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「治療」2019年3月 Vol.101 No.3

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2019年3月 Vol.101 No.3
救急じゃない心電図

定価:2,750円(本体2,500円+税10%)

今月の視点

 1903年,オランダの生理学者Willem Einthovenは,心臓の電気活動を記録することに成功し1924年ノーベル賞を受賞しました.当時の心電図はすでに現在と変わらない正確さでしたが,その時点では単なる「曲線」にしか過ぎませんでした.それに「意味」を与えたのが,田原淳博士による刺激伝導系の解明でした.解剖学的研究により,単なる波の1つ1つが意味をもつようになったのです.
 心電図はその後の研究により,「心臓疾患」というさまざまな意味ももつことがわかりました.いまだに循環器疾患の基本的ツールとして揺るぎないのは,その簡便さとそれに比して多くの意味を私たちに教えてくれるからです.ごく最近まで私たちはこの単なる「曲線」からさまざまな意味を読み取るべく勉強したのでした.
 いま,そうした勉強をしなくてもその意味を人間よりも正確に教えてくれる先生が出現しようとしています.そう,AI(人工知能)です.すでに開発が進んでいる通り,近い将来心電図の読影は恐ろしい正確さでAIが行ってくれるでしょう.そのとき私たちの出番はなくなるのでしょうか.
 いや,そんなことはないでしょう.AIが教えてくれるのはあくまで心電図という電気信号が発する意味です.とくに救急の場ではなく十分時間が与えられている場合,その意味が,患者さんの「全身状態」という文脈のなかでどのような別の意味に変換されるのか.さらには心電図の意味が,その患者さんの生活世界という文脈のなかにどのような新しい意味をもつのか.AIが与えた意味を,さらに大きな文脈のなかの意味に変換することが重要になると思われます.それはAIにはできない,そしてそれこそがこれからの医師に求められることかもしれません.文脈のなかの心電図の意味,本企画がそんなことを考えるきっかけになれば幸いです.

[編集幹事]土橋内科医院 小田倉弘典

特集の目次

■総 論
心電図の正しい読み方とは?(杉山裕章)
紹介を迷う心電図─どんなときに紹介すべきか? しないでよいか?─(村上 学,他)
詳しい心電図:ホルター心電図─いつどんな人が必要になるのか?─(長谷部雄飛,他)
詳しい心電図:運動負荷心電図─いつどんな人が必要になるのか?─(加藤祐子)
詳しい心電図:携帯型心電図(ループレコーダー含む)─いつどんな人が必要になるのか?─(鈴木健也)
健康診断の心電図─そもそも必要なのか?─(香坂 俊)
健康診断の心電図─見逃してはいけないのは?─(築島直紀)
心電図の自動解析─どこまで信用すべきか?─(片岡直也,他)
学校心臓健診の心電図─注意すべき心電図と学校生活管理指導表の書き方は?─(住友直方)


■各論:この心電図をどうする?
心室肥大(関口幸夫)
心室内伝導障害(右脚ブロック,左脚ブロック,左脚分枝ブロック)(宮内靖史)
電解質異常:高 K 血症(臼田圭佑,他)
電解質異常:低 K 血症(臼田圭佑,他)
電解質異常:高 Ca 血症(原田将英,他)
電解質異常:低 Ca 血症(原田将英,他)
心房期外収縮(多発)(赤尾昌治)
心室期外収縮(阿部芳久)
WPW 症候群(林 英守)
Brugada 症候群(髙木雅彦)
QT 延長・短縮症候群(石田明彦)
早期再分極症候群(福田浩二)

■忘れ得ぬ心電図
自然発生心室細動の12 誘導心電図(松本万夫)
ER で研修医が大慌てとなった頻拍発作(築島直紀)
スクリーニングの心電図検査により
二度の緊急入院をしいられた70 歳,女性(伊賀幹二)
「居眠り運転」で追突し,罰せられた67歳,男性(沢山俊民)

連載

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