2009年11月臨時増刊号 Vol.91

「治療」2009年11月臨時増刊号 Vol.91
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亜鉛の有用性を探る
亜鉛補充による臨床効果と基礎研究の進展-「治療」Vol.91 11月臨時増刊号

  • 日本大学医学部内科学系消化器肝臓内科学分野教授 森山 光彦 監修

定価:1,980円(本体1,800円+税10%)

  • B5判 92頁

概要

近年,微量元素のなかでも亜鉛についての関心が高まってきています.亜鉛シグナル研究の進展による新しい知見や,より幅広い臨床分野での亜鉛補充による病態の改善を中心として,一般臨床医に深く認知していただくことを目的として取り上げます.

序文

生体内には多種類の微量金属が存在し,生命の維持に重要な役割を担っていることが明らかにされてきた.人体を構成する元素は,多量元素,少量元素,微量元素,超微量元素に大別される.このうち亜鉛は必須微量元素であり,鉄,フッ素,ルビジウム,ストロンチウム,臭素,鉛,銅とともに分類される.昨今,微量元素の生化学的および栄養学的な側面からの研究の進展により,これらの微量元素の重要性が広く注目されるようになった.これらの微量元素のなかでも,とくに亜鉛欠乏状態とその臨床症状,さらには亜鉛補充療法についての関心が栄養学的にも,また医学的(臨床的)にも高まってきている.雑誌「治療」では2005年8月臨時増刊号で,「亜鉛の有用性を探る―臨床での亜鉛補充による効果とその考え方―」を特集した.約5年を経過してもこの臨時増刊号の価値は高く,臨床医に幅広く購読されていると聞き及んでいる.今回は,前号に比較して亜鉛シグナル研究の進展による新しい知見や,より幅広い臨床分野での亜鉛補充による病態の改善を中心として,亜鉛補充の有用性を一般臨床医に,より深く認知していただくことを目的とした.
現在,さらに今後も含めて,病態に及ぼす亜鉛代謝の重要性はますます増大してくるものと考えられる.とくに高齢化社会を迎えて,生活習慣病の発症・進展や老化にも低亜鉛代謝状態が密接に関与していることが指摘されている.一方,高齢者・非高齢者を問わず,日常食生活のなかでのインスタント食品や加工食品を中心とした偏りや奇食,あるいは過度のダイエットなどによる亜鉛欠乏状態,ある種の薬剤の併用による亜鉛キレート作用,食品添加物(ポリリン酸ナトリウム・フィチン酸,ピロリン酸など)による亜鉛吸収障害,長期入院患者の経管栄養・経腸栄養剤による低亜鉛状態などにより,亜鉛欠乏症例が増加している.したがって,たとえ微量であっても亜鉛代謝状態を正確に把握して,亜鉛欠乏状態にある症例に速やかに亜鉛を補充することの重要性は,ますます増大してくると考えられる.
亜鉛の生理作用は,胎児の発育,皮膚およびその付属器官の新陳代謝,生殖機能,骨格の発育,味覚および臭覚の維持,精神神経作用・行動への影響,免疫機能の維持などがよく知られている.一方,最近では分子生物学の進歩により,分子レベルでの亜鉛の吸収や活性発現の研究も進んでいる.また,亜鉛シグナルに関連するZip familyやZnT familyの果たす役割についても徐々に明らかにされている.
本号では,亜鉛シグナル研究の現状を始めとして,栄養管理,高齢者,消化器疾患における亜鉛代謝と管理,婦人科疾患,腎透析,味覚と亜鉛代謝の関係などについて,幸いにも亜鉛の基礎および臨床研究の各領域でのエキスパートによる執筆をいただくくことができた.日常診療における亜鉛代謝状態の把握と補充治療に役立てていただければ幸いである.最後に,ご執筆を賜りました先生方に心から厚く御礼を申し上げる次第である.


日本大学医学部内科学系消化器肝臓内科学分野 教授  森山光彦



目次

巻頭言(森山光彦)
亜鉛シグナル研究の新しい展開(深田俊幸,他)
栄養管理における亜鉛の有用性(東口高志)
高齢者における亜鉛欠乏と感染症(田村遵一,他)
老化促進要因としての亜鉛欠乏(柳澤裕之)
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)後の潰瘍治療における亜鉛の有用性(稲葉知己)
NSAIDs起因性小腸潰瘍における亜鉛投与への期待(内藤裕二,他)
亜鉛含嗽薬による放射線性口内炎の治療および予防効果(土肥 豊,他)
亜鉛補充による肝線維化抑制とメカニズム(高橋正彦,他)
肝性脳症における亜鉛の有用性(詫間義隆)
膵疾患における亜鉛の有用性(伊佐地秀司)
産婦人科領域における亜鉛の有用性(内田季之)
維持透析患者における亜鉛欠乏性貧血−亜鉛投与によるEPO減量の可能性−(福島達夫)
透析患者の難治性皮膚痒症における亜鉛の有用性(吉川和寛,他)
味覚障害と亜鉛(阪上雅史)