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「治療」2015年7月 Vol.97 No.7

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2015年7月 Vol.97 No.7
海のむこうの総合診療

定価:2,700円(本体2,500円+税8%)

今月の視点

ラジャクマールの教え
─日本列島のみならず,丸い地球の上に立っている日本の総合診療─

 WONCAは,全世界の総合診療・家庭医療を束ねる学術団体である.現在,130を超える国々の総合診療関連の団体が加盟し,会員数は約50万人である.2005年,このWONCAのアジア太平洋学術会議が京都において開催された.筆者はその学会の事務局長であったが,会期も終盤となったある日,やや色黒の老紳士が,日本の若い総合診療医と話したいと事務局を訪れた.彼は,「この学会では,どうしてアメリカ,イギリス,オランダや,自分のようなマレーシアなどから海外の演者を大勢呼ぶのだ.僕は日本を誇りに思うアジアの総合診療医であり,君たち日本の総合診療の話が聞きたくてこの学会に参加したのに,その話がほとんどない.君たちはアメリカやイギリスにすでに占領されている」といった内容の話を静かに,しかし熱意を込めて語った.その彼こそが,元WONCA学会長であり,アジア太平洋地域の若い総合診療医に対して,アジアから総合診療を発信するよう呼びかけるラジャクマール運動を引き起こしたM. K. ラジャクマールその人であった.それから3年後,彼は死去し,マレーシアで国葬が営まれた.
 海外の総合診療については,情報が欧米に限られている感がある.しかし,アジアを含め,世界の多くの国に総合診療があり,各々の国がよりよい総合診療を希求し,努力している.たとえそれが発展途上国の総合診療であっても,その国の国情を理解すると,地域に寄り添った機能的な総合診療であることが認識されることも少なくない.そして,その各々の総合診療を知れば知るほど,日本の総合診療のあり方の参考になると思える.
 逆に,日本の総合診療においても,近年では諸外国の参考になっているケースも散見される.WONCAなどでも,日本の総合診療医からの発表が多くなり,筆者が編集長をつとめるアジア太平洋地域のWONCAの公式学術誌,Asia Pacific FamilyMedicine誌においても,日本からの発信が非常に増えてきた.日本の総合診療にかかわる研究や教育についても,自信をもって発信されることはとても嬉しく思われる.
 この特集をお読みいただいて,読者の「総合診療」が,日本に存在する総合診療ではなく,世界に位置する総合診療となるパラダイムシフトをご経験いただければ幸いである.そして,今後の日本の総合診療の発展に少しでも寄与できたらと思う.
 最後に,本特集では多くの友人たちが寄稿してくださった.心から感謝申し上げたい.

[編集幹事]
三重大学大学院医学系研究科家庭医療学
竹村洋典

特集の目次

■総 論
海外から学べること,日本の総合診療のこれから(竹村洋典)

■海外の総合診療を知る
上海の総合診療(矢野(片岡)桂子)
シンガポールの総合診療(佐藤健一)
ネパールの総合診療(楢戸健次郎)
インドの総合診療 ─アーナンダ病院での体験─(大竹紘一)
オーストラリアの総合診療と医療機関へのかかり方(高村昭輝)
エチオピアの総合診療(堀 和一郎)
ザンビア共和国の総合診療(堀 和一郎)
ルーマニアの家庭医療(南條 琴)
フランスの総合診療(佐野 潔)
イギリスの総合診療(澤 憲明)
オランダの総合診療(シーケル(清水)美知緒)
アメリカの総合診療(大塚亮平,他)

■海外の目を通して日本の総合診療をみる
日本とインドネシアにおけるプライマリ・ケアの現状比較(マリンダ・アシア・ヌリル・ハヤ)
家庭医物語 ─現場で働く2人の家庭医を通して知るアメリカと日本の家庭医療─(西連寺智子,他)

■海外に出かける
アメリカの家庭医療学研修(西連寺智子,他)
イギリスのGP研修(一戸由美子)
WONCA(四方 哲)
ラジャクマール運動(吉田 伸)
Academic GP×医学教育学で海外を舞台に働く(錦織 宏)

連載

「治療」「薬局」合同企画 データで読むクスリ
先発 vs ジェネリック医薬品 シェアは薬効領域別でも同じか?!(浜田康次)

すんなりわかる
実践! 海のむこうの総合診療 ─若手医師こそ海外の医師と積極的に交流しよう!─(今藤誠俊)

心楽しく働くにはどうしたらよいか?? 信念対立解明アプローチ入門(9)
八方美人の人(京極 真)

在宅医療をはじめよう! 在宅医療の質=理念×システム×制度の知識(7)
【理念編】「枯れるように逝くということ」① ─食べられなくなったとき,どうする?─(永井康徳,他)

子どもの今と未来を支える医療と教育 〜スウェーデンにおける最新の医学・医療とダイバーシティ教育〜(2)
障害のある子どもの特別支援教育におけるハビリテーションの役割(小野尚香)

タイムマシンに連れられて 30年後の未来医療(11)
2045年の脳梗塞治療(石橋 哲)