書籍カテゴリー:小児科学

小児科医が知っておきたい 夜尿症のみかた
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小児科医が知っておきたい 夜尿症のみかた

1版

  • 関西医科大学小児科学講座教授 金子一成 著

定価:2,700円(本体2,500円+税8%)

  • B5判 122頁
  • 2018年4月 発行
  • ISBN978-4-525-28161-8

概要

夜尿症におけるプレシジョン・メディシンの決定版

夜尿症で悩んでいる親・こどもは多くいるが,適切な対応がされないと症状が改善せずやがては親子のストレスや日常・学校生活に支障がでる原因となる.しかし治療には個別の対応が重要であり様々な経験が求められる.本書は夜尿症診療に関する著者の30年の知識と経験をまとめた小児科医必見の一冊である.

序文

今から30年以上前,研修医生活を終えた私が初めて大学の小児科外来を担当した日の事です.10歳の夜尿症の男の子が母親に連れられて恥ずかしそうに診察室に入ってきました.母親の話では学校の成績も運動能力もクラスで一番なのに,夜尿があるため引っ込み思案なので何とか夜尿を治して欲しい,ということでした.そのお子さんに三環系抗うつ薬(トフラニール)を処方しました.4週間後に母親に話を聞いたところ,「まったくおねしょをしなくなりました! 先生,どんなお薬を出してくれたんですか?! 魔法みたいです! 本人も大喜びです.」と言われました.その言葉を聞いて私は小児科医としての喜びを感じるとともに,“三環系抗うつ薬で夜尿が治る理由”を科学的に説明してあげられなかったことを恥ずかしく感じました.当時は多くの診療マニュアルに「小児の夜尿症は良性疾患で,原因は不明だが発達の遅れによると考えられる.治療としては三環系抗うつ薬が大半の症例に有効.ただし,作用機序は不明」といったことが記載してありました.
その後,1990年代に入ってEvidence-based Medicine(EBM)の重要性が叫ばれ,多くの疾患に対して診療ガイドラインが作成されました.夜尿症の診療においても,「夜尿症の子どもには三環系抗うつ薬」という時代は終わり,赤司俊二先生(現・新都心こどもクリニック院長)や帆足英一先生(現・ほあしこどもクリニック院長)らによって診療が体系化されました.すなわち「夜尿症には蓄尿機能の未熟なために起こるタイプ,夜間睡眠中の多尿によって起こるタイプ,そしてその両者の要素を持つタイプがあり,治療はそれぞれのタイプに合わせて行うべきである」という診療方針です.これは病因も作用機序もわからないままに三環系抗うつ薬を処方していた1980年代と比較すると大きな進歩でした.
しかし一方で,診療の体系化によって私たち臨床医は10〜20%存在する治療抵抗例への対応を余儀なくされることになりました.このような治療抵抗例に対しては,いわゆるプレシジョン・メディシン(Precision Medicine)が必要です.プレシジョン・メディシンという言葉は2015年に当時のアメリカ合衆国大統領のオバマ氏が初めて用いた単語で,直訳は“精密医療”ですが意訳は“個別化医療”です.すなわち,患者の個人レベルで最適な治療方法を分析・選択し行うことです.夜尿症においても,原因となる背景因子は患者一人一人,異なります.具体的には夜間のタンパクや塩分・水分の摂取量,抗利尿ホルモン薬や抗コリン薬の薬効の個体差,夜間睡眠中の抗利尿ホルモン分泌量,膀胱機能の発達の個人差,患者や親の性格などです.夜尿症におけるプレシジョン・メディシンは,これらの要因を可能な限り探り出し,対処することですが,そのためには,豊富な経験と知識が重要です.診療経験が少ない先生でも夜尿症の小児にプレシジョン・メディシンを行って頂けるよう,本書には,著者の30年に亘る夜尿症診療の知識と経験を余すところなく紹介しました.本書が夜尿症の診療経験のある小児科医や泌尿器科医はもちろんのこと,これから診療してみようと考えておられる先生にとってもお役に立てば幸いです.

平成30年春
関西医科大学小児科学講座
金子 一成

目次

知っておきたい夜尿症の基本~概念,診察,治療~
 A.夜尿症の基本概念
  1)定義と疫学
  2)病態と病因
  3)分類
  4)自然経過
 B.夜尿症の診察
  1)夜尿症診療における病歴聴取
  2)夜尿症診療における身体診察
  3)夜尿症診療における検査
  4)夜尿症診療の際の患者と保護者への接し方
 C.夜尿症の治療
  1)生活指導
  2)生活指導以外の行動療法およびアドバイス
  3)薬物療法
  4)夜尿アラーム療法
  5)その他の特殊な治療

Case study ~診療のすすめかた~
 Case 1 小学校入学前の夜尿症児
 Case 2 抗利尿ホルモン療法が著効した小学校低学年児童
 Case 3 夜尿アラーム療法が著効した小学校高学年児童
 Case 4 夜尿アラーム療法と抗利尿ホルモン療法を併用した小学校高学年児童
 Case 5 非単一症候性夜尿症の小学校低学年児童
 Case 6 夜尿症で来院した注意欠如・多動性障害の小学校高学年児童
 Case 7 夜尿症に便秘を伴う小学校高学年児童
 Case 8 治療を中断した難治性夜尿症の小学校低学年児童

付録 夜尿症診療で役立つ資料

Column
 (1)夜尿症の子どもの覚醒障害
 (2)夜尿症の子どもの心理とメンタルヘルスに及ぼす影響
 (3)心理的な要因によっても夜尿は起こるのか?
 (4)夜尿症の子どもに肥満児は多いか?
 (5)夜尿症の子どもの親の気持ちと認識
 (6)抗利尿ホルモン製剤で頭が良くなる?
 (7)夜間覚醒させることの是非
 (8)夜尿症に対する補完代替医療
 (9)オムツの使用は是か非か?
 (10)抗利尿ホルモン薬の反応が悪い夜尿症の子どもで確認すべきこと
 (11)夜尿アラーム療法で起きない子どもを親が起こす必要があるのか?
 (12)話題の腸内細菌叢と夜尿症の関連はあるか?
 (13)難治性夜尿症の子どもに対する入院治療