2009年 1版
定価:3,675円(本体3,500円+税5%)
母乳とくすりに関する疑問に答える一冊.
巻頭Q&Aでは著者がよく質問される内容をお母さんにやさしく答えるようにまとめた.総論では「母乳とくすり」これだけは知っていて欲しい基礎知識を,各論では代表的な薬剤を国内外の論文・書籍の情報を交え,授乳の可否をまとめた.これさえあれば「母乳とくすり」に関する不安は解消できる.
症例から学ぶ 母乳育児支援セミナー 2日間コース
授乳中のお母さんはくすりを処方されたとき「このくすりを飲みながら授乳してもよいのかしら」と疑問を持つかもしれません.小児科の外来には,しばしば授乳中のお母さんから『内科や歯科などで○○○というくすりを出されたのですが,授乳は続けてもよいですか?』という質問がきます.質問をしてくだされば,お母さんとお話しができるので必要な情報を提供することができます.しかし実際には,受診した病院や薬局で『おくすりが母乳中に出るので,服用中は授乳を中止してください』と言われ,そのまま授乳を中断してしまったり,授乳を続けたいからとご自身の判断で,必要なおくすりを飲まずに症状を悪化させてしまうケースがあります.果たして本当にそれでよいのでしょうか?
授乳を中断してしまえば,それまでに作られた母乳がそのまま乳房の中にとどまることになり,母乳の量が減ってしまったり,母乳がストップしてしまう可能性があります.いったんやめてしまった母乳を再開することは可能ですが,お母さんのおっぱいは水道の蛇口のように簡単に出したり止めたりということはできません.また,お母さんはご自身の体調が思わしくないときに,人工乳を調乳しなくてはなりませんし,哺乳びんも消毒しなければなりません.そしてなにより,数ヵ月間母乳だけで育ってきた赤ちゃんは,哺乳びんで人工乳を飲むことを嫌がるかもしれません.
いくら科学が進歩しても人工乳は母乳にはかなわない部分がたくさんあります.このことからも,不必要に授乳を中断することはお母さんにとっても,赤ちゃんにとってもよいこととは言えないでしょう.
また,お母さんご自身の判断で,必要なおくすりを服用せずに症状を悪化させては,日々の生活や子育てが大変になるかもしれません.
確かに,お母さんがくすりを服用すると,ごくわずかな量のくすりは母乳に出てきますので,お母さんが飲んだくすりは赤ちゃんにも与えられることになります.そうはいっても母乳中に出てくるという理由だけで,授乳を中断するという判断にはなりません.ごく一部のくすりを除いては,赤ちゃんに影響を与えるほどの量にはなりません.お母さんの病気や症状に使えるくすりにはいろんな種類があり,その中でどの種類のくすりが授乳中のお母さんと赤ちゃんにとって,最も安全かということを調べることが可能です.授乳中のお母さんが最も安心して使用できるくすりを,赤ちゃんに最も影響の少ない方法で使用することが大切なのです.
もちろん,くすりの種類によっては,一時的にでも人工乳にかえたほうがよい場合もあります.その際には適切に搾乳(手でしぼったり,専用の簡単な道具でしぼること)をすることが大切です.搾乳しないでおくと乳腺炎を起こしたり,つまったりしてトラブルの原因になることもあります.
本来は,医師が授乳中のお母さんにくすりを処方するときに,そのくすりに関してきちんと情報を提供し,お母さんと話し合ったうえで,最終的にはお母さんご自身が病気の治療や授乳をどうしていくのかを選択するというのが望ましいと思います.
しかし,わが国において,医薬品添付文書(薬の説明書)には「服用中は授乳しないように」と記載してあることが多く,医療従事者も授乳を続けるように支援することが難しい環境にあります.そのため,お母さん自身もよく使用されるくすりについて基本的な知識を持っておくことも大切でしょう.
本書では,医療従事者,授乳中のお母さん,そしてこれからお母さんになる女性に対し「授乳中のくすりについてこれだけは知っておいてほしい」ということをまとめました.
授乳中にくすりを服用しなければならないときの一助となれば幸いです.
Q&A よくある質問
Q1.くすりを飲んだら母乳は中止?
Q2.授乳中にくすりを飲むには…
Q3.授乳中に注意が必要なくすりって…?
Q4.くすりを服用中は人工乳のほうが安全?
Q5.かぜのときに…
Q6.薬剤師としての対応は…?
Q7.お母さんから授乳とくすりについて質問を受けたら…
Q8.くすりを飲みながらの授乳は可能?
Q9.虫歯の治療と授乳
Q10.じんま疹が出たときには?
Q11.カンジダと授乳
Q12.花粉症のくすりを飲みながら授乳は可能?
Q13.喘息がつらくて困っています
Q14.アトピーと母乳育児
Q15.肺炎のときは?
Q16.かぜをひいたときは市販薬でもOK?
Q17.インフルエンザになったら…
Q18.下痢のときは…?
Q19.便秘のときは…
Q20.抗菌薬(抗生物質)と授乳
Q21.帯状疱疹になったら…
Q22.ヘルペスの治療には?
Q23.痛み止めと授乳
Q24.レントゲン検査(バリウム)
Q25.目薬と授乳
Q26.アイソトープ検査
Q27.MRI検査
Q28.レントゲン検査(血管造影剤)
Q29.乳がん検査(被曝)と授乳
Q30.腱鞘炎と授乳
Q31.手術(麻酔)と授乳
Q32.頭痛と授乳
Q33.ステロイド薬(内服)と授乳
Q34.乗物酔いには…?
Q35.うつ病と授乳
Q36.痔(市販の塗り薬)と授乳について
Q37.尖形コンジローマ(塗り薬)と授乳
Q38.不眠症と授乳
Q39.潰瘍性大腸炎と授乳
Q40.乳腺炎と授乳
Q41.ビール(アルコール)と授乳
Q42.コーヒー(カフェイン)と授乳
Q43.タバコ(ニコチン)と授乳
総論
母乳とくすりの基礎知識
1.母乳とくすりを取り巻く現状
2.どのようなくすりが安全なのか
母乳へのくすりの移行機序
母乳移行を決定する因子
赤ちゃんへのくすりの移行を決定する因子とその影響
3.授乳を中断・中止しなければならないくすりと注意が必要なくすり
授乳の中断・中止が必要なくすり
授乳中の使用に注意が必要なくすり
4.カウンセリングと情報提供
クライアントとのコミュニケーションとくすりの情報提供
授乳とくすり相談−カウンセリングの実際−
母乳を中断しなければならない場合,中止することを選択した場合の支援
各論
くすりの情報
炎症,アレルギーに作用するくすり
病原微生物に対するくすり
消化器系に作用するくすり
呼吸器に作用するくすり
循環器に作用するくすり
神経に作用するくすり
ホルモン剤
感覚器官に使用するくすり
血液製剤,血液に作用するくすり
栄養剤
抗悪性腫瘍薬,免疫抑制薬
その他(造影剤・放射性同位元素・放射線治療)
市販薬配合成分
参考薬(日本未承認薬)
参考資料
母乳育児のメリット
搾乳について
薬剤変更をお願いするお手紙文例
INDEX
一般索引
薬剤索引