2010年 1版
定価:6,090円(本体5,800円+税5%)
心腎連関で注目されるCKD(慢性腎臓病)を糖尿病・高血圧など内分泌代謝の立場でメタボリックシンドロームとの関係からとらえ直し,これらにかかわるADMA,HIF,VEGFなどの分子メカニズム,さらに臓器保護の観点でRA系阻害薬から,RAA系阻害薬,レニン阻害薬,MR拮抗薬など新しい薬物療法の可能性まで詳しく解説.
慢性腎臓病Chronic Kidney Disease(CKD)は21世紀に新たに姿を現した国民病である.それは日本国内のCKD患者が日本腎臓学会の統計によると1330万人と推計され,成人の8人に1人に相当するからである.CKDの概念は,2002年に米国のNKF(National Kidney Foundation)により提唱され,またたく間に普及し世界に広く知られるようになってきた.この背景には世界的な透析患者数の増加とそれに伴う医療費の増加が挙げられる.わが国において透析患者数は毎年1万人ずつ増加し,2008年末に28万人を超えた.さらに,新規透析導入の原因疾患のうち糖尿病性腎症は40%を超えており,高血圧に伴う腎硬化症も増加している.新たな国民病の最大の要因はライフスタイルの変化に伴うメタボリックシンドローム,糖尿病,高血圧,脂質異常症など生活習慣病の増加である.
さらに,CKDが注目されている背景には,心腎連関という言葉に代表されるようにCKDはこれまで考えられていた以上に心血管疾患の危険因子であることが明らかになってきた経緯がある.
そこで,CKDを改めてとらえ直し,CKDの概念・疫学・病態,高血圧・糖尿病・脂質異常症,糖尿病性腎症・高血圧性腎症などとあわせた代謝性疾患とのつながり,同じく心血管リスクであることが知られているメタボリックシンドロームとの深いかかわりなども含め,これまでに集積されてきた研究成果を整理し,新たな展望を得る機会とするために本書を企画した.各分野の専門の先生方に執筆をお願いしたところご快諾いただき,最新の内容を盛り込んでいただけた.この場をお借りして執筆者に厚く御礼を申し上げる.
本書を手にした読者が,患者数が増えつづけるCKDならびに糖尿病性腎症のリスクを改めて認識し,発症前の段階から予防管理の重要性に気づき,大きな意識改革がもたらされれば幸いである.まだまだ課題の多い日本国内のCKDに対して,国民の1/3の死亡原因となっている脳卒中・心筋梗塞などの心血管イベントを防ぐよう日本国内の医療が一丸となって取り組む契機となることを願っている.
2010年5月
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 腎・免疫・内分泌代謝内科学
槇野博史
第Ⅰ部 総 論
第1章 CKDとは -心血管内分泌の立場から- 槇野博史
1-1 CKD誕生の背景
1-2 CKDの概念
1. CKDの定義
2. CKDの意義
1-3 CKDハイリスク群
第Ⅱ部 病 態
第2章 腎硬化症 前田晃延 田村功一
2-1 病態生理
1. 良性腎硬化症の病態と診断
2. 悪性腎硬化症の病態と診断
3. 動脈硬化性腎動脈狭窄症の病態と診断
2-2 ?まとめ 18
第3章 糖尿病性腎症 古家大祐
3-1 糖尿病性腎症の疫学
3-2 糖尿病性腎症の発症機構
1. ポリオール経路の亢進
2. ヘキソサミン経路の亢進
3. プロテインキナーゼC(PKC)経路の活性化
4. 酸化ストレス
5. 終末糖化産物(AGE)
6. インスリン抵抗性
7. 炎 症
8. 基礎研究成果から臨床への展開
3-3 糖尿病性腎症の臨床
1. 糖尿病性腎症の診断
2. 早期腎症の診断
3. 顕性腎症の診断
4. 腎不全の診断
5. 慢性腎臓病を考慮した新たな腎症の病期分類
3-4 糖尿病性腎症の治療
1. 血糖コントロール
2. 血圧コントロール
