書籍カテゴリー:腫瘍・化学療法|外科

がん患者の感染症診療マニュアル
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がん患者の感染症診療マニュアル

2008年 1版

  • 静岡県立静岡がんセンター感染症科部長 大曲 貴夫 編集
  • 静岡県立静岡がんセンター感染症科 具 芳明 編集
  • 静岡県立静岡がんセンター感染症科 上田 晃弘 編集
  • 静岡県立静岡がんセンター感染症科 藤田 崇宏 編集

定価:3,150円(本体3,000円+税5%)

  • B6変型判 242頁
  • ISBN978-4-525-42321-6

がん患者の感染症は,健常人が罹患するのとは異なり,がんの予後や治療の経過にも大きく影響を及ぼすことから,管理・コントロールは,がん治療における非常に重要なキーポイントである.本書では,がん治療の場面毎や臓器・部位別の感染症治療のポイントやコツをギューっと凝縮した.
がんの診療に携わるすべての人のポケットに!

序文

近年,わが国ではがん医療水準の均てん化が叫ばれるようになった.これに伴いがんの専門的診療の質の向上のみならず,がん診療に深く関わる緩和医療・リハビリテーションなどについてその価値が評価されてきている.さて,感染症はどうだろうか.
がんには感染症がつきものであることは,がん診療に関わる方であれば納得して頂けるはずだ.例えば周術期の大きな合併症といえば手術部位感染だ.また抗がん剤による治療の結果末梢血の好中球が減少し,その結果患者は感染症を発症しやすくなる.つまり,がんと感染症は極めて密接な関係にある.
がん診療の成否は感染症診療の質の善し悪しにかかるといってもいい.なぜなら,がん治療が順調であっても,感染症にうまく対処できなければ,それこそ数時間のうちにでも患者を失ってしまうこともあるからだ.がん診療を安全に行っていくためには,感染症診療の質の担保が必要だ.
がん診療の分野は臨床試験に基づいた極めてEvidence Basedな世界である.その中にあって,感染症の診療だけは「なんとなくやっている」,「オレ流」というのは,いいことではないだろう.がん患者における感染症診療も,がん治療と同じく,正当な方法に則って行われるべきなのだ.
近年,臨床感染症に対する医療者の関心がとみに高まってきている.感染症の基本的な考え方を重視し,これまでに蓄積された臨床的な知見を元に,妥当性のある感染症診療を行うという気運が高まってきている.これは,感染症と関連の深いがん診療の分野でこそ,強調されるべきことである.
静岡県立静岡がんセンターでは,わが国の他のがん専門医療施設に先駆けて,2004年から感染症科(臨床部門)が活動を開始した.がん診療を受ける全ての患者の感染症の問題をうまく予防し,解決していくことが我々の使命である.がん患者の感染症診療には,市中感染と比べても複雑で特殊な点が多く,マネジメントは一筋縄ではいかない.感性的なやり方では,太刀打ちできない.よって院内の感染症診療の質を一定以上にするためには,当科として感染症の診療の指針を示して,それを元に院内での教育・啓発活動を行っていく必要があった.その指針を元に,現状に即して徐々に発展させ,“がん診療に関わる全ての医療者ががん患者の感染症に自信を持って立ち向かうために”との思いを持って編集したのが本マニュアルである.
感染症診療の極意は,思考法のフレームワークを持つことだ.つまりは考え方を知ることである.本マニュアルは,臨床感染症の基本的な考え方・ロジックを軸として,がん診療に関連する感染症を網羅するよう試みた.また,がん患者であっても市中感染に罹患しうることを考えれば,市中感染と医療関連感染の両方に対処法を記すべきであり,その点にも配慮した.
すなわち本マニュアルは,“がん患者の”と銘打ちながらも,市中感染・医療関連感染いずれの場でも活用できるマニュアルとなっている.
本マニュアルが,がん患者の感染症診療の質の向上に寄与し,ひいてはがん患者の予後の改善に貢献できることを願っている.そして,がん診療にかかわる医療者の方々が,本マニュアルを通じて,がん患者における感染症診療の重要性について気付いていただければ,望外の喜びである.


