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カテゴリー: 基礎薬学  |  臨床薬学

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薬物動態のイロハ

1版

中外製薬株式会社 前臨床研究部 主幹研究員 加藤基浩 著

定価

2,090(本体 1,900円 +税10%)


  • A5判  115頁
  • 2016年2月 発行
  • ISBN 978-4-525-72741-3

薬物動態を学ぶ第一歩はこの一冊から!

薬物の体内での吸収・分布・代謝・排泄という薬物動態全般について解説された入門書.本書では,苦手意識の強い数式を用いずに薬物動態の概念が理解できるよう,著者独自に調べた情報等を基に分かりやすく解説.薬物動態の勉強の第一歩としてお勧めの一冊.

  • 序文
  • 目次
  • 書評
序文
 この本は,薬物の吸収・分布・代謝・排泄の薬物動態全般についての入門書です.薬物動態というと数式が多くてよくわからないと思われる方も多いと思います.心配ご無用です.本書では数式は用いません.数式が多いのは薬物速度論で,薬物動態の1つの分野です.薬物動態パラメータについては説明をしますが,基本的に本書では薬物速度論は取り扱いません.薬物速度論はその薬物の特性を理解するために必要な知識であり,投与設計するために重要な学問です.しかし,それだけではありません.本書では,薬物動態の概念を理解していただきたいと思います.
 みなさんは,「この薬はグレープフルーツジュースでのんではいけない」とか,「この薬は眠くならない」とか,「この薬は食後にのんでください」とか,聞いたことがありませんか? こういったことはすべて薬物動態に関係した事柄です.さらに,人によって薬の効き方が違うということも知っていると思います.これも薬物動態が影響しています.同じ投与量でも,血中濃度が違い,ある人には10mgの錠剤でよく効いても,ほかの人には20mg必要となったりします.
 薬物動態は医薬品の適正使用のために重要な知識なのですが,一般的には,その認知度はそれほど高くないように感じています.そこで,薬物動態全般の入門書を執筆しました.
 薬物動態の概念を理解してもらうため,2010~2012年に日本において新規に承認された経口剤のインタビューフォームあるいは添付文書の情報を調べました.これらのまとめは,あくまで薬物動態を理解してほしいためのものであり,1つひとつの薬物について述べているわけではありません.また記載のされ方も整合性が完全にあるわけではないので,筆者の基準で判断して不採用としている情報もあり,すべての情報が掲載されているわけではないことにも注意してください.薬物動態の相場観がわかってもらえればと思います.
 入門書の位置づけで執筆しましたが,筆者の切り口で記載していますので,わかりづらいとか誤解を与える表現があるかもしれません.それは筆者の能力の至らなさのためであり,お許しください.薬物動態を勉強する第一歩として本書を利用していただければ幸いです.
 最後に本書の出版をご快諾いただきました南山堂編集部に感謝いたします.

2015年初冬
加藤基浩
目次
略語一覧表

1 薬物動態の基礎
 ① 薬物動態とは
 ② アルコールの体内動態を例として
 ③ 薬物動態の考え方の基本は水と油

2 薬物動態パラメータ
 ① 血中濃度と血漿中濃度
 ② 薬物動態パラメータ
 ③ バイオアベイラビリティ
 ④ 単回投与と反復投与
 ⑤ 有効濃度と半減期
 ⑥ 市販薬による薬物動態パラメータの相場観

3 吸 収
 ① 経口剤の吸収
 ② 薬をいつのむのか?―食前・食後・食間
 ③ 溶 解
 ④ 吸 収
  a ありのままの膜透過
  b トランスポーターという名の運び屋,追い出し屋
 ⑤ 溶解性と膜透過によるグループ分け
 ⑥ 初回通過代謝
 ⑦ プロドラッグ
 ⑧ 非線形性

