このページは,雑誌「治療」の連載記事(2004年6月~2006年3月)を公開したものです.
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医学辞典の使い方

先月号の連載に引き続いて,今月は基本ソフトを機能拡張させる「置き換えソフト」とその入手方法にふれる予定でした.ところがこの原稿をまとめている最中に,「南山堂医学大辞典」のPalm版が発売されました.そこで今月は予定を変更して,これら医学辞典について,先にまとめてみたいと思います.

1.英語辞書

医学辞典にふれる前に,まず購入時に付いてくる英語の辞書からみてみましょう.

基本辞書として,CLIEには英和と和英の辞書があらかじめ用意されています.メニュー画面から「辞書」を選択すると,このどちらかの辞書が起動すると思います.英和と和英の辞書の切り替えは,右上に表示されている辞書をタップして切り替えます.収載語彙数は,最新のCLIEでは英和6400語,和英4500語程度です.

英和辞典の場合,アルファベットを1文字ずつ入力していくと,そのつど該当する単語が絞り込まれて表示されます.これをインクリメントサーチといいます.調べたい単語のすべての文字を入力しなくてもよいので,検索効率があがります.和英辞典でもひらがな・カタカナを入力すると,1文字ずつ絞り込んで検索してくれます.

どちらの辞書も,あくまでも単語を調べるだけで,国語辞書のように詳細な意味説明までは書かれていません.用法なども載っていません.このあたりの辞書も必要なら,市販のPDA用辞書を購入されるのがよいと思います.英語の充実した辞書なら,研究社の「新英和・和英中辞典」や三省堂「デイリーコンサイス辞書」などが市販されています.

あるいは,WDICという辞書検索ソフトを用いて,収載語彙数100万語を超える「英辞郎」をPalm上で利用することも可能です.ただしあまりにも語彙数が多いので,通常は単語を間引いて辞書を小さくしてから利用することが多いようです.WDICで利用可能な辞書には,他にも皮膚科の先生が作られた「医学辞書データ」もあり,英辞郎と組み合わせることで,最強の医学英和辞書が作れるかもしれません.

他にもEPWING互換形式の「ライフサイエンス辞書」をWordSeekerという電子ブック検索ソフトで利用するという方法もありますが,詳細は別の機会に譲りたいと思います.

2.医学辞典

さて,それでは医療の現場ではどんな辞書が使えたら便利でしょうか.医学用語を英語で書こうとしたら,スペルを忘れてしまった.紹介状に書かれている略語の意味がすぐに分からなかった.医学用語の意味を詳しく知りたい.Palmで利用可能な医学辞典として,こうした希望にかなう日本語ソフトが,少しずつではありますが手に入るようになってきました.つぎにこうした日本語版医学辞典についてまとめてみたいと思います.

A.ステッドマン医学大辞典

ステッドマン医学大辞典 改訂第5版のPDA版です.それまで日本語で使える医学辞典はありませんでしたから,PDAユーザーにとっては渇望のソフトでした.発売と同時に話題となり,また入手困難になったのも当然でしょうか.収載語彙数は英文約10万語,和文約9万語です.書籍版にあるイラストは,残念ながら収載されていません.

マニュアルに従ってインストールしますが,この辞典の場合,辞典本体は外部メモリにインストールする仕様となっています.やり方はマニュアルに詳述されていますので,おそらくそれほど難しくはないと思います.外部メモリに保存される辞典は,約55MBの大きさです.

ソフトを起動すると,真っ白な検索画面が表示されます.画面の下のほう,「英和連」という3つのボタンは,それぞれ英文,和文の検索と,連語検索を選択するボタンです.連語検索とは,入力した英単語を含む連語を検索する機能で,例えば「chronic disease」と半角スペースを使って2つの単語を入力すると,この2つの単語を含む,「chronic granulomatous disease」など該当する言葉が表示されます.

検索モードを決めたら,「検索」ボタンの左側に,調べたい単語を書き込んでいきます.

このソフトの単語検索は前方一致ですから,検索ワードは言葉の途中まででも大丈夫です.ただ残念ながらインクリメントサーチには対応していませんので,単語を入力して検索ボタンを押さないと,該当する単語の一覧を見ることができません.

入力間違いは検索してみないと気づかないわけで,この点が若干不便に感じます.一覧表示から該当する単語をタップすると,解説表示画面となります.

