書籍カテゴリー:地域医療

こんなときどうする? 在宅医療と介護
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こんなときどうする? 在宅医療と介護
ケースで学ぶ倫理と法

1版

  • 静岡大学人文社会科学部社会学科・大学院人文社会科学研究科臨床人間科学専攻 教授 松田 純 編著
  • 常葉大学健康科学部 准教授 青田安史 編著
  • 静岡県立大学短期大学部 助教 天野ゆかり 編著
  • 静岡大学大学院法務研究科 教授 宮下修一 編著

定価:2,160円(本体2,000円+税8%)

  • B5判 134頁
  • 2014年4月 発行
  • ISBN978-4-525-52221-6

概要

近年の在宅医療や介護では,医療施設とは異なる倫理的な対応が求められることも多い.そのため,対人援助職は多職種連携のヒューマン・ケアに習熟する必要があり,こうした連携を促進する“倫理と法”が求められる.本書は,在宅医療・介護の現場で発生している倫理的・法的な問題を,ケーススタディの形で考察した内容となっている.

序文

2000年に介護保険制度が始まって14年.この間,試行錯誤のなかで制度の改革も進められてきました.ケアマネジャーや介護福祉士,ホームヘルパーなど介護に関わる専門職は,ケアを求める人々を支え,超高齢社会のニーズに応えようと,現場で日々格闘しています.まだ歴史の浅いこの制度において,専門職は施設および在宅でのケアのなかで,さまざまな「困難事例」に日々遭遇しています.その多くの要因に実は倫理的な葛藤があります.ただ,現場では,そうした事例を倫理的問題としてとらえる習慣はまだ少なく,あるときは,法律やマニュアルに従って処理したり,あるときは,利用者や家族の思いにそいながら,あるいは上司のアドバイスなどに従いながら,なんとなく収めてきているのが実情のようです.また,倫理的な問題に気づかないまま,日常業務として流されていき,何の疑問も持たれていないという場合もあります.
 本書では,在宅医療と介護(在宅ならびに施設)の現場で出会うさまざまな問題を倫理と法の観点からとらえ直し,それらの問題をどう考え,どう対応したらよいのかについて,具体的なケースで考えてみます.
 こうしたケースに基づく倫理的考察は,医療倫理や生命倫理の世界ではすでになじみのある試みです.教科書も多数刊行されています.しかし,そのほとんどが病院という医療機関を前提にしています.病院と在宅では,療養環境は構造的に大きく異なります.病院では,食事や就寝や診察などが決まったスケジュールで進行し,患者は規則に従わなければなりません.医療者は患者を見守り,安全を確保する義務がありますから,患者の思いどおりには行きません.院内での飲酒や喫煙も規則で禁じられています.
 他方,自宅は「自分の城」であり,患者やその家族が主人です.患者は住み慣れた「わが家」で,マイペースで暮らし,その生活の一部のなかに医療があります.患者本人や家族の意向が前面に出てきます.医療の専門職の対応はおのずと異なってきます.「患者の思いを大切に」を本当に実現できる場は「在宅」(自宅およびホームなど)だともいえます.わが国の医療倫理では,この違いがまだ十分自覚されていません.
 本書は,以上のような問題意識に基づいて,医療・介護の現場の第一線で活動する専門職と,哲学・倫理学・法学・社会学・社会福祉学の専門家がプロジェクトを組み(編者・著者紹介参照),それぞれの立場から議論を積み重ねて執筆したものです.医療については,病院ではなく,在宅医療での倫理的・法的問題を,介護については,在宅と施設の双方での倫理的・法的問題を取り扱います.

2014年3月
編者を代表して 松田 純

目次

ケアにおける倫理と法とは

ケーススタディ
 Case1:がんによる疼痛に苦しむ在宅患者に 緩和治療を提案するとき
 Case2:在宅療養者の経口摂取が困難になったとき
 Case3:通院やサービスの拒否があり,今後の療養が不安な独居の在宅療養者
 Case4:在宅で身体拘束を発見したとき
 Case5:看病も介護もしない遠くの親戚が途中で介入してきたとき
 Case6:訪問リハビリテーションで障がいの 予後について説明するとき
 Case7:妻を介護している夫からプロポーズされたとき
 Case8:精神障がいのある方から訪問を拒絶されたとき
 Case9:在宅療養者の病状が悪化したとき —急性期病院へ入院,それともこのまま在宅での看取り?—
 Case10:ショートステイで息子がケア計画についていろいろ要望するとき
 Case11:介護に熱心な息子が母親を虐待していることに気づいたとき
 Case12:訪問介護でセクシュアルハラスメントを受けたとき
 Case13:認知症の患者のもとに遺産目的の次男が訪ねてきたとき
 Case14:施設での医療・介護の実施をめぐって成年後見人と対立したとき
 Case15:要介護者,介護者,多職種間でのコミュニケーションを円滑にするには
 Case16:通所リハビリテーションで,希望するリハビリテーションが実施されない場合
 Case17:生活保護の受給者のさまざまなケアを周りから要請されたとき
 Case18:刑務所出所者の支援のために犯罪歴を隠すとき

コラム
 ① 生命・医療倫理の4 原則
 ② 効果的な退院時共同指導—退院連携シート—
 ③ 「高齢者ケアの意思決定プロセスに関するガイドライン」について
 ④ 自己決定の支援
 ⑤ 身体拘束の法的扱い
 ⑥ 「お迎え」体験
 ⑦ 障がいの予後告知
 ⑧ 専門職と倫理
 ⑨ 事前指示と事前ケア計画
 ⑩ 高齢者の世界:喪失と人生の再構築
 ⑪ 傾聴がもたらすもの
 ⑫ セクシュアルハラスメント回避のために
 ⑬ 「情報」と「秘密」
 ⑭ 「相続」と「遺言」
 ⑮ 成年後見制度
 ⑯ 障害者権利条約と成年後見制度
 ⑰ 対人援助職に求められる“声づかい”とは
 ⑱ 病院から在宅へ——リハビリテーションの役割
 ⑲ チームケアを実現するケア会議
 ⑳ 災害後の在宅療養者への対応