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カテゴリー: 基礎看護学

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医療の可視化から始める看護マネジメント

ナースに必要な問題解決思考と病院データ分析力

1版

産業医科大学公衆衛生学教室 松田晋哉 監修
東京医科歯科大学医療政策情報学分野 伏見清秀 監修
東京医科歯科大学医学部附属病院
クオリティ・マネジメント・センター 森脇睦子 執筆
産業医科大学病院医療情報部 林田賢史 執筆
東京医科歯科大学医学部附属病院
クオリティ・マネジメント・センター 鳥羽三佳代 執筆

定価

3,520(本体 3,200円 +税10%)


  • B5判  156頁
  • 2018年9月 発行
  • ISBN 978-4-525-50051-1

看護の現場が抱える問題点をどう解決しますか?

臨床現場の問題点を客観的に示し,病院組織の意思決定者にプレゼンし必要な改革を行うことが組織マネジメントとして強く求められ,その能力が看護師にも求められている.問題解決思考と病院データ分析力を持ち合わせていなければ根拠に基づいた看護マネジメントを行うことができないため,対象看護師にはぜひ利活用していただきたい一冊.

  • 序文
  • 目次
  • 監修のことば 1
  • 監修のことば 2
序文
 2010年はビッグデータ元年と言われており,医療界にもその流れは強く影響しています.医療の現場には電子カルテ情報をはじめとして,医療安全管理レポート,感染制御に関するデータ,DPC・レセプトデータ,重症度,医療・看護必要度のデータなどの多くのデータが日々蓄積され,あふれています.そして,これらを上手に使うと医療現場で起こっているさまざまなことを可視化することができます.EBMという言葉も常識知となり,根拠に基づいた医療・看護を提供することによる質の維持・向上が当たり前になっています.また,高齢化や医療費の高騰という社会経済環境の変化の中,医療の質のみならず経営的な側面をより意識した医療の提供が不可欠な時代になりました.
 このような背景のもと,管理者には臨床現場の問題点を客観的に示すとともに,それらを病院の組織運営に反映させていくことが求められるようになり,看護職にもその能力が大いに求められています.
 どこの医療機関でも看護職は病院職員の中で最も人数が多く,患者さんやその家族,他職種とのかかわりが深い職種です.いわば病院でキー(要)となる職種です.そのため,院内の山積する問題に直面する機会も多いうえ,看護師自身問題意識が高い集団です.日々の疑問や問題を院内全体で共有するためには,他者にそれらを客観的に伝えることが改善のための正攻法といえ,問題解決思考とデータ分析のスキルが必要となります.しかし残念ながら,看護職の中には問題解決思考とそれをサポートするデータ分析に対する苦手意識をもつ人が多いように感じます.
 そこで,こういった現状を鑑み,看護職の皆さんが日々の疑問や感覚的に思っている「本当にそうなのか?」,「どうしてそうなのか?」ということを,データを用いて表現するための方法論とスキルを身につけるきっかけになればと考え,本書を企画しました.
 本書には皆さんが理解しやすく読み進めやすいように,厳密にいうと完全には正しいとはいえない内容も一部入っています.細部の厳密性にこだわった小難しい内容を省き,まずは概要をつかんでいただきたいとの思いで,あえてそのような内容にしています.本書は入門書ですので,これを契機により発展的に問題解決思考とデータ分析力を培っていただきたいと考えています.
 本書の第Ⅰ章は,データ分析の意義と基本的知識について述べており,疑問点からスタートして原因を追及し改善策を導き出すためのプロセスと,データを扱うときの作法を学ぶことができます.これらは分析するときに必要な基本となる事項です.
 第Ⅱ章では,データの加工方法や具体的な事例について,皆さんにとって比較的なじみのあるMicrosoft社のExcelRを用いた分析の一連の流れを紹介しています.これらは第Ⅰ章の内容が活かせるよう,日々の看護業務で直面するような身近な例を扱っていますので,皆さんもイメージしやすいと思います.ここで取り上げる分析はあくまでも一例です.これを参考によりよい別の方法を考えたり,ほかの分析に応用したりしてより発展的な分析につなげてください.
 なお,データ集計や図表作成に際しては,産業医科大学病院医療情報部副部長の村上玄樹先生にご協力いただきました.この場をお借りして,心より感謝申し上げます.
 今後われわれ看護職は,「経験値」だけでなく「データ」オリエンテッドな現状認識と原因追跡の手法を身につけることが不可欠です.本書が病院組織の意思決定や改善活動に貢献するための基礎能力を養う一助となることを期待しています.

