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カテゴリー: 東洋医学  |  臨床薬学

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専門家のコンセンサスに基づくポケット漢方薬ガイド34

1版

ポケット漢方薬ガイド編集委員会 著

定価

2,970(本体 2,700円 +税10%)


  • A5判  158頁
  • 2021年8月 発行
  • ISBN 978-4-525-47141-5

漢方の専門家が徹底議論して作った,日常診療に役立つ漢方診断・方剤選択の解説書!

経験や主観的判断によって確立されてきた漢方医学・処方論を,日常診療で誰でも利用できる形式知とすべく複数の専門家が徹底議論! 合意が得られた処方ロジックに基づき,漢方薬を解説しました.一般診療を広くカバーできる頻用処方「漢方薬34方剤」を取り上げ,添付文書情報とともに,熟練者が使い分けのポイントとしている所見,方剤ごとの寒熱・虚実・気血水の相対もひと目でわかる構成になっています.
付録には,各方剤の漢方医学的病態早見表,舌診・腹診・脈診の判定基準,腹診の基本手技を収録.オールカラーで見やすく,日常診療にすぐに役立つ知識をコンパクトにまとめました.漢方薬の初学者から上級者まで必携の1冊.

  • 序文
  • 目次
  • 書評1
  • 書評2
  • 書評3
序文
 現在漢方薬は広く医療に用いられており,その使用方法に関する解説書もあまた存在するなか,なぜ本ガイドを出版することとなったのか,本ガイドの特徴を述べながら説明したい.
 漢方医学がもっとも頼りにするのは伝統的知識であるが,伝統的知識はその性質上,流派による違いが生じやすい.どの本で学んだか,どの先哲から指導を受けたかで漢方薬の処方の仕方は大きな影響を受ける.従来の解説書は,当該部分を執筆した著者の知識を表現しており,特定の流派の考えに基づいた内容にならざるを得なかった.これはこれで漢方医学の特徴に沿うものであり,漢方を勉強する際には当然の前提であるとも考えられる.しかし漢方を学び始める場合,最初の段階ではできるだけ普遍的な考えを知識として取り入れ,それを基に発展させてゆく方が合理的であろう.この段階で漢方学習が終了してしまう場合はなおさらである.
 本ガイドの目的は,漢方初学者にできるだけ一般的・普遍的な漢方薬の使い方を習得していただくことである.そのため,これは本ガイドの最大の特徴であるが,内容はすべて8 人の漢方専門医の合意形成で決めた.もちろん内容の一字一句にわたり8 人すべてが完全に同意したわけではないが,この表現であれば受け入れ可能というレベルになるまで議論を重ねた内容を反映した.つまり本ガイドでは,8 人各々の考えが相違する部分はそぎ落とし,共通認識部分を表現することでできうる限りの普遍化を図った.
 もっとも,たかだか8 人が合意しただけで日本の普遍的な考えであるというのはおこがましいし,そもそも普遍的とは何かという議論も必要であろう.ただ,合意形成に関わった8 人の漢方専門医はそれぞれが経験豊富な漢方臨床医であるとともに,日本の漢方医学教育界においても重要な役割を果たしている.その意味で本ガイドの目的を達し得るレベルの普遍性は担保されたのではないかと考えている.この点,読者諸氏のご批判を仰ぎたい.
 なお本ガイドは,文部科学省 革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)北海道大学COI『食と健康の達人』(JPMJCE1301)のサテライト拠点の活動の一環として支援を受けた研究に付随して作成されたものである.

2021年6月
ポケット漢方薬ガイド編集委員会
目次
34漢方方剤解説

・黄連解毒湯
・葛根湯
・加味逍遙散
・桂枝湯
・桂枝茯苓丸
・香蘇散
・五苓散
・柴胡加竜骨牡蛎湯
・柴胡桂枝乾姜湯
・柴胡桂枝湯
・四逆散
・十全大補湯
・小建中湯
・小柴胡湯
・小青竜湯
・真武湯
・大建中湯
・大柴胡湯
・大承気湯
・当帰四逆加呉茱萸生姜湯
・当帰芍薬散
・人参湯
・麦門冬湯
・八味丸
・半夏厚朴湯
・半夏瀉心湯
・白虎加人参湯
・茯苓四逆湯
・防已黄耆湯
・補中益気湯
・麻黄湯
・麻黄附子細辛湯
・抑肝散
・六君子湯

付録

・34方剤と漢方医学的病態の対応表
・舌診・腹診・脈診の所見判定基準
・舌所見の典型例
・腹診の基本手技
書評1
専門家が考え抜いた漢方処方34:漢方スキルが身につくポケットガイド

元雄 良治(金沢医科大学 名誉教授/小松ソフィア病院 腫瘍内科 部長)

