,そのままインストールすれば何も問題なく使えます.もしも外部メモリにインストールしたい場合は,一度本体にインストールしてからCLIE FilesやMcFile,FileZなどでメモリースティック(外部メモリ)に移動させるか,Data Importでパソコンから直接外部メモリにインストールをしてください.外部メモリ上に「/PALM/PROGRAMS/MSFILES」というディレクトリを作って,このMSFILESというフォルダの中にインストールします.HotSyncの「インストールツール」で「インストール先の変更」ボタンを押し,メモリースティックにインストールする方法もありますが,あとでCLIE Filesなどを使って,正しいフォルダに移動させる必要があります.

ちなみにWDIC版の場合は,「/Palm/Programs/PDIC」というディレクトリを作って,このPDICフォルダ内に,さらに15文字(日本語であれば7文字)以内で辞書名のディレクトリを作成し(Palm/Programs/PDIC/pdrug),この中に辞書ファイルを入れます.一般的にフォルダの名前や辞書の名前は,日本語ではなくアルファベットのほうが,誤作動が少ないようです.

C.KDIC+pdrugの使い方

Palm上にKDICというアイコンが作られたでしょうか?これをタップしてKDICを起動します.

起動時はまだシェアウェアの登録が終わっていませんので,下のように表示されると思います.

最初の2行は,登録が終わると表示されなくなります.

起動時に表示されている画面がメイン画面です.ここで「Word:」のところに調べたい薬剤名を全角カナで入力すると,インクリメントサーチをして順次表示されます.

画面右上の「L」ボタンをタップすると,ライン画面に移動します.この画面では,一行一単語形式で11個の単語を一度に表示します.「W」ボタンをタップすれば,メイン画面に戻ります.「A」ボタンをタップすると,PalmにインストールされているすべてのKDIC辞書を串刺し検索します.

pdrugは特に,いわゆる「ゾロ」と呼ばれるジェネリック薬剤情報も多く収載されています.次に紹介する「今日の治療薬」とあわせて使うと,薬剤で困ることはほとんどないと思います.

2.PDA版 今日の治療薬

このソフトが世に出て,しかも当初はPalm版のみでしたから,これによって日本でも医療関係者のPalmユーザーが確実に増加しました.その意味で,待望のソフトであったのは間違いありません.元本の改訂にあわせて毎年改訂され,現在は外部メモリにも対応していますし,またPocket PC版やパソコン版も発売されました.さらに最近はジェネリック薬剤からの同効薬検索や薬価参照が可能な「ジェネリッこ」というソフトが発売されました.このソフトでは,同効薬リストから選択した薬剤と連動させて「今日の治療薬」を起動・参照することが可能で,あわせて持つとさらに使い勝手が良くなると思います.

A.インストール

「PDA版 今日の治療薬」の開発を担当されたM2PlusのWebからダウンロード,購入が可能です.

インストールが必要なファイルは,Drug-JMSt.prc,DrugMain-JMSt.pdb,DrugIdx-JMSt.pdb,DrugUtilc-JMSt.pdb,DrugUtilg-JMSt.pdb,Yakka-JMST.pdbの6つです.この中のDrugMain-JMSt.pdbが薬剤データで,ファイルサイズが約3MBあります.このファイルだけは外部メモリにインストールすることも可能です.外部メモリへのインストールは,まずいったん5つのファイルすべてを本体にインストールします.次にメニューから「オプション」を選択し,「薬剤データ移動」で「本体メモリ→メモリカード」を選択して「移動」ボタンを押せば終わりです.あるいはpdrugと同様に,最初からメモリスティック上の「/PALM/Launcher」というフォルダへ,DrugMain-JMSt.pdbとYakka-JMST.pdbを直接インストールする方法もあります.

インストールが終わったら,「オプション」メニューの「バージョン情報」からProduct IDを確認して,M2Plusからライセンスキーをもらってください.これを「バージョン情報」の「License key」の欄に入力すれば,利用登録完了です.もちろん試用版では,利用登録は不要です.

B.「今日の治療薬」の使い方

ソフトには詳細なマニュアルが付いてきますので,これをご覧になればたいていは問題ないと思います.詳細な,また特殊な使い方の説明はマニュアルに譲るとして,ここではとにかく使ってみることにしましょう.

起動したときのメイン画面は下のようになっています.

ここで左下に調べたい薬剤を入力します.デフォルトでは「商品名」で検索するよう選択されていますが,「一般」ボタンをタップして,一般名で検索することも可能です.検索をする場合は,正式名称をすべて入力する必要があります.

それでは正式名称がわからない場合はどうしたらよいでしょうか.まず一つの方法として,メイン画面の「詳細」をタップして「詳細検索」画面に飛ぶ方法があります.ここで商品名や一般名を選択して,わかっている部分名称を入力すれば,該当薬剤が表示されます.ただしこの検索では,ジェネリック薬剤(薬剤説明画面で「他品」の項目に載っています)は検索ができません.

もう一つの方法は,右下の方にある「薬剤」ボタンをタップして飛ぶ「薬剤検索」です.ジェネリックを含む薬品の一部分の名称でも検索が可能です.

ここから目的とする薬剤を見つけてタップをすれば,その詳細が表示されます.

薬剤コードから検索したい場合は,メイン画面の「コード」をタップします.製薬メーカーのマークには対応していませんが,本体コードまたは包装コードから薬剤を検索することができます.

薬剤の説明画面には,一般名や剤形,用量や適応症,副作用などがまとめられています.最新のバージョンでは,個別薬剤に「メモ」を付けることができますので,使用上の注意や小児薬用量などを書き込んでおくことができ,また一段便利になりました.

このソフトの唯一の欠点は,インクリメントサーチができないことですが,これは今後のバージョンアップで対応されるのでしょうか?期待したいと思います.

3.その他のソフト

アメリカでPalmが普及した最大の理由は,ePocratesを使いたかったからだ,という説があります.初期のバージョンでは無料で配られていましたから,当然でしょうか.現在も機能限定版は無料で提供され,基本的な薬剤検索はそれでも十分だと思います.

欧米にはこうした各種薬剤データがありますから,もし留学その他で必要なかたは,探されてみるとよいでしょう.