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「治療」2015年6月 Vol.97 No.6

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2015年6月 Vol.97 No.6
生きると向き合う わたしたちの自殺対策

定価:2,700円(本体2,500円+税8%)

今月の視点

一般臨床医のなかで「ある人の自死」と対峙する

 わが国の年間の自殺者数は3万人前後で推移しており,その数は常に交通事故死を上回っている……これは,有名な統計で,医師と医療者は,まだ経験が浅いうちから教科書や研修会のテキスト,新聞の見出しなどで頻回に見聞きしています.
 いつも頭の片隅にあったとしても,一般臨床に携わるほとんどの医療者にとって「自殺者3万人」という数字は,自分の専門分野の最新治療や,資料のなかのほかの記事と変わらない重さであったと思われます.しかし,ある日を境に3万人が自分にとっての「目の前の1人」になったなら,文字でみたときとは全く次元の異なる重みと深刻さを伴って,考えや診療のなかにまで覆いかぶさってきます.
 ある人の自殺と向き合い,「どうすればよかったのか?」,「これからどうすべきなのか?」…….今回の編者である私は精神科医であっても,自殺とそれにかかわる問題の専門家ではなく,今までに何度か自殺を巡って逡巡してきた1人です.
 本誌では非専門家の視点から,読者の「目の前の1人」へ,特別な訓練はなくとも始められる向き合い方を模索するつもりで本特集を企画しました.また,慣れない試みながら,自死問題の当事者からの私たちへのメッセージも取り入れました.
 われわれは,自殺に向き合い何をなすべきか? 自殺へのナラティブだけでは,正解は見出せないかもしれませんが,本誌に目を通した方が,1分でも長く自殺という重い課題に向き合う助けとなればと祈念します.
 そして,自死で人生を中断された方々の冥福をお祈りいたします.
 今生きている人だけではなく,亡くなった人への思いも忘れないという気持ちを込めて,本誌の表紙に青雲を捧げます.

[編集幹事]
杏林大学医学部精神神経科
今村弥生

特集の目次

■特別座談会
生きると向き合うわたしたちの自殺対策(遠井敬大,菅野哲也,久我弘典,田中増郎,今村弥生)

■自殺への危機介入
プライマリ・ケアの診察室で「死にたい気持ち」のリスク評価(木村勝智)

■死にたいといわれたその時に
死にたい患者をER で助けたその後で……(鈴木將玄,他)

■それぞれの立場から
精神科医療の立場から(久我弘典)
重篤な身体疾患治療後の希死念慮(山岸文範)
慢性疾患のある方の希死念慮(喜瀬守人)
「自殺防止のための電話相談」の経験から(西村由紀)

■自殺総論
世界の自殺対策(山本賢司)
日本における自殺対策(衞藤暢明)
診療所の外に出て行う自殺予防活動(宮崎 仁)
『mhGAP 介入ガイド』による自傷/自殺への対応(小澤寛樹,他)
自殺未遂 当事者のメッセージ㈰ 自死から生還して(西田千広)
自殺未遂 当事者のメッセージ㈪ 消えない記憶に思うこと(千葉 守)
自死で子どもを失った家族から(藤田玲子)

■自殺各論
ER での自殺のスクリーニング診察(林 寛之)
うつ状態で希死念慮のある人を励ますか? ─ プライマリ・ケアの立場から─(井出広幸)
死を考えている患者と外来で話すとき(大野 裕)
「死にたい」と訴える人に対し,抗うつ薬を処方すべきか?(田中増郎,他)
■ポストベンション
ある患者さんとのかかわり─ プライマリ・ケア医より─(星野啓一)
生きる「力」のナラティブ(今村弥生)
■締めの文章
フランクルの言葉:自殺をする必要がないほどひどい状況を乗り越えた精神科医からのメッセージ(鈴木映二)

連載

心楽しく働くにはどうしたらよいか?? 信念対立解明アプローチ入門(8)
自信がない人(京極 真)

在宅医療をはじめよう! 在宅医療の質=理念×システム×制度の知識 (6)
【制度の知識編】訪問看護を活用して在宅医療の質を高めよう!(永井康徳,他)

子どもの今と未来を支える医療と教育 〜スウェーデンにおける最新の医学・医療とダイバーシティ教育〜(1)
スウェーデンという社会─「暮らし」と「人生」へのメディカライゼーション─(小野尚香)

タイムマシンに連れられて 30年後の未来医療(10)
30年後の膵臓がん治療─ 免疫療法を中心とした集学的治療─(藤澤聡郎)


(寄 稿)
臨床経験
VCM注腸が著効した重症偽膜性腸炎の一例(野哲史,他)