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カテゴリー: 保健/福祉/介護  |  臨床看護学

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生活の場で行うアドバンス・ケア・プランニング

介護現場の事例で学ぶ意思決定支援

1版

快護相談所 和び咲び 大城京子 編
千葉市あんしんケアセンター磯辺 清水直美 編
株式会社 クレセント 瀬口雄一郎 編
東京女子医科大学看護学部 老年看護学 長江弘子 編
国立長寿医療研究センター 地域医療連携室/エンドオブライフケアチーム 西川満則 編
いきいき在宅クリニック 横江由理子 編

定価

2,420(本体 2,200円 +税10%)


  • B5判  146頁
  • 2020年11月 発行
  • ISBN 978-4-525-50061-0

本人の気持ちのpieceは生活の中にこそあるんです!

大好評の『本人の意思を尊重する意思決定支援』の姉妹編!在宅→急性期病院→回復期リハ病院→在宅と移動する本人の意思を尊重した医療を最期まで実践するには,危急の状態になる前の介護現場からアドバンス・ケア・プランニング(ACP)を行う必要がある.本書は在宅や施設など介護現場でのACP事例を紹介し,実践に役立つ経験をシェアする.

本書で使われている意思決定支援用紙のフォーマット入手はこちらから!

  • 序文
  • 目次
  • 書評1
  • 書評2
序文
 この本を見つけて,手にとってくださった皆さん,本当にありがとうございます.
 皆さんは,アドバンス・ケア・プランニング(ACP,人生会議)を始めてはみたけど,どうやって進めてよいかわからないとか,ACPでは本人の意思が大事だと言うけれど,家族の気持ちや医療介護職の提案とずれが生じて,なかなか本人の意思を尊重できないなどと悩んでいませんか.また,皆さんは,ACPは将来の医療ケアを選ぶものなのに,なぜこの本のタイトルには「生活の場で行う」とか「介護現場の事例で学ぶ」と書かれているのだろうと,不思議に思いませんでしたか.
 そうです.この本は,そんな方に向けて書いた本なのです.この本は2016年12月に刊行されロングセラーを続ける,意思決定支援の3本の柱を使って事例展開する本「本人の意思を尊重する意思決定支援―事例で学ぶアドバンス・ケア・プランニング」の姉妹本です.先の本では医療現場での事例を取り上げましたが,その後,私たちは医療現場に患者さんがやってくる前の生活の場から,こういう話をしていかなければならないと考えるようになりました.そこで介護の専門家を中心にして作ったのが,この本です.
 まず最初に,介護職の方がACPを行うことの意義などを,マンガでわかりやすく解説してみました.作者はなんと少女漫画誌「マーガレット」などでもおなじみ,代表作に「凛!」「友達ごっこ」(集英社)「おかあさん,お空のセカイのはなしをしてあげる!胎内記憶ガールの日常」(飛鳥新社)などを持つ竹内文香さんです.日本救急蘇生普及協会制作の「漫画で役立つ!子供と大人でつなぐ命のリレー」の作画も担当した竹内さんが,この本の漫画を描いてくださいました.
 続いては本書のメインとなる事例集です.今回は介護職の方々に介護現場の事例を振り返っていただきました.本書でも先の本と同じような意思決定支援用紙を採用していますが,本書に載っている例を見ていけば,そこに記された人生の物語の中に,本人の思いのかけら(ピース)がちりばめられていることに気づかれると思います.ACPを始めて,人々の思いのずれに直面した時,何と何がずれているのかに気づき,ずれに対処していく鍵になるのがそんなピースなのですが,ピースは医療現場以上に生活介護の現場にちりばめられていると,今回お寄せいただいた事例を読んで私たちは感じています.本章で紹介されている事例からACPのプロセスを追体験することで,そんなピースを見出す力が,皆さんにもきっと養われていくと思います.
 最後にAPCに関連する用語の解説集を入れました.わからない言葉があったら,こちらでその意味を確認してみてください.また,ACPでは本人の意思決定能力,代理意思決定者の適格性,倫理的ジレンマなどよくある問題がいくつかあります.事例とあわせてこの用語解説でそういった問題の基本を理解しておくと,自らの実践の際の指針になると思います.
 この本の編者を紹介します.介護支援専門員の大城は,ピースにフォーカスした地域ACPieceの伝道者です.清水は,地域ACPを牽引してきた介護支援専門員の第一人者です.瀬口は,介護雑誌クレセント編集長として地域介護に光をあてる時代の先駆けです.長江は,日本の地域看護教育を率いてきた,地域EOLケアの母です.西川は,日本老年医学会「ACP推進に関する提言」作成委員の一人です.横江は,国立長寿医療研究センターEOLケアチームリーダーから訪問看護師に身を投じた地域EOLケアのリーダーです.この6人のメンバーがこの本を編集しました.そして,多くの著者は,介護現場で,ピースをキャッチしながらずれに対応しACPを進める地上の星なのです.
 皆さん,もしよろしければ,この本を読んでください.ピース,ずれへの対応をわかりやすく学びましょう.きっと,あなたのACP実践が変わります.そして,日本の地域ACPが変わります.

