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「治療」2013年増刊号 Vol.95

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2013年増刊 Vol.95
「しまった!」を役立てる
Clinical Jazz活用で失敗を成功に

定価:5,616円(本体5,200円+税8%)

今月の視点

 忙しい業務に明け暮れる日々,うまくいくこともあれば失敗もあり,その繰り返し.なかには2度と振り返りたくない,蓋をしてしまいたくなるような過去もある.その蓋を開くつらさに立ち向かって,いったいどうしろというのだ…….
 プライマリ・ケアとは難しいものです.個人的には,「プライマリ・ケアに求められる診療範囲は,医師の能力で規定されるものでなく,患者・家族の希望によって大きく変わり得る」ということが理由の1つと考えます.そして,実際の現場で遭遇する患者は,病初期がゆえに非常に曖昧で不完全.この不確実性に耐える能力も大事とはいうものの,難しさの大きな要因.でもだからこそ,プライマリ・ケアの臨床現場は,常にスリリングでエキサイティング,魅力的なのです.患者・家族の求めるアウトカムは,「既知のエビデンスを適応させる診療」を超越しています.私たちには社会環境,患者・家族の意向を汲んだ現実的な落し所を,良好なコミュニケーションを通じて見つける柔軟な過程が求められます.こういった,時に自分の能力を超え,不確実性に耐えながら,最高の医療を当てはめるのではなく,人に応じて最適・最良なものにアレンジするという特徴があるがゆえに,「失敗に至るピットフォールも多い」,というのが現実なのだと思います.
 これらを踏まえ,本特集では,主に日本プライマリ・ケア連合学会に所属する,後期研修を終了したての,臨床的にも多彩な経験を積み,酸いも甘いも噛み分ける,脂の乗った若手〜中堅医師を執筆陣の中心に迎えました.彼らは,新しい領域に常に踏み込むことで,日々振り返りをして成長していく過程に長けているのです.さらに,プライマリ・ケアの医療事情に明るい各科専門医にも執筆していただき,全体として診療規模・地域・性別に,大きな偏りがないようにし,プライマリ・ケアのさまざまな局面で出会う落とし穴を網羅できるよう配慮しました.
 本特集であげられる事例は,創作ではなく,個人の同定されない範囲で軽い修正を加えた「事実」です.執筆依頼をする当初はこの「事実」の告白には相当な勇気が必要だろうと,不安とためらいを抱えていましたが,杞憂に終わりました.ご覧のとおり,各執筆者の赤裸々な告白とその振り返りは,実感のこもった臨場感溢れる内容ばかりで,どの事例も大変教訓的です.振り返りのヒントとなる共通した何かが,言外にみえてくるのではと期待しています.
 また巻頭インタビューとして,ポートフォリオ教育の第一人者である藤沼康樹先生に,ご自身が振り返りの重要性に気づき実践するまでの過程,教育現場での導入と現状について,存分に語っていただきました.「なかなか振り返りのきっかけをつくれない」,「何を振り返ったらよいかわからない」ような学習者,これから振り返りの教育を始めようとしている指導医の方々に,きっとお役に立つであろうpearlが散りばめられています.
 本書がお読みいただく皆さまの臨床現場における参考となり,患者へさらによいアウトカムが提供できることを願いつつ,勇気ある執筆者への感謝を込めて.

2013年3月
企画責任を代表して
三重大学医学部附属病院総合診療科 北村 大

特集の目次

巻頭インタビュー(藤沼康樹 他)
Clinical Jazzって何だろう?(横林賢一)

■臨床現場編
◎病歴・問診・医療面接
診療時の環境が判断を鈍らせた……(若林崇雄 他)
ペニシリンアレルギーと思って治療していたのに……(水戸陽貴 他)
感染症であろうとの思い込みから診断が遅れた……(福島智恵美)
訪問診療目的で紹介された,がん終末期患者とのやり取り(木村琢磨)
非特異的症状でも悪性腫瘍を疑えば,迅速な対応を……!(樫尾明彦 他)
◎身体診察
気持ちが焦ってしまい,身体診察が不十分だった(坂戸慶一郎)
「いやな感じ」が実は…… ─身体が醸し出す重症感─(村田亜紀子)
◎検査・手技
患者への陰性感情が,検査施行時のミスにつながった……(北村 大)
気管切開チューブ交換─「できる」と思っていたのに……(阿見祐規 他)
膵臓がんの見逃し事例(廣瀬英生)
コンサルテーションって難しい(大矢 亮)
準備不足のため,胃瘻交換で搬送することになった症例(小坂文昭)
◎診 断
思い込みから重大な疾患を見逃した……(中前範子)
「影」ばかり追わずに,怪しいヤツには「証拠」探しを!(飯島研史 他)
「専門医の診断済み」という,診断エラーへの甘い囁き(栗原大輔 他)
主訴・病歴聴取に立ち返ることを怠ってしまった(鎌田一宏 他)
トロポニン陰性のため診断できなかった急性冠症候群(高木幸夫)
心窩部痛が主訴で,後日気胸とわかった若年男性(立花祐毅 他)
重大なミスをした研修医に,指導医はどう指導する?(佐田竜一)
◎治 療
知識不足が重篤な結果を招きかけた……(若林崇雄 他)
帰宅させてよいのか悩んでしまったアルコール多飲患者(佐々木隆徳)
予期せぬ薬物相互作用を引き起こした内服薬確認不足(山本 祐)
common disease─慣れているからこそ穴がある(佐藤 誠 他)
結果だけで失敗したとは必ずしもいい切れない(宮地純一郎)
診療も医師-患者関係も慣れてきたと思ったときが要注意(和田幹生)
「指示通り」インスリンを打っていたら……危険でした!(下川京子)
糖質制限が著効を示した糖尿病のケース(板東 浩 他)
認知症のある患者への関節リウマチの治療(大杉泰弘)