4 分 布
 ① 血流による運搬
 ② 分布容積
 ③ タンパク結合(血漿中,組織中)
 ④ トランスポーター

5 代 謝
 ① 薬物の2つの代謝反応
 ② 代謝はどこで起きるか?
 ③ 代謝反応の種類
  a 酸化反応
  b 還元反応
  c 加水分解反応
  d グルクロン酸抱合反応
  e その他の代謝反応
 ④ 代謝酵素
  a ミクロソームの酵素
   1) シトクロムP450(CYP)
   2) フラビン含有モノオキシゲナーゼ(FMO)
   3) グルクロン酸転移酵素
   4) エステラーゼ
  b サイトソールの酵素
  c その他の酵素

6 排 泄
 ① 排泄経路
 ② 尿中排泄
 ③ 腎障害患者での薬物動態
 ④ 胆汁中排泄

7 薬物間相互作用
 ① のみ合わせ
 ② 薬物間相互作用の2つのパターン
 ③ 代謝酵素の阻害と誘導
  a 代謝酵素の阻害
  b 代謝酵素の誘導
 ④ トランスポーター阻害
 ⑤ タンパク結合の阻害
 ⑥ 実際の相互作用の例

付 録 ― 薬剤情報
 1. 1日の投与回数
 2. 異なる含量の製剤数
 3. 製剤の種類
 4. 製剤の大きさ
 5. 製剤の重量
 6. 薬物動態試験の被験者数

参考図書
書評
「丁寧な入門書でありながらエキスパートも楽しめます」

千葉康司 先生(横浜薬科大学 教授)

 本書のタイトルは「薬物動態のイロハ」であり,入門書という位置づけである.研究室の薬学生に本書を読んでもらった.教養科目が中心の低学年の学生には,少々難しかったようであるが,薬物動態の重要性は理解してくれたようである.薬学を一通り学習した高学年の印象は良かった.「内容はそこそこ手応えがあり,面白かった.」「薬物動態が何に役立つのかよく分かった.」とか,「図が分かりやすく,特に多くの医薬品をプロットしたグラフには感動した.」「世に出ている医薬品のことがよく分かった.」などなど.私の感想も同様である.医薬品の血中濃度のグラフが読める方から,医薬品開発に従事している研究者まで,本書は楽しめると思う.
 著者は,市販されている経口剤の添付文書あるいはインタビューフォームを調べ,医薬品の物理化学的性質と吸収・分布・代謝・排泄,いわゆるADMEの各過程との関係を分析し,解説している.大変な作業であったと思う.他から引用したものをまとめたのではなく,著者自らの調査を通じ,著者の感覚,本書でいうところの「相場感」を確認した上でその結果を紹介している.著者ならではの薬物動態学に対する情熱が,精密に作成された図表から窺える.現場で医薬品を使っておられる方々は,ADMEの各章のそれぞれのグラフを見て,今日扱った医薬品がどこにプロットされるのか,気になるのではないだろうか.私も,グラフが出てくるたびに,思わず時間をかけてじっくり見入ってしまった.きっと著者自身も,予想通りの結果に感動しながら執筆されたのでは,と想像してしまう.
 本書では,平易な言い回しで薬物動態の理論をしっかりと解説している.専門用語の解説もとても丁寧であり,いちいちインターネットを調べながら読む必要はない.読み始めて暫くすると,「薬物動態の考え方の基本は水と油」のメッセージが登場する.本書では,このことが,手を替え品を替え何度も登場する.しかもデータ付きで登場する.読者はその事例に規則性があることを知り,また,例外がなぜ起こるのかも丁寧な解説から学ぶ.規則性と例外が分かると,データを基に現象を予測できることに興味を持つであろう.なるほど,著者のいう「相場感」が,感覚としてスッと入ってくる.また,この相場感が,医薬品をデザインする時に重要であることが,臨場感とともに伝わってくる.
 最後の章では,薬物間相互作用を学ぶ.単に薬の飲み合わせの原因を解説するのではなく,最高血漿中濃度と半減期の変化に焦点をあて,自分が服用した時に現れるであろう副作用を想像しながら,どのような時にどういった相互作用が起こるのかを知る.
 本書は確かに分かりやすい入門書である.しかし,エキスパートが読んでも楽しめるのではないだろうか.私は,付録の薬剤情報まで楽しませていただいた.
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