終末期の肺炎

終末期の肺炎

書評

山中 克郎 先生(福島県立医科大学 会津医療センター 総合内科)

 なんだ,この医学書は! 表紙に実に美味しそうな寿司ネタが並ぶ.コハダや穴子の握りをみれば寿司職人の腕前がわかるように,「総合診療医の腕は誤嚥性肺炎診療をみればわかる」そうである(汗).富山出身の大浦誠先生のニヤリとした顔が目に浮かぶ.
 無菌である胃内容物の誤嚥による化学性肺臓炎(メンデルソン症候群)は治療に抗菌薬を必要とする細菌感染症の誤嚥性肺炎と区別される.肺がんや肺結核との鑑別も必要であるし,最近ではびまん性嚥下性細気管支炎という概念も加わり,誤嚥性肺炎の診断と治療は総合診療医の知識とセンスが求められる.
 奥 知久先生が提唱し,森川 暢先生がアレンジを加えた誤嚥性肺炎で介入が可能な「ABCDEアプローチ」はわかりやすい.「ABCDE」とは急性疾患の治療,適切な体と食事形態,口腔ケア,薬剤,神経疾患,認知症/せん妄,栄養,リハビリテーション,倫理的配慮(緩和ケアを含む)を示す.
 なかでも「口腔ケア」は非常に重要で発熱や肺炎発症率,肺炎による死亡率を下げるという.パーキンソン病を疑った場合の「L-DOPAチャレンジテスト」を筆者はまだ施行した経験がない.誰もができ,安全に口から食べられる「完全側臥位法」も初めて聞いた.参考文献にはYouTubeが紹介されていて,これが大変興味深いのである.
 サルコペニアとは加齢や疾患により筋肉量が減少し,筋力と機能の低下をきたすことである.「とりあえず安静」,「とりあえず禁食」,「とりあえず水電解質輸液のみ」という指示により医原性サルコペニアが起きる.ベッドサイドで短時間に行える嚥下機能評価である「反復唾液嚥下テスト」,「改訂水飲みテスト」に習熟し,他職種を交えたチーム構築に総合診療医は注力しなくてはならないと本書は説く.警策(けいさく)で座禅中に肩を叩かれる思いであった.
 この本で学んだことは明日からでも実践できる.また誤嚥性肺炎かと思っていた自分の診療姿勢を猛省し,診療の質を高めなければならないと痛感した.高齢者医療を大きく変える可能性を秘めた名著である.すべての若手医師と指導医にじっくり読んでほしい.