■医療コミュニケーション編
◎患者とのコミュニケーション
「何も説明しないで」と願う終末期患者・家族とのやり取り(木村琢磨)
糖尿病の診断を伝えた結果,食べられなくなった……(北山 周)
心筋梗塞発症が懸念された1本の電話……(朝倉健太郎)
悪性疾患の可能性を伝えるときに注意すべきだったこと(森下真理子)
外科的治療を拒否する患者とつき合いきれず……(原 穂高)
青年のこころに届かなかった支援(今村弥生)
言葉が通じず病歴を軽視したため,診断が遅れた……(宮 景)
高齢患者さん本人にがん告知を行ったが……(山田康博 他)
◎スタッフ・他職種・同僚とのコミュニケーション
「STさん,愕然としていましたよ」(菅家智史)
「当科的疾患ではない」の壁のはざまで……(永井友基 他)
頑張る気持ちが空回りしてコミュニケーション不足へ発展(遠井敬大)
一生懸命取り組むチームの姿勢が入院の判断を遅らせた(太田 浩)
他職種との連携不足が緊急性判断を迷わせた(西岡洋右)
看護師は診療の補助─その構図が治療の停滞を招いた(佐野 樹)
苦手なスタッフに,怒りがこみあげて……(江口幸士郎)
◎研修医とのコミュニケーション
地域医療研修に興味がもてない研修医への対応(中桶了太)
研修医が急に病院に来なくなった!(本村和久)
プレゼンテーションがうまくいかない研修医(川尻宏昭)
◎家族とのコミュニケーション
いきなりの予後告知に患者も家族も大ショック!(平塚祐介)
医療者である患者家族とのすれ違いで通院が途絶えた……(濱井彩乃 他)
治療前の母親との話し合い不足がクレームにつながった(五十嵐 博 他)
共感的コミュニケーションの不足が信頼低下を招いた(井階友貴)
不安をあおる顔と言葉(佐々木隆史)
生存さえもが疑われ,行政との連携が求められたケース(朝倉健太郎)
◎他施設・他病院とのコミュニケーション
施設調整をめぐるトラブルを患者さんにみられた(若林崇雄 他)
医師だけで抱えてしまい,多職種連携を活かせなかった……(紅谷浩之)
多・他職種だからこそ心がけたかったコミュニケーション(森 洋平)
防げなかった自殺企図(今村弥生)
地域の緩和ケアシステムにより患者・家族が翻弄された(松典子)

■医療倫理編
◎治療導入&治療終了
治療中断の提案が,なぜ家族に受け入れられないのか?(鈴木昇平)
◎栄養管理
嚥下困難時の栄養方法で家族の想いとすれ違った……(太田 浩)
胃瘻造設をめぐって,家族と意見が対立した(志村直子)
家族面談・カンファレンス
診察に家族を呼んでわかった高齢夫婦の現状(泉 京子)
家族カンファにはヘルスエキスパートを加えるべし!(今藤誠俊)
◎終末期
対応の遅れが臨終時にスタッフや家族間で葛藤を生んだ(成島仁人)
終末期ケアの意思決定とコミュニケーション(浮田昭彦)
予後予測が正確に行えず,看取りが後手になってしまった(西 智弘)
鎮静方法でスタッフ間の意見が割れ,患者・家族を怒らせた(西 智弘)
遷延性意識障害の患者さんの治療をどこまで行うか(森下真理子)
孤立していた介護者の意思決定を支援できなかった(森 洋平)
終末期における家族との面談で反省すべき点があった(中山 元 他)
◎病院・診療所経営
スタッフ間の感情的な対立で職場の雰囲気が悪くなった(田中久也)
外来患者が増えない悩みをSWOT分析でアプローチ(浜野 淳)
看護助手も大切なスタッフ─成長しながら事故防止─(中山久仁子)
◎病院・診療所の業務・運用
診療所の併設施設で急変!? そのとき医師は?(菅野哲也)
ピンチは改善のチャンス!(今藤誠俊)
なぜ医師しかいない!? ─体制が怒りを呼んだ事例─(中村琢弥)
「待ち時間が長い!」と怒鳴られた.診療の質が低い?(一戸由美子)

■医療現場の教育編
◎医学生への教育
遅刻が先輩に知れ,実習生がこっぴどく叱られてしまった(鈴木孝明)
◎研修医への教育
指導医間の連携不足から患者さんを傷つけた……(中前範子)
怒るほうにも理由があり,怒らせるほうにも理由がある?(室林 治)
◎スタッフへの教育
勉強会がスタッフの行動変容につながらなかった……(田中久也)

■その他編
ヒヤリハットカンファレンスで振り返る(川口篤也)

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