2008年2月  大曲 貴夫





目次

第1章 感染症診療のロジック(基本編・がん患者編)
1.感染症診療のロジック(基本編)
 ロジック1 患者背景を理解する
 ロジック2 どの臓器の感染?
 ロジック3 原因となる微生物は?
      原因となる微生物は?
 ロジック4 どの抗菌薬を選択?
 ロジック5 適切な経過観察
2.感染症診療のロジック(がん患者編)
 ロジック1 患者背景を理解する
  ポイント(1)バリアー障害
  ポイント(2) 生体機能の異常
  ポイント(3)好中球の減少
  ポイント(4)細胞性免疫の低下
  ポイント(5)液性免疫の低下
 ロジック2 どの臓器の感染?
  ポイント(1) 医療関連感染の多発部位を知る
  ポイント(2) がんのタイプごとに感染症多発部位を知る
  ポイント(3) 好中球減少状態でのフォーカスの詰め方を知る<1>
        好中球減少状態でのフォーカスの詰め方を知る<2>
        好中球減少状態でのフォーカスの詰め方を知る<3>
  ポイント(4) 重症度はCRP,WBCで判断しない
 ロジック3 原因となる微生物は?
  ポイント(1) 感染症症候群と微生物の関係を知る
  ポイント(2) 易感染状態・免疫低下の種類から微生物を絞る<1>
        易感染状態・免疫低下の種類から微生物を絞る<2>
  ポイント(3) 易感染状態の時間的変化を知る
 ロジック3 原因となる微生物は?
  ポイント(1) 抗原検査では診断がつかない
  ポイント(2) 薬剤耐性菌感染・多重感染の見落としを防ぐ
  ポイント(3) 毒性の強い薬剤を投与する時の根拠となる
  ポイント(4) 治療終了の目途が立つ
 ロジック4 どの抗菌薬を選択?
  ポイント(1) Empiric Therapyでの抗菌薬選択
  ポイント(2) Definitive Therapyでの抗菌薬選択
 ロジック5 適切な経過観察
  ポイント(1) Natural courseを知る
  ポイント(2) CRP,WBCのみに頼らない
  ポイント(3)「よくならない」理由を系統的に洗い出す<3>
        「よくならない」理由を系統的に洗い出す<4>

第2章 がん治療の場面ごとの感染症診療のポイント
 1.固形がん化学療法時
 ・感染症の観点からみた固形がんの特徴
 ・感染症の観点からみた固形がん化学療法の特徴
 2.造血幹細胞移植時
 ・造血幹細胞移植後の感染症診療のポイント
 ・同種幹細胞移植のタイムライン
 ・自家幹細胞移植のタイムライン
 ・感染予防のための処方例(CMV)
 ・感染予防のための処方例(その他)
 ・感染臓器と微生物
 3.免疫抑制剤投与時
 ・免疫抑制剤の種類と免疫低下
 ・免疫抑制剤と原因微生物の関係
   (1) 糖質コルチコイド
   (2) アルキル化剤
(3) イムノフィリンに作用する薬剤
   (4) 代謝拮抗剤
   (5) TNF-α阻害薬
(6) ポリクローナル抗体
   (7) モノクローナル抗体
 4.放射線治療時
 ・正常組織の放射線感受性
 ・よくみられる急性障害
 ・よくみられる晩発障害
 5.外来化学療法・在宅医療時
 ・外来化学療法・在宅医療が普及してきた背景
 ・外来化学療法・在宅医療における感染症の特徴
 6.緩和ケア時
 ・進行がん患者に伴う発熱の原因
 ・緩和ケアにおける感染症診療のポイント
 7.周術期
 ・手術部位感染症(SSI)の定義
 ・SSIのリスクファクター,手術創の汚染度分類
 ・SSIの原因菌
 ・SSIの予防
 ・予防的抗菌薬と手術部位
 ・SSIの治療

第3章 がん患者における重要な感染症症候群のマネジメント
 1.敗血症
 2.中心静脈カテーテル関連血流感染症
 3.発熱性好中球減少症
 4.発熱性好中球減少症〜発熱が5日以上続く時の対応〜
 5.真菌感染症
 6.腫瘍熱

第4章 臓器・部位別の感染症診療のポイント
 1.中枢神経
 ・髄膜炎
 ・脳室シャント感染
 2.頭頸部
 3.呼吸器・胸部
 ・肺 炎
 ・膿 胸
 ・肺膿瘍
 4.腹部・消化器
 ・胆嚢炎
 ・胆管炎
 ・肝膿瘍
 ・特発性細菌性腹膜炎
 ・二次性腹膜炎
 ・下痢症
 5.泌尿器・尿路
 ・腎盂腎炎
 ・腎膿瘍・腎周囲膿瘍
 ・細菌性前立腺炎
 ・精巣上体炎
 6.婦人科関連感染症
 ・蜂窩織炎〜子宮摘出術後膣断端部〜
 ・術後骨盤内膿瘍
 ・敗血症性骨盤内静脈血栓症
 ・子宮留膿腫
 7.軟部組織
 ・膿痂疹,癤・癰
 ・丹 毒
 ・蜂窩織炎
 ・壊死性筋膜炎
 ・ガス壊疽
 8.筋・骨格系
 ・骨髄炎
 ・化膿性関節炎
 ・人工関節の関節炎

第5章 抗菌薬の投与方法
 1.経口抗菌薬の投与方法(成人)
 2.腎機能障害時の経口抗菌薬の投与方法
 3.静注抗菌薬の投与方法(成人)
 4-1.静注用バンコマイシンの初期投与量
 4-2.静注用アミノグリコシドの初期投与量
 5.腎機能障害時の静注抗菌薬の投与方法
 6.持続透析時の静注抗菌薬の投与方法
 7.抗菌薬と抗がん剤・免疫抑制剤の相互作用
 8.薬剤添付文書に記載されている併用禁忌・注意薬剤
  (抗がん剤・免疫抑制剤,抗菌薬)
 9.経口投与が不可能な患者に対しての投与方法一覧

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