序文
臨床栄養あるいはNSTに関する書籍がたくさん出版されています.そのような中で本書の企画が持ち込まれました.実は,雑誌「薬局」2005年1月号で「薬剤師のための静脈・経腸栄養管理の基礎知識」をまとめたことがきっかけだということでした.おそらくその企画の評判が良かったのでしょう.その延長の企画ということでしたが,薬剤師のためよりも,栄養・NSTに関する今までの書籍になかった分野を網羅することで多くのNSTに関わるコ・メディカルのスタッフに参考になるものを創りたいと思いました.
さて,コ・メディカルに不足しがちであやふやな医学的知識を明瞭に解説してくださる医師の協力を得ることが第一と考え,先の企画でアドバイスおよび執筆いただいたJSPEN理事の山東勤弥先生にこの企画に参加いただきました.さらに医師の立場から保木昌徳先生(大阪樟蔭女子大学),薬剤師の立場から倉本敬二先生(奥羽大学薬学部)に企画に加わっていただいて分野ごとの項目を列挙しました.その先の各専門の先生への依頼ですが,山東先生のおかげで多くの専門医の先生が執筆に加わっていただきました.また管理栄養士の先生は「NSTわからん会」の中心メンバーから参加いただき,薬剤の面では吸収・代謝の第一人者および薬と栄養の相互作用に造詣の深い先生に執筆いただきました.このようにしてできあがった本書は期待した以上の書籍になりました.
本書は栄養療法の基礎知識と各病態において実際のNSTで遭遇するであろうさまざまな疑問点を解説しました.基礎知識に関しては,最初にKey Pointを示し,次いで具体的に解説を加えました.また,各病態での栄養療法・管理に関する項目については,Q and Aの形式で,冒頭に各項目の要点をAnswerとして示し,本文では要点毎にLectureとして解説を加えました.
したがいまして,これからNSTに向かうスタッフの基礎的な知識を得るための入門書としてばかりでなく,NSTで活動している中で疑問をいだいたことを調べる辞書がわりにも活用できます.また,病態と栄養に関して専門医の執筆により,多くの医師の参考書にもなると思います.このように欲張った企画はほかにないものと我々編集者一同自負しております.
編集を代表して
奥羽大学薬学部医療薬剤学 教授 東海林 徹
目次
Chapter 1.人体における水・電解質の考え方
1)体液の構成と体液量のとらえ方
2)電解質濃度と浸透圧の関係
Chapter 2.栄養障害
1)栄養状態の区分とは
2)PEM
3)微量栄養素の欠乏症、過剰症
4)肥満
Chapter 3.栄養アセスメント
1)栄養アセスメント
2)栄養スクリーニング
3)身体構成成分(body composition)とは
4)身体計測(anthropometry)とは
5)血液生化学検査
6)食事摂取量のアセスメント
7)栄養療法の効果判定
Chapter 4.栄養ケア・プランニング
1)栄養ケア・プラン‐必要性とピットフォール‐
2)栄養ケア・プランニングの実際
Chapter 5.静脈栄養法−製剤と管理
1)静脈栄養法とは
2)静脈栄養法の管理
3)静脈栄養製剤の基礎知識
A末梢栄養輸液製剤
B高カロリー輸液用基本液
Cアミノ酸輸液製剤
D脂肪乳剤
Chapter 6.経腸栄養法−製剤と管理
1)経腸栄養法について
2)経腸栄養療法の管理
3)経腸栄養剤
Chapter 7.リスクマネジメントの観点からみた栄養療法の実際
1)注射薬の衛生管理
Aカテーテル関連血流感染について
Bクリーンベンチと安全キャビネットの違い
Cガイドラインにおける根拠の強さと推奨度の定義
2)輸液関連デバイス
Aキット製剤の開通忘れ体策
B輸液ライン(DEHPは過去のことか)
C三方活栓の功罪−クローズドシステム−
D輸液フィルターの種類と構造
Eヘパリン生食ロックvs 生食ロック
3)輸液に関係のある配合変化
Aメイラード反応の科学と生体への影響
B亜硫酸塩などによる科学的配合変化
C滴定酸度の問題点
D鉄コロイドを中心とした微量金属製剤の配合変化
E薬剤の吸着と収着
Chapter 8.薬剤管理指導業務とNST
1)キーワードは薬剤管理指導業務
2)味覚障害
3)嚥下障害時の薬剤服用の工夫
4)地域一体型NSTと薬剤管理指導
Chapter 9.栄養療法・管理Q&A
悪性腫瘍
Question 1 化学療法時、栄養障害を引き起こす症状とその対策について教えてください。
Question 2 癌悪液質とはどのような状態ですか?また、栄養療法で気をつけるべき点について教えてください。
Question 3 胃癌術後患者の食事摂取上の問題点とその対応について教えてください。
Question 4 胃癌術後患者の服薬上の問題点とその対応を教えてください。また、胃癌術後になぜビタミンB12欠乏が起こるのですか? その対策についても教えてください。
Question 5 骨髄移植時に惹起する可能性がある栄養障害について教えてください。
Question 6 末期癌患者に対して、よく「ドライな状態で管理する」と言われますが、なぜですか?
消化管疾患
Question 7 GERDにおける逆流性食道炎とはどのようなものですか?また、その栄養療法と薬物療法のポイントについて教えてください。
Question 8 固形化・半固形化剤、増粘剤はどのようなケースで適応になるのでしょうか? また、各々の製剤を使用するメリット・デメリットを教えてください。
Question 9 クローン病において、なぜ日本では欧米と比較し、薬物療法より栄養療法が重視されるのですか?
Question 10 クローン病の栄養療法における、elimination diet(選択的食事療法)、HEN、i-TENについて教えてください。
Question 11 GFO とは何ですか? また、どのような作用が期待できるのですか?