2018年8月吉日
森脇睦子
林田賢史
目次
第Ⅰ章 ナースにとっての分析の意義と必要な基礎知識
1 どうしてデータ分析が必要なの?
 1.ナイチンゲールが説いた看護管理も医療の可視化から始まっている
 2.医療の質の可視化
 3.数字に対する苦手意識
 4.国策の流れ
 5.院内にはたくさんのデータが眠っています
 6.管理者に求められること
  Column❶ 毎年やってくる人材不足問題

2 病院にはどんなデータがあるの?(病院で利活用できるデータ)
 1. 病院で利活用可能な多種多様なデータ
  1)データの情報源
  2)1次データと2次データ
  3)データの種類
  Column❷ 「重み付き平均」って,な〜に?
  4)個別データと集計データ
  5)記憶媒体(メディア)
  6)データ作成(収集)のタイミング
  Column❸ 「縦持ちのデータ(ファイル)」と「横持ちのデータ(ファイル)」
 2. DPCデータ
  1)様式1
  2)入院EF統合ファイル
  3)Dファイル
 3.重症度,医療・看護必要度データ
 4.医療事故情報およびヒヤリ・ハット事例(日本医療機能評価機構における医療事故情報収集等事業)
  1)データ収集の経緯
  2)医療事故情報とヒヤリ・ハット事例
  3)公開情報の利活用
 5.院内感染対策サーベイランス(JANIS)データ

3 日々の疑問をどうやって分析するの?(データ分析の仕方)
  1)分析のための事前準備
  2)実際の分析
  3)分析結果の解釈
 1.(抽象的な)疑問やイメージを具体的に分析できる形に落とし込む
  1)問題の構造化
  2)言語化
  3)事象とデータ項目との紐付け
  Column❹ 「用語の定義」は大切です!
 2.データの入手(収集と抽出)
 3.分析と解釈
  1)集団の特徴を記述する
  Column❺ 平均値が適する? 中央値が適する?
  2)事実確認と原因解明
  3)分析結果の解釈
  4)分析を実施する際の留意点
  5)分析結果を解釈する際の留意点


第Ⅱ章 データ分析の超実践法
1 分析用データをつくる
 1.統計的思考に基づいて課題を探求する
  1)どうして統計的思考が必要なの?
  Column❻ 統計とは!?
  2)PPDACとは何か?
  Column❼ 分析をするには目的をしっかりと決めてから!
 2.分析用のデータはどうやってつくるの?
  1)分析用データを作成する際の重要なポイント
  2)行と列
  Column❽ 説明変数をどうやって選ぶ?
  3)変数を決める
  4)データの型を決める
  5)テーブル定義書をつくってみよう

2 具体的な分析例(初級編)
 1.一般病棟の「重症度,医療・看護必要度」の可視化を試みる
 2.「重症度,医療・看護必要度」の視点でハイケアユニット(HCU)の患者さんを一般病棟に転棟するタイミングは?
 3.施設基準を活かした病棟運営を考えてみよう!

3 具体的な分析例(上級編)
 1.術後感染症予防のための抗菌薬投与状況を可視化してみよう!
  Column❾ 投与パターンによって改善策のアプローチが異なります
 2.病棟の忙しさと有害事象は関係しているの?

