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カテゴリー: 臨床看護学  |  救急医学/災害医学

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演習で学ぶ 災害看護

1版

日本赤十字看護大学 教授 小原真理子 監修

定価

3,080(本体 2,800円 +税10%)


  • B5判  248頁
  • 2010年3月 発行
  • ISBN 978-4-525-50261-4

姉妹本『災害看護―心得ておきたい基本的な知識』で習得した知識を活かすための演習マニュアル!災害時に活用できる具体的な看護技術を,原則を踏まえた上でその応用や特殊性も示す.さらに,事例に基づいた演習の展開方法が記載されており,より実践的な内容になっている.看護学生や指導教員,現役の看護師にとっても有用なテキスト.

  • 序文
  • 目次
  • 書評
  • 推薦文
序文
─この本を読んでいただく看護学生,看護職の皆さまへ─

 近年,日本をはじめ,世界中で起こる災害に対し,「看護職としてどのような役割を果たすべきか?」という課題に応えるべく,2007年に南山堂から『災害看護─心得ておきたい基本的な知識』を作成,出版の運びとなりました.災害看護の歴史から,災害看護の定義,災害サイクル別の看護の実際,そして病院における防災の仕組みまで,災害看護活動に従事する際に必要となる知識を集成した書籍となりました.しかし,知識として学習したものを実践に活かすためには,看護技術の体験・練習とともに,災害場面の想定の下での「演習」が必要となります.2009年度のカリキュラム改正で,統合分野の中に災害看護が導入されたことは大変喜ばしいことですが,受動的な机上での学習だけではなく実践に活かすことのできる知識・技術・態度を体得できる演習プログラムの確立が急務であり,今後の大きな課題と考えられます.
 このような背景のもと,再度,南山堂では学生の皆さんや災害看護を担当する先生方,および継続教育を担当する看護職の方々を対象に,本書『演習で学ぶ 災害看護』を災害看護の演習時に役立つテキストとして企画しました.演習のテーマごとに,災害場面を想定し(被災想定・傷病想定),学生さん(演習の参加者)が想像力を働かせて演習に臨むことのできるように構成しています.各テーマ別に,(1)演習で到達すべき目標,(2)演習に必要な物品,(3)演習で必要となる看護技術などを具体的に示しており,学生さん(演習の参加者)に必要な知識・情報としてまとめています.また,演習の指導者・教員の先生方がスムーズに演習を行えるように,(4)演習の方法(フローチャート)に対して目安となるように時間を設定し,また演習の振り返りのために,(5)演習の評価のポイントを記載しました.
 また,「演習」と一口に言っても,“こころのケア”の要素を含んだ「ロールプレイ」,ホワイトボードやマグネットなどを用い救護活動を組織的に検証していく「机上シミュレーション」,トリアージのように「行動を通して実験的に検証していくシミュレーション」などさまざまな演習方法があります.演習のテーマによって,効果的な演習方法も異なりますので,本書では参考資料(1)「演習方法の解説」に基づいて可能な限り演習方法も記載し,注意点なども示しております.また,演習時間・場所,学生さん(演習の参加者)の人数などで演習方法を変更せざるを得ない場合もありますので,各場面で調整して頂ければと思います.
 本書は,以下の第I?V章で構成されています.第I?III章では,災害時における看護支援活動に必要な基本的な看護技術を記載し,第IV,V章では,災害サイクル別に項目を立て,基本的な看護技術をどのように活かすかをより詳しく示しています.
第I章:被災者とのコミュニケーションでは,“こころのケア”を踏まえた被災者とのコミュニケーションの基本的態度を示しています.子ども・高齢者・障害を持つ方など,それぞれの災害要援護者によって対応に違いがあることから,項目別に記載し,ロールプレイの演習を通してコミュニケーションの基本姿勢を学びます.
第II章:被災者の観察と基本的なケアでは,災害時に看護師が大きな役割を果たす「観察」,「身体ケア」,「生活不活発現象の予防」の3点から基本的知識と技術を学びます.成人看護や老年看護で基本的な知識・技術を既習していることもありますが,災害時という特殊性を踏まえた上での留意点などもありますので,技術の復習をしながら学びましょう.
第III章:救護者間の情報伝達では,情報の錯綜・混乱が起きやすい災害時に,スムーズで正確な情報伝達を行うためのポイントを記載しています.災害現場から病院(救護班派遣元)への情報伝達と,被災病院内での情報伝達の方法を記載しています.
第IV章:災害急性期の看護では,第I?III章までの基本的なコミュニケーションスキルと看護技術を活かして,「災害発生後から現地派遣までの被災状況の把握と準備」,「救護所の設営と運営」,「トリアージ」,「応急処置」,「整体」の場面ごとに演習を行います.
第V章:災害中長期の看護では,仮設住宅入居者,復興住宅入居者の健康・生活支援として「健康と生活を守る」という視点で記載しています.ここでは,入居者の健康状態を把握するための看護技術だけでなく,“こころのケア”の視点,“地域との連携”という視点も必要となります.
 以上のように,本書は災害看護の「知識と実践を結ぶ架け橋」となることを目指して作成しております.演習は,時間数・参加者の背景によってその性質が変化するものですので,本書の演習展開は一つの参考例として活用して頂ければと思います.先に出版しました『災害看護─心得ておきたい基本的な知識』では知識を習得することをねらいとし,本書では,看護学生の皆さんにとっては,知識を基盤に災害看護に必要な技術や行動力を習得すること,また災害時に活躍される看護職の皆さまにとっては,習得された知識・技術を十分に実践に反映させることができるようになることを期待しております.また,ご自身の安全と家族・患者さんの「健康と生活を守る」お役に立てることを願っています.