 本書の表紙に漢方処方名が見えたので,本の帯を外すと,なんと左端に本書が扱う34の漢方処方名が五十音順に上から並んでいる.本書には各処方の生薬構成,効能効果などが簡潔に書かれている.しかも一人の著者の考えではなく,現代日本の著名な漢方専門家が編集委員会を構成して,コンセンサスを得て完成されたものである.
 なぜこれら34処方が選定されたのかについて冒頭に1ページで記載されている.それは北里大学東洋医学総合研究所の予備調査で,初診患者の約8割が30処方で治療されていること,また漢方医学的病態(虚実・寒熱・気血水など)を網羅するという観点からである.
 処方解説は五十音順に,黄連解毒湯から始まり,六君子湯で終わっている.処方名のすぐ下には「注意が必要な生薬」と「注意が必要な患者」が列挙されている.やはり漢方薬が安全に使用されることを重視した編集であることが理解できる.そして処方名と同じ囲みに「Key Point」として一言でその処方のポイントが明示されている.黄連解毒湯の場合は,「熱感の強い皮膚のかゆみに」である.
 本書の特徴として,「問診」ではマーカーで重要なポイントが示され,「舌診・脈診・腹診」ではその処方での典型的な所見が図示されている.例えば当帰芍薬散では,問診でむくみ,頭重,月経不順,出血量が少ない,月経痛がマーカーでハイライトされている.
 以上の所見から漢方医学的な病態(いわゆる「証」)が記載され,鑑別処方がいくつかあげられている.最後に「step forward」として,例えば六君子湯では「上腹部痛を合併した場合には四逆散や柴胡桂枝湯を合方する」などの臨床的ヒントが記載されている(ここでは記載の一部を省略した).
 付録には,34漢方方剤と漢方医学的病態の対応表が見開き2ページで提示されている.それに続いて舌診・脈診・腹診の所見判断基準とグレーディングがわかりやすく図示され,最後に腹診の基本手技が写真入りで解説されている.
 この1冊を診察室の机の上に置いて診療をしていくと漢方のスキルが身につくと確信できる.そして本書によって医師の処方意図が薬剤師に伝わることが期待される.
書評2
「本書の魅力」と私の使い方

松田隆秀(聖マリアンナ医科大学総合診療内科 特任教授)

 「漢方医学」と「西洋医学」,両医学は概念や成り立ちが異なることによって,相容れない医学と捉えられてきました.しかし,西洋医学の細分化に伴い,漢方医学に知恵を求める臨床医が多くなっているのではないでしょうか.
 漢方医学はわが国が誇る伝統医学で,いくつかの流派によって現在まで継承されてきました.それゆえ,それぞれの流派の概念に従って執筆された書籍も多くありますが,本書は8 人の専門家が流派を超えた議論を重ね,合意執筆された漢方実用書であります.是非,漢方初心者にも手にしていただきたい一冊です.
 ここでは,本書の魅力と私の利用法を紹介させていただきます.

Ⅰ 「本書の魅力」について
1  8人の著名漢方専門家が分担執筆ではなく,流派を超えて合意された内容である.
2  日常診療をカバーできる頻用34 方剤に絞られている.
3  漢方薬による副作用を,構成生薬から理解できるように工夫されている.
4  製薬会社によって構成生薬が異なる漢方薬があることも重視している.
5  一目瞭然のアイコンで,漢方薬ごとに妊産婦,小児,高齢者への注意喚起が示されている.
6  漢方にも起こり得るポリファーマシー対策として,同一生薬の重なりに気づきやすい工夫がされている.
7  保険診療に基づいた漢方診療に配慮されている.
8  方剤を選択するkey point(症状)があげられ,第一選択方剤やほかの方剤との選択鑑別点が説明されている.

Ⅱ 私の使い方
 本書の構成を利用して,逆引き辞典のようなトレーニング書としても応用できます.
1  各方剤解説の右頁に示されている組成生薬だけをみて,方剤名をあげてみる.
2  各方剤に含まれる生薬から,妊産婦,小児,高齢者への配慮が必要かどうかを考えてみる.
3  個々の患者に対して複数の漢方薬が思い浮かんだ場合,第一選択薬をあげてみるなど,本書はトレーニング書としても活用することができます.

 著者である漢方専門家8名から「日常診療で活用すべき漢方薬の適正使用,副作用の軽減,保険診療での活用について,是非とも知っておいて欲しい」との大きな声が聴こえてきそうです.
書評3
無駄なく的確な漢方薬の情報が示された書籍

矢久保修嗣(日本東洋医学会副会長・明治薬科大学臨床漢方研究室教授)

 日本の漢方は歴史が長いため情報が錯綜している.そこへ理論の多い中国医学の考え方が乱入し,現在は大混乱である.そのなかで,本書は極めてすっきりと書かれている.漢方は理屈や推論ではなく,臨床経験の蓄積を重視してきた.その臨床経験にもとづく漢方薬の情報を,臨床で汎用される重要な34処方にフォーカスし本書は整理している.特にKey pointは無駄がなく的確な記載である.漢方薬の決定の際に重要な自覚症状に関しては,問診のところにわかりやすく記載されている.注意する生薬や,注意が必要な患者はひとめでわかるように示してある.慎重投与,重要な基本的注意,重大な副作用などの使用上の注意も要領よくまとめられている.製薬会社により漢方薬の保険適用病名が異なるという,保険診療では困った問題があるが,本書はそれぞれの製薬会社による漢方薬の組成や保険適用病名も示されている.臨床医,薬剤師にとってはたいへんに有用な書籍である.
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