Question 12 短腸症候群の残存腸管の機能を改善し適応させる薬剤にはどのようなものがありますか? また、短腸症候群で中心静脈栄養法から離脱できるのはどのようなときですか?
Question 13 腸管免疫の主役であるIgAは短腸症候群の場合、どのような状態になっていると考えれば良いですか?
肝・胆・膵疾患
Question 14 慢性肝炎における栄養ケアの基本的な考え方について教えてください。
Question 15 C型慢性肝炎では鉄毒性が肝炎を悪化させると聞きますが、どのようなメカニズムで起こるのですか?また、それに対する栄養療法、薬物療法の注意点を教えてください。
Question 16 従来、脂肪肝は肝硬変に伸展しないと聞きますが、本当ですか?また、その鑑別はどのようにするのですか?
Question 17 脂肪肝を防ぐ観点から栄養療法を行うコツはありますか?
Question 18 肝硬変にBCAA(分岐鎖アミノ酸)が多用されますが,なぜですか?
Question 19 LES(late evening snack)について教えてください。また、何のために行うのですか?
Question 20 重症急性膵炎における栄養療法の原則と注意点を教えてください。
Question 21 急性膵炎、慢性膵炎における脂肪乳剤の使用方法を教えてください。
Question 22 糖質・脂肪・蛋白などの消化・吸収障害は、どのようなときに起こるのでしょうか。また、それに対する有効な薬物療法があれば教えてください。
Question 23 胆嚢摘出後の服薬の注意点を教えてください。
Question 24 急性肝不全時の中心静脈栄養輸液処方はどのようにすれば良いのですか?市販の製剤を組み合わせて具体的に教えてください。
腎不全
Question 25 CKD(慢性腎臓病)とはどのような疾患ですか?また、栄養療法の注意点を教えてください。
Question 26 透析療法中の栄養療法の注意点を教えてください。
Question 27 透析療法中の栄養療法に関わる服薬上の注意点を教えてください。
Question 28 急性腎不全時の中心静脈栄養輸液処方はどのようにすれば良いのですか?市販の製剤を組み合わせて具体的に教えてください。
心不全
Question 29 心不全で水分摂取が制限されている場合、中心静脈栄養の処方設計はどのようにすれば良いのですか?
Question 30 慢性心不全時における食事摂取上の注意点を教えてください。
COPD
Question 31 COPDとはどのような疾患ですか?またそれに対する栄養・食事療法の意義について教えてください。
Question 32 呼吸商について教えてください。
Question 33 COPD患者にはプルモケアなど脂質の割合が多い栄養剤を用いる理由を教えてください。
糖尿病
Question 34 糖尿病患者ではある種の栄養素の潜在的欠乏(ビタミン・ミネラル欠乏)が生じるとのことですが、それはどのようなことですか?
Question 35 糖尿病に投与可能な各種経腸栄養剤が発売されていますが、どのように使えばよいでしょうか?
Question 36 サーカディアンリズムを考慮した場合,EN剤の投与タイミングはいつ頃になりますか?
Question 37 持続的経腸栄養を行っている場合のα-グルコシダーゼ阻害薬投与のタイミングについて教えてください。周術期・クリティカルケア
Question 38 IED(Immuno-enhancing diet)とはどのようなものをさすのですか。また、その投与意義はどのような場合にあるのでしょうか?
Question 39 インテンシブ・インスリン・セラピーとは、どのようなものですか?
Question 40 初期の蛋白異化亢進を防ぐ方法について教えてください。精神・神経疾患、脳血管障害
Question 41 refeeding syndromeとは、どのような病態ですか?また、これを予防するためにはどのような点に気をつければ良いでしょうか?
Question 42 脳血管障害による寝たきり患者での栄養上の注意点を教えてください。
Question 43 経鼻経管、あるいは胃瘻患者でどのように経口薬を投与すれば良いですか?
Question 44 増粘剤や半固形化剤を使用することによって影響を受ける薬剤はありますか?
Question 45 褥瘡をつくらせない、悪化させないために必要なことは何ですか?
Question 46 脳血管障害、神経疾患などによる寝たきり患者では、どのように必要熱量を算出すれば良いでしょうか?
Question 47 ワルファリン服用患者へビタミンK含有経腸栄養剤を投与してはいけないのでしょうか?
骨粗鬆症
Question 48 骨粗鬆症における食事摂取上の注意点を教えてください。
Question 49 骨粗鬆症を引き起こす可能性のある薬剤(グルココルチコイド、抗けいれん薬など)について教えてください。
小 児
Question 50 小児における中心静脈栄養処方において、成人との相違点と注意点を教えてください。
Question 51 小児の場合に注意すべき代謝特性などを教えてください。
Question 52 小児における経腸栄養法において、成人との相違点と注意点を教えてください。
Question 53 成人では非必須でも小児では必須な栄養成分は何ですか?
周辺機器
Question 54 中心静脈カテーテルの使い分けについて教えてください。
Question 55 輸液ポンプの種類とその使い方の注意点を教えてください。
Question 56 輸液フィルターの有用性について教えてください。
薬と食品・サプリメント
Question 57 健康食品の分類について教えてください。
Question 58 医薬品と間違う可能性がある健康食品にはどのような問題がありますか?
Question 59 健康食品による健康被害が問題になっていますが、使用する際、どのような点に注意すべきでしょうか。
Question 60 薬の吸収と食品の吸収で起きる問題について教えてください。
Question 61 薬の服用と食事の関係について教えてください。
Question 62 薬剤の腸管での代謝について教えてください。
Question 63 セントジョーンズワートとグレープフルーツジュースの相互作用について教えてください。