2020年 夏
大城京子,清水直美,瀬口雄一郎
長江弘子,西川満則,横江由理子
目次
マンガ
 ケアマネ満希(みつき)のACP奮闘記

事 例
1.本人の事前意思,本人と関わりたくない家族の意思,共に最後まで自宅だが,物盗られ妄想のためいざこざが絶えず,独居生活継続に苦慮した認知症男性
2.最期まで認知症の妻との自立した施設暮らしを望み,気管切開を選択しなかった増悪する声帯腫瘍を有する患者
3.過去の経緯から子どもたちと疎遠になっているが,長女の同居を望み施設入所を拒み続けた男性  
4.重度の認知症だが明確に延命治療を拒否する男性と,何が何でも延命してほしい一方で,生命維持治療を拒否する精神疾患を患った娘の支援
5.長年DVを受けてきた女性が医療上の最善よりも自由を選択した事例
6.家族や支援者はより多くの支援が必要と考えていたが,本人と主介護者は必要性を感じていなかった認知症患者
7.息子に負担をかけたくないが経済的に余裕がなく介護職がボランティアで支えざるを得ない女性の支援
8.最低限の治療は受けてほしい家族や医療者と意見が対立している,積極的治療を一切拒否する冠攣縮性狭心症患者
9.心筋梗塞による判断力低下時,精神障害のある家族との代理延命選択に苦慮したが,病状回復後に本人意向に沿ったケアができた事例
10.「お風呂に入りたい!」それだけなのに….往診医師と家族間に感覚のずれが生じ,医療放棄ではないかとされてしまった事例
11.自宅で暮らしたい気持ちに整理をつけ,自宅生活を支援してくれた家族の事情を汲み,自ら施設入所を決断した男性
12.急変時の救急搬送について,在宅医と家族の意見が対立した,気道が2mmしかない認知症女性
13.住み慣れたわが家での生活はかなわなかったが,近隣のサービス付き高齢者住宅に移り住み,慣れ親しんだこれまでの生活を維持できた事例
14.できる限り自宅で過ごし,病状悪化時のみ病院での低侵襲呼吸管理を受け入れた間質性肺炎男性  
15.息子から死を望まれながら,代理意思決定者をもたず自分の意思を貫く独居男性
16.家での生活を望む本人と,施設入所を提案する病院の意見対立の中,段階的支援により自宅看取りができた事例
17.施設を望む家族,ADLや社会性低下の予防を勧める医療者,突然死も承知で病院を拒否し自宅にいたい末期の気管支拡張症患者
18.ターミナル期に本人と家族の意向のずれ,療養場所を巡り医療職と介護職の意見のずれがあったが,話し合いを繰り返し,本人・家族の最善について向き合った事例
19.胃ろうや施設生活を望まないだろう本人の気持ちを知りつつも,金銭的困難の中,施設入所を決断した認知症患者家族
20.積極的治療を拒否している男性がん患者,治療を提案する医師,できる限り治療を受けてほしい妻に対する意思決定支援
21.本人の意思は最期まで自宅だが,急な発熱による意識障害が生じ,入院を選択しないことが本人にとっての最善なのか周囲が悩んだ事例
22.住み慣れた自宅での最期はかなわなかったが,夫の休職の決断後,先に逝く悔しさと向き合いながら穏やかな時間を手に入れた女性
23.本人の意思に反し人工呼吸器が装着されたが,事前の意思の確認と話し合いで人工呼吸器を中止した事例
24.本人とは関わりたくない家族の意向が優先され,在宅生活の継続がかなわず,施設入所を余儀なくされた,透析に通う認知症独居男性
25.本人の意思に反し救急搬送されたが本人が表明していた意思により人工呼吸器が中止された事例  
26.深い思いやりのため率直に対話できない父と娘,自分でできるうちだけ自宅で生活し,最期は病院を選択した乳がん患者
27.乳がん末期であることを高齢の両親に最期まで告げず,自身の自宅での看取りを強く希望し死の1か月前まで両親の介護を続けた独身女性
28.性同一性障がいの男性がホルモン療法を受けることで死のリスクが高まると医師から告げられても,女性であり続けたいという思いを貫いた事例