2010年2月 小原真理子

目次
本書の使い方
災害看護授業のモデル(30時間用,15時間用,統合形式用)

第I章  被災者とのコミュニケーション
 1 コミュニケーションの基本 (ロールプレイ)
 2 子どもとのコミュニケーション (ロールプレイ)
 3 高齢者とのコミュニケーション (ロールプレイ)
 4 聴覚,視覚障害のある人とのコミュニケーション (ロールプレイ)
   A.手話を通してのコミュニケーション
   B.目の見えない人とのコミュニケーション

第II章  被災者の観察と基本的なケア
 1 観 察 (看護技術演習)
   A.五感を用いた観察の基本
   B.器具を用いた観察の基本
 2 身体ケア
   A.清拭・洗髪 (看護技術演習)
   B.足湯・マッサージ (看護技術演習)
   C.排泄のケア (机上シミュレーション+演習)
   D.高齢者の口腔ケア (看護技術演習)
 3 生活不活発現象の予防 (演習)

第III章  救護者間の情報伝達
 1 災害現場から派遣元病院への情報伝達 (演習)
 2 被災病院内の情報伝達 (演習)

第IV章  災害急性期の看護
 1 災害現場
   A.災害発生後から現地派遣までの被災状況の把握と準備 (机上シミュレーション)
   B.救護所の設営と運営 (机上シミュレーション)
   C.トリアージ[一次トリアージ(START方式),医療トリアージ,搬送トリアージ](シミュレーション)
   D.応急処置(骨折,傷の手当,頸椎の固定)(看護技術演習)
   E.整 体 (看護技術演習)
 2 被災地の病院
   A.多数傷病者の受け入れ態勢づくり (机上シミュレーション)
   B.外来,入院患者の安全区域への誘導および搬送 (看護技術演習)
 3 避難所 (演習)
   A.避難生活スペースの見直し
   B.感染予防

第V章  災害中長期の看護
 1 仮設住宅入居者の健康・生活支援 (演習+ロールプレイ)
 2 復興住宅入居者の健康・生活支援 (演習+ロールプレイ)

引用・参考文献

参考資料
 (1)演習方法の解説
 (2)傷病者メーキャップおよび演技の方法


書評
特定非営利活動法人 災害看護支援機構
理事長 山﨑達枝

 1995年1月に発生した阪神淡路大震災から本年までの16年間に,新潟県中越地震・石川県能登半島地震・新潟県中越沖地震・岩手宮城内陸地震と,国内の地震災害だけでも複数回発生し大きな被害に繋がっています.わが国における今日の災害医学・看護の発展は過去の災害,特に阪神淡路大震災の教訓が生かされ大きく進歩してきました.その結果,2009年には看護基礎教育において統合分野に災害看護が導入されることになりました.

