2010年 1版
定価:7,350円(本体7,000円+税5%)
国立成育医療研究センター・妊娠と薬情報センター・トロント小児病院ほかで活躍する専門家が解説!!
本書は総論で妊婦・授乳婦の薬物治療を管理するために必要な基礎知識を解説し,各論では添付文書からは得られない疫学調査・症例報告などの情報をまとめ,総合評価を記載した.臨床現場で即戦力となる書である.
1989年にトロント小児病院小児科の臨床薬理学部門に留学して,当時,開設からまだ4年目のマザーリスク・プログラムに関わるようになった.それからもうすぐ22年になろうとしている.Dr. Gideon Korenが創設以来,指揮をとっているマザーリスクは,妊娠・授乳中の薬剤安全性に関しては常に先頭を切ってデータを出し続けてきたといっても過言ではないであろう.私の今の立場は,マザーリスクをはじめ,いくつかのプログラムを統括する臨床薬理学部門の責任者であるが,病院内のほかの臨床・研究プログラムを見てもマザーリスクの活発な働きが群を抜いているのがよくわかる.
このようなプログラムがいつか日本にできればすばらしいと思っていたところ,友人でトロントにも留学経験のある,国立成育医療研究センターの中村秀文先生も同じ思いを持っていた.彼の紹介で同じく国立成育医療研究センター母性内科の村島温子先生にお会いすることになり,その後は村島先生の尽力と関係者の強力なサポートのもと,「妊娠と薬情報センター」は今日の姿となったのである.現在は,妊娠と薬情報センターを中心として診療・研究ネットワークが日本全国に広がりつつあり,すばらしいことである.また,今も情報センターと私の部門は共同研究や留学生の指導などを通じて協力関係を保っており,本書の執筆もその共同事業の1つとして行った.
妊娠と授乳の薬剤安全性は情報が少ないことも一因で,とにかく誤解が多い.特に私の専門である授乳と薬の分野では,母乳の医学的な利点が患者さんはともかく医療従事者の間でもはっきりとは認識されていないようで,これがよくある“この薬を飲むなら母乳は止めましょう”の指導につながっているようだ.
友人でもあるBriggs先生から届いた推薦文のなかにもあるように,データは正確に解釈され,かつ臨床に応用されなくてはならない.その理想に少しでも近づくようにこの本は企画・編集された.本書が日本の第一線の医師・薬剤師・助産師の方々の合理的な指導の助けになれば幸いである.
最後に,この企画を実現にまで導いてくれた南山堂編集部の方々,そして実際に深刻な疑問をわれわれにぶつけてくれた患者さんとその家族の皆さんに,著者を代表して心からのお礼を申し上げる.
2010年10月
編者を代表して 伊藤真也
第1章●総 論
1 産科医療の基礎知識
妊娠期における薬物治療の基本
妊娠の時期と薬剤曝露の影響
胎児毒性
先天異常の疫学・分類・診断
染色体異常,出生前診断
胎盤の病理と臨床
2 妊婦・授乳婦に対する医薬品の情報源
動物実験研究 -手法およびその結果の解釈-
EBM・臨床疫学研究デザインおよびその結果の解釈
日本における医薬品添付文書の記載要領と問題点
諸外国の妊娠・授乳と薬に関する情報源
3 妊娠と薬カウンセリングの実際
厚生労働省「妊娠と薬情報センター」事業
世界の「妊娠と薬」相談事業
情報提供(カウンセリング)の留意点
4 授乳と薬の基礎知識
薬剤の母乳移行と乳児の薬剤曝露
授乳婦への薬物治療
授乳期の薬物治療における親子へのケア
授乳中止に対する母親へのケア
第2章●妊娠・授乳期における医薬品情報
1 抗菌薬
2 抗ウイルス薬
3 抗真菌薬
4 抗悪性腫瘍薬
5 免疫抑制薬
6 副腎皮質ホルモン薬
7 解熱・鎮痛・抗炎症薬
8 抗ヒスタミン薬
9 抗アレルギー薬
10 抗リウマチ薬
11 糖尿病治療薬
12 脂質異常症(高脂血症)治療薬
13 痛風・高尿酸血症治療薬
14 女性ホルモン剤
15 甲状腺疾患治療薬
16 骨・カルシウム代謝薬
17 造血薬
18 抗血栓薬
19 降圧薬
20 抗不整脈薬
21 心不全治療薬
22 利尿薬
23 気管支拡張薬
24 気管支喘息治療薬
25 鎮咳薬・去痰薬
26 健胃消化薬・胃腸機能調整薬
27 消化性潰瘍治療薬
28 鎮痙薬・制吐薬
29 腸疾患治療薬
30 整腸・止瀉薬・下剤
31 抗うつ薬
32 抗躁薬
33 抗不安薬
34 睡眠薬
35 抗精神病薬
36 抗てんかん薬
37 片頭痛治療薬
38 めまい治療薬
39 眼科・耳鼻科用剤(外用)
40 皮膚科用剤
41 ワクチン
42 OTC薬・漢方薬・サプリメント
43 嗜好品・禁煙補助薬
44 放射線(診断用)
第3章●症例から学ぶ妊娠・授乳期の薬物治療
1 うつ病
2 てんかん(カルバマゼピン服用の場合)
3 てんかん(バルプロ酸服用の場合)
4 甲状腺機能亢進症(バセドウ病)
5 皮膚筋炎,甲状腺機能低下症,気管支喘息
6 気管支喘息
7 アレルギー性鼻炎
8 気管支炎
9 インフルエンザ
10 尿路感染症
11 クラミジア感染症・嗜好品
12 重症の水痘
13 消化性潰瘍
14 潰瘍性大腸炎
15 高血圧
16 糖尿病・脂質異常症
17 難治性ざ瘡
18 悪性腫瘍
付録 妊娠と薬情報センター 問診票
相談依頼書
事項索引
薬剤索引