用語集
 ACPを理解するための関連用語
 わが国のACPの取り組み
 介護現場において医療処置の選択に用いられる医学用語
 意思決定支援において重要な用語
書評1
ACPのキモ,それは手続きでなく“場”なのかもしれない

大川 薫(亀田総合病院 在宅診療科)

 「生活の場で行う」という題名の枕がこの本の役割と支援者の暖かい眼差しとを端的にあらわしている.
 欧米で起きたアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の概念は,本邦では特に高齢多死社会の文脈に沿って医療・介護現場で好意的に受け入れられた.そして,人生会議の愛称で行政も加わりその実践が模索されている.一方で海外では最近,ACPの限界を指摘する声もあがってきているようだ.
 誰にも等しく確実に訪れる死を見通し,不確定な未来を計画していくことは思いのほか難しい.医療的側面に関しては専門知識が必要なのは当然である.しかし医療者であっても臨床経験を重ねるほど,疾患軌道や生命予後の不確実性を思い知ることになる.
 では,いったい私たちはどうしたらいいのだろうか?
 答えのヒントがこの本の中に散りばめられている.提示された28事例は単に“あるある”だと片付けることはできない.そこではネガティブ・ケイパビリティを備えた支援職の葛藤と戦いとを追体験できる.そして,その主戦場は非日常の病院ではなく「生活の場」にある.当事者とそれを取り巻くプレイヤーそれぞれの齟齬を紐解いていくプロセスは『意思決定支援用紙』で俯瞰することが可能だ.また,扱う事例のスペクトラムはジェンダー・アイデンティティの問題にまで及ぶ.ここに援助者の基盤にある包摂性と未来がたりが透けて見える.
 事例を読み進めると,脱家族・脱地域社会が進むなか,限られた社会資源を巧みに適用しつつアドボケートとして立ち,今をどう生きるかという問いのなかに答えを探す真摯な支援者の輪郭が見えてくる.
 COVID-19禍によって,人の移動が制限され,高齢者が大切な人と面会できないまま亡くなり,さらに地域社会で引き継いできた弔いの簡略化が加速している.パンデミックに飲み込まれた2020年,エンド・オブ・ライフと医療・介護の未来を再考する機会を本書は私たちに与えてくれる.
書評2
良き援助者として

串田一樹(昭和薬科大学地域連携薬局イノベーション講座 特任教授) 

 アドバンス・ケア・プランニング(ACP・人生会議)という言葉をご存知でしょうか.本書は,介護現場の皆さんが28の事例を通してACPの実践を振り返っている記録です.各事例から,大変な状況が読みとれますし,困難な事例に対してさまざまな職種の考え方,対応,振り返りなどが書かれています.患者,利用者の意向を優先しながらも,ご家族にも寄り添われた記録です.
 高齢・多死社会を迎えて,「自分らしい人生」を送れるように,そして,「住み慣れた場所」で送れるように,生活の視点を大切にした介護現場の皆さんの奮闘ぶりが目に浮かびます.事例ごとに,意思決定支援用紙が添付されており,そこに合意形成に向けたプロセスが記載されていますので,在宅医療・介護にかかわるあらゆる職種の皆さんには大変参考になると思います.
 本人にとっての最善のケアとは何かを常に意識していながらも,利用者お一人ずつ違っているので,各職種の意見の「ずれ」がケアの質に影響します.本書は援助者としての共通の認識が,各職種の中に生まれる一冊と感じます.特に在宅医療・介護の現場では,適切な服薬管理が「このまま住み慣れた場所での生活を続けられるか」のカギとなることも多く,ACPは薬剤師も積極的にかかわるべき課題です.
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