1版
定価:2,750円(本体2,500円+税10%)
概要
分子標的抗がん薬から免疫チェックポイント阻害薬まで本当にわかる!
これまでの抗がん薬とは,まったく異なるメカニズムの「分子標的薬」.本書では,数が多くなり,まとめにくくなった分子標的薬を大きく4つのグループに分けて解説.新しいメカニズムの「免疫チェックポイント阻害薬」についてもわかりやすいイラストで解説した.「分子標的薬」に苦手意識を抱いている方にもおすすめの入門書.
近年,分子生物学の進歩によりがんの発生や進行にかかわる分子や,それらの分子と連携するシグナルが明らかになり,がんに特異的な分子メカニズムをターゲットとした分子標的抗がん薬が数多く開発・承認され,臨床で使われています.2001年にわが国ではじめて承認された分子標的抗がん薬は,実に現時点で48剤となりました.
がん治療に従事する医療スタッフは多忙ななかでも常に,最新情報の収集,知識のアップデートをしながら,治療の有効性と安全性の確保に努めています.しかし,従来にはなかった作用メカニズムを有する分子標的抗がん薬の知識を習得するには難解な部分もあり,苦手意識をもちつつ,不安をかかえながら対応せざるを得ない状況には心が痛みます.
このような背景のもと,分子標的抗がん薬の入門書として,2011年8月に「基本まるわかり! 分子標的薬」を発行し,改訂2版まで多くの読者にご愛読いただきました.そして,いただきました多くの貴重なご意見,ならびにご提案に心から感謝申し上げます.それらに誠心誠意応えることを念頭に,この度,前版からさらにわかりやすさに磨きをかけて「絵でわかる 分子標的抗がん薬」として,新たに編集することとなりました.
本書の特徴は,数が多くなり,まとめにくくなった分子標的抗がん薬を大きく4つのグループ――①細胞の外側に作用する薬,そして細胞の内側に作用する薬として,②受容体型分子を標的とする薬,③非受容体型分子を標的とする薬,④その両方を標的とする薬,に分けることで,薬の作用点をイメージしながら,ご覧いただける点にあります.また,注目を浴びている「免疫チェックポイント阻害薬」については上記①のグループで取り上げ,その難解な作用メカニズムを,豊富にイラストを使ってわかりやすく解説しました.本薬剤を理解するうえでの大切な第一歩となることでしょう.
本書が,分子標的抗がん薬への苦手意識の解消に少しでも役立ち,有効かつ安全で安心ながん薬物療法を患者さんに提供するとともに,病院および地域における医療現場でのチーム力の強化・向上の一助となれば,著者として至極の喜びです.
2016年秋
北陸大学薬学部 教授
石川和宏
第1章 がん細胞のしくみからみた従来型抗がん薬と分子標的抗がん薬
1 新しいがん治療薬として登場した分子標的抗がん薬
2 がんの増殖のしくみ
3 がんの浸潤・転移のしくみ
4 がんの血管新生のしくみ
5 抗体薬と小分子薬
第2章 分子標的抗がん薬の特徴とメカニズム
1 細胞外で作用する薬
●抗体薬:リガンド阻害薬
●抗体薬:膜受容体阻害薬
●抗体薬:膜上分化抗原標的抗体薬
2 細胞内で作用する薬:受容体型分子を標的にした薬
●小分子薬:受容体型チロシンキナーゼ標的薬
3 細胞内で作用する薬:非受容体型分子を標的にした薬
●小分子薬:非受容体型チロシンキナーゼ標的薬
●小分子薬:セリン・スレオニンキナーゼ標的薬
●小分子薬:プロテアソーム阻害薬
4 細胞内で作用する薬:受容体型・非受容体型分子を標的にした薬
●小分子薬:マルチキナーゼ阻害薬
第3章 各論を踏まえたがん化学療法総論
1 遺伝子情報とがん化学療法
2 投与された抗がん薬の作用に関連した因子
3 支持療法とがん化学療法
Column
薬効にかかわる遺伝子型理解のコツ
コンパニオン診断薬
抗体薬と小分子薬の語尾
従来型抗がん薬の作用機序
リキッドバイオプシー