 地震のように広域に影響を与え被害を及ぼす災害では,コミュニティーの適応限界を超え人・物・環境は破棄され,ライフラインは途絶えてしまいます.突然に発生する傷病者への救急看護,避難所では避難生活を余儀なくされる被災者への生活支援等々が求められます.「災害の体験者の少ないなか,災害という特殊な状況下を理解でき,看護の専門知識・技術を被災者に提供できるだろうか?」,「災害発生直後から災害現場で看護職として対象に合う看護実践ができるにはどうしたらよいのか?」という疑問を近年,多くの看護師が感じていると思われます.

 その答えは何より,より実践的な訓練・演習を行うこと以外にその手段はありません.より現場に即した臨場感のある訓練・演習を行うことが重要です.そこで,より実践的な演習が行えるようにと作成された本書を紹介したいと思います.何より本書の特徴は「演習で学ぶ」とタイトルにも書かれてあるように,①演習の目標, ②演習の準備 ,③演習の方法 ,④演習で用いる知識と技術,⑤演習の評価とポイントを一つひとつ丁寧に写真・図・イラストなどを使って大変分かりやすく書かれていることです.

 急性期の災害現場でのトリアージや応急処置,施設の傷病者の受け入れにとどまらず,災害中長期の支援,障害のある人とコミュニケーションを取る方法や特に高齢者への生活支援など,内容は豊富で非常に幅広くとらえられまとめられています.
推薦文
日本集団災害医学会セミナー委員長
フジ虎ノ門整形外科病院 外傷・救急センター
山口孝治

 災害が発生した際に,迅速で確実な対応を実施するため,平時(静穏期)から多くの準備が行われています.なかでも,災害医療に関する項目は,最も大切な準備項目です.災害医療の基本的な考え方は,災害とは何かを知り,災害による被害を理解し,被災により発生する健康危機に陥った傷病者の予後を改善することです.

 災害医療教育は,この一連の流れを踏襲し,系統だった構成になっていることが必要不可欠であると考えられています.災害時の医療は,日常の医療に比べ大変まれな事象であるため,座学で得た知識だけでは迅速・確実に対応することは不可能であり,常に実践向けの準備が必要になります.その準備とは訓練やシミュレーションになりますが,現状では,目の前にあることを処理するための一時的な対応に過ぎず,効果的な手法が考案されているとは言いがたい状況です.

 日本集団災害医学会セミナーでは,1997年より長きにわたり座学とシミュレーションによる災害医療の現任教育を展開してきました.しかし,今もなお概念の習得に留まり,具体的で実践的な方法(技術や手法)を指導するところまでには至っていません.

 本書は,①テーマの位置づけで「何を学習するか」を明確に示し,②演習の目標で「具体的な到達目標」を設定し,③演習の準備で何をどのように準備するかを具体的に示し,④演習のフローチャートで具体的な実施方法を示し,⑤必要な知識と技術を十分に解説し,⑥評価の視点にもふれ,⑦練習問題も掲載され,他の書籍に類を見ない構成になっています. まさに「概念を実動に落とし込む」プロセスを分かりやすく解説した書籍であると言えます.

 災害というまれな事象に対応するための準備であるからこそ,「憶える学習」より「考える学習」が重要であり,本書の出版により「考える学習」が可能になることは確実です.また,本書の活用により,災害訓練やシミュレーションを実施する際に,その都度行っている「概念を実働に落とし込む」煩雑な作業を省くことが可能です.

 本書は,職種を問わず,学生教育から現任教育まで広い範囲で活用でき,災害看護を学ぶ人だけではなく災害医療を学ぶすべての方々にとって,座右の銘と呼ぶべき1冊であると思います.また,日本集団災害医学会セミナーなど,多くの研修会に参加される際の事前学習用テキストとしても,最適な1冊であると考えます.
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