参考図書・URL

参考資料
 ①「様式1」
 ②「入院EF統合ファイル(行為明細情報)」
 ③「Eファイル(診療明細情報)」
 ④「Fファイル(行為明細情報)」
 ⑤「Dファイル(包括診療明細情報)」
 ⑥「Hファイル」
監修のことば 1
 医療保険財政の厳しさや患者さんの医療に対する要望の変化によって,医療の現場では従来以上に医療活動の可視化が求められるようになっています.本書でも述べているように,現場の看護職は「身近にあふれるさまざまな統計処理された情報を正しく受け止める力と,公的情報をはじめとする統計的基礎資料を自身の意思決定に活用できる力を身につけていかなければならない時代」になったのです.
 本書では社会で広く用いられている表計算ソフトであるExcelRを用いて看護職に必要な情報を分析し,可視化する方法が丁寧に説明されています.関数やピボットテーブルなど,理解するまでに若干の努力を必要とするテクニックを用いなければなりませんが,それらを使いこなせるようになれば,データをみる目や視界が急に開けることを実感するでしょう.ExcelRについては,本書の説明だけでは不十分です.わかりやすい成書が多くありますので,できれば関数辞書のついたものを1冊購入し,それを適宜参照しながら本書を読むことでさらに理解が深まると思います.
 看護職の仕事の本質はマネジメントであると私は考えています.よいマネジメントをするためには,ある程度数字の裏付けをもって日々の業務をモニタリングし,そして定期的にその評価を行い,それを実践につなげていくというPDCAサイクルを日々の業務に実装することが必要です.そのためにもマネジメントの専門職たる看護職はデータ分析能力を身につけることが必須となっているのです.
 本書に示された分析例を,実際にパソコンを用いて段階的に追体験することでデータ分析の面白さに気づくと思います.まずはやってみましょう.いったん,本書で示された方法論を身につければ,皆さんの日常の看護業務の中に検証してみたいことが数多くみつかるはずです.本書で示された方法を応用して,ぜひそれを分析し,そしてその分析結果を仲間と共有してみましょう.とくに本書でその分析方法が説明されている「重症度,医療・看護必要度」の検討は,いろいろな発見につながるはずです.看護必要度のデータが,統一フォーマットでこれだけの規模で収集されている国は国際的にもまれです.院内での活用だけでなく,多施設でそれを分析することで,日本発の看護管理研究が国際的な場面でも多く発表されることを期待したいと思います.そして,本書がそのための重要なステップになることを願います.

2018年8月
松田晋哉
監修のことば 2
 医療ビッグデータの時代と言われているように,病院では多くの医療データがつくられ,蓄積されています.一方,膨大なデータからつくられるエビデンスに基づいてさまざまな医療政策が立案・施行され,わが国の医療制度を変革しています.とくに近年は,病院や病棟の機能をデータに基づいて評価し,医療機関の診療報酬や地域での医療機能分化の方向性を決める流れが明確となっています.このような中,データに基づく看護機能の評価もより強化され,平成30年には急性期病床の機能を「重症度,医療・看護必要度」で客観的に評価する仕組みが導入されています.地域医療構想では,医療機関が自らの機能を分析し,将来の病棟機能を選択することも求められています.つまり,病棟の看護体制の選択が病院経営に直結するような時代になったのです.
 今までは,どちらかというとデータ分析からやや遠いところにいることが多かった看護職の皆さんも,いや応なく医療データの荒波に揉まれ始めているのかもしれません.病棟機能を維持するために日々の看護必要度を評価することが求められ,DPCデータのHファイルの分析に取り組み始めている人もいます.看護職であっても所属する医療機関の機能や地域での役割を考えることも求められています.そのためには,多少数字が苦手な方も少しずつ医療データの分析に手を付けてほしいと思います.
 さらに,医療安全や医療の質の確保における看護職の役割も日々大きくなっています.安全や医療の質の視点からのさまざまな医療データの分析方法が開発され,臨床指標や医療安全のモニタリングに活用され始めています.データ分析を深めて,医療の質と安全の確保に貢献する取り組みには,看護職の方にも積極的に参加してほしいと思います.
 本書は数字に苦手意識のある看護職の方でもデータ分析に取り組めるように,基礎的なことから順を追って段階的にとてもわかりやすく解説しています.また,自院に眠っているDPCデータ,レセプトデータ,看護データ,電子カルテデータなどからいろいろな分析を始めるためのエッセンスが詰まっています.まさに,看護職が医療データ分析を始めるための最適の入門書となっています.すべてを一度にマスターすることは困難かもしれません.しかし,本書に書かれていることのほんの一部でも始めることができれば,医療データ分析の最初のハードルを越えることができます.その先,一歩ずつ少しずつゆっくりでも進めていけば,やがて院内のデータを活用する視界がどんどん開けていくことは保証します.ぜひ,医療データ分析の世界を体験してみてください.

2018年8月
伏見清秀
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