和文検索は好みの分かれるところかもしれません.例えば「慢性」と漢字で検索をすると,漢字かなカタカナ混じりで単語の一覧が表示されます.一方で「まんせい」とひらがなで入力して検索をすると,一覧表示はすべてひらがなで表示されます.「まんせいあみろいどーしす」とすべてひらがなで表示されると,一瞬戸惑うのは筆者だけでしょうか?また「まんせい」では97件の検索結果に対して,「慢性」では98件と,検索結果に差があるのも,何となく気になります.

しかし収載語彙数の多さは魅力で,書籍版のステッドマンをご存知のかたには,あの分厚い本がPalmに載ることはとても便利に思われることでしょう.

B.右腕くん Vol.3

右腕くん Vol.3は,「今日の治療薬」PDA版を発売しているM2Plusという会社が開発したソフトで,約5千語の医学・看護略語を収載しています.略語から原語や和訳を表示するだけでなく,原語や和訳から,それぞれ略語などを検索することもできます.

検索語が薬品名の場合は,画面右下の「治療薬」ボタンをタップすると,「今日の治療薬」の該当する項を連動表示する機能があり,両者をセットでインストールすると便利に活用できると思います.

C.南山堂医学大辞典

まさに満を持して登場した医学辞典です.第18版はPalm専用で発売されましたが,最新の第19版では,Pocket PCにも対応しました.

南山堂医学大辞典は,書籍版としては定評のある辞典で,最新のPalm用医学大辞典では第19版を完全収録しています.収載語数は,原語見出し語で約4万語,外国語索引約11万語と,ステッドマンに比べてもけっして見劣りしない語彙数となりました.第19版は,医療用PDAソフトの開発で定評のあるM2Plusによる開発・発売となりました.

この辞典も,辞典本体は外部メモリに置くことができます.CLIEの場合,容量の大きなメモリースティックを用意すれば,たくさんの辞書類を一まとめにでき便利だと思います.Treoでも外部メモリは利用可能です.

インストールをして起動すると検索画面となります.画面下中央に検索する言葉を入力します.第19版ではインクリメントサーチ(一文字入力するたびに該当語を自動検索する機能)ができなくなりましたが,その代わりに部分一致や前方一致による検索が可能となりました.言葉を正確に覚えていなくても検索が可能ですから,使い勝手は向上したと思います.

該当する単語が一覧に表示されたら,それをタップすると解説画面が表示されます.収載語彙数が増えましたが,相変わらず1つの言葉の解説は詳細です.またこの解説画面の中には,さらに別の言葉へのハイパーリンクがありますから,わからない言葉をどんどん調べていくことができます.

このように辞典の中を縦横無尽に動けますので,調べ物のついでにちょっと勉強,という使い方もでき,辞典としての機能を十分満喫できるかもしれません.筆者個人としては,これらの機能の他に,単語にコメントを書き添えることができれば,さらに便利になるだろうと思うのですが,機能的には難しいのでしょうか?

左上の「メニュー」からは,もしインストールしてあれば,「今日の治療薬」や「ザ・レジデント」を直接起動することが可能です.

最後に,海外の辞典でよければ,それこそ数え切れないほど多種多様なものがインターネットで入手可能です.興味を持たれたかたは,筆者のWebなどを足がかりに探されると,その種類の多さに驚かれることと思います.

少なくともこうした辞書・辞典類をPalmにインストールすれば,重たい本を持ち歩く必要はまったくなくなるわけです.何よりPalmは,パソコンと違って気軽に持ち運び,軽快に使えることを考えると,これらの辞書類を入手されるメリットは大きいと思います.

(参考URL)
1)WDIC:http://www5b.biglobe.ne.jp/~ekuta/
2)医学辞書データ:http://www.nnc.or.jp/~otaderma/
3)ライフサイエンス辞書:http://lsd.pharm.kyoto-u.ac.jp/ja/download/index.html
4)WordSeeker:http://www.muchy.com/review/wordseeker.html
5)ステッドマン医学大辞典:http://www.medicalview.co.jp/stedman/stedman04.shtml
6)右腕くん Vol.3:http://www.m2plus.com/mproducts/migiude/migi3.html
7)南山堂医学大辞典:http://www.m2plus.com/mproducts/nzddic19/nzddic19.html