クロストークから読み解く周産期メンタルヘルス

クロストークから読み解く周産期メンタルヘルス

書評

学問的だが,読み物としても面白いユニークな一冊!

野村総一郎(一般社団法人日本うつ病センター 副理事長)

 周産期を時間軸で見ると,妊娠後期,出産,産褥期,子育ての開始と,いろいろな異なる局面が展開される.併せて,不妊治療,出生前検査などを巡る生命倫理的な課題も発生し,それがメンタルな面へも影響を与えることもあり,多くの精神医学的な問題が醸し出される.さらに,もともと心の病気を持っている場合,それに応じた対応も必要である.加えてこれを誰が担うのか,ということになると,多くの医療職種の共同作業という,言うのは簡単だが,実際にはマニュアルどおりに進まないプロセスを乗り越えねばならない.このように考えると,周産期の医療,特にメンタルヘルスを適切に運ぶという作業は,5元6次方程式を解くようなものであり,コンピュータの助けでも借りたくなるくらいである.
 しかし本書は,コンピュータ的にではなく、人間的な方法で実にうまく乗り越えている.それは,クロストークという方法によってである.通常の事例集とは異なり,メンタルヘルスで現場が苦慮した多くのケース,例えば妊娠で再燃した統合失調症,妊娠期のパニックや摂食障害,周産期の暴力,不妊治療中のうつ病,産後うつ病への対応,死産の問題などを,産科医,精神科医,助産師,看護師,保健師,臨床心理士,精神保健福祉士,小児科医などいろいろな職種間で話し合い,相談し合った,その会話が架空のクロストーク(対話)として,生き生きとした日本語で再現されているのである.「架空の対話」と言ったが,どの対話も執筆者の実経験に基づいている.そうでなければ,このようなリアルさは出なかったであろう.本書は学問的にも価値の高い内容を持っているが,それと同時に他書にない分かりやすさがあるのは,この形式の成功の成せる技であろう.

最後に,クロストークでこの書評も閉めたいと思う.
精神科医:周産期のメンタルヘルスがうまく整理され,学問的でありながら,分かりやすい.とても実用的な本に仕上がっていますね.
執筆者:そう言っていただけると嬉しいです.現場のチーム医療を成功させるためにも役に立つと自負しています.