3. レニン-アンジオテンシン(RA)系阻害薬
4. 集約的治療
5. 寛解を目指すには
3-5 ?糖尿病性腎症の管理のポイント
第4章 メタボリックシンドロームとCKD 和田 淳
4-1 わが国のメタボリックシンドロームの定義とCKD
4-2 メタボリックシンドロームに合併する腎障害の臨床像と組織像
1. 肥満関連腎症(ORG)
2. 糖尿病・高血圧に伴う腎障害
3. メタボリックシンドロームにおける腎障害の機序
4-3 メタボリックシンドロームにおける微量アルブミン尿の位置づけ
4-4 微量アルブミン尿の動脈硬化のマーカーとしての有望性
4-5 メタボリックシンドロームからみたCKD
4-6 メタボリックシンドロームに伴う腎障害の管理と治療
第5章 アルブミン尿と心血管病 柏原直樹 佐藤 稔 駒井則夫 佐々木環
5-1 微量アルブミン尿と蛋白尿の相違:量的な相違に留まらない
1. 蛋白尿は腎障害の原因であり,同時に腎障害の重症度を反映する
2. アルブミン尿は心血管病の危険因子である
5-2 微量アルブミン尿はなぜ心血管病の危険因子なのか
1. アルブミン尿出現に先行する病態:糸球体高血圧=過剰濾過
2. 内皮細胞障害・内皮機能障害とアルブミン尿
3. RA系活性化,インスリン抵抗性とアルブミン尿
4. 糸球体高血圧,内皮機能障害とアルブミン尿
第6章 AKI(急性腎障害) -定義・KDIGO分類からCKDへ- 野入英世
6-1 AKIの新たな定義への動向
6-2 KDIGO分類
6-3 ベースラインの血清クレアチニン値
6-4 AKIからCKDへ
第Ⅲ部 腎障害進展の分子メカニズム
第7章 血管新生の関与と治療応用 前島洋平 槇野博史
7-1 CKD進展における血管新生関連因子の機能的役割
1. VEGF
2. アンジオポエチン-1,2
3. アンジオスタチン
7-2 血管新生制御因子を用いたCKD治療アプローチ
1. テュームスタチン
2. エンドスタチン
3. NM-3
4. バソヒビン-1
5. CKDにおける血管新生抑制療法の課題
第8章 血行動態因子 伊藤貞嘉
8-1 腎臓の構造と機能
8-2 高血圧による腎障害
8-3 腎障害における血圧とレニン-アンジオテンシン系の関与
8-4 糸球体高血圧・過剰濾過
8-5 tubulo-vascular crosstalk
第9章 メタボリックシンドローム/酸化ストレス 長瀬美樹
9-1 アディポカイン異常とCKD
9-2 アディポネクチンと蛋白尿,足細胞障害
9-3 アルドステロン分泌刺激因子とアルドステロン依存性足細胞障害
9-4 低分子量G蛋白Rac1
9-5 メタボリックシンドロームと酸化ストレス
9-6 酸化ストレス総論
9-7 酸化ストレスと糸球体障害:その分子機序
第10章 CKDにおける高血圧とレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系 人見浩史 中野大介 西山 成 90
10-1 レニン,プロレニンと腎障害
10-2 アンジオテンシノーゲン(AGT)と腎障害
10-3 アンジオテンシンⅡ(AngⅡ)と腎障害
10-4 アルドステロンと腎障害
第11章 ナトリウム利尿ペプチド系 桒原孝成 向山政志 森 潔 笠原正登 中尾一和
11-1 Na利尿ペプチドファミリーの背景と歴史
11-2 心臓ホルモンとしてのANP,BNP
11-3 局所ホルモンとしてのCNP
11-4 Na利尿ペプチド受容体
11-5 Na利尿ペプチドの腎臓における生理作用
11-6 Na利尿ペプチドの病態的意義と腎作用
11-7 Na利尿ペプチドの慢性腎障害に対する保護作用
1. 5/6腎摘モデル
2. 腎炎モデル
3. ほかの慢性腎疾患モデル
11-8 Na利尿ペプチドの急性腎障害に対する保護作用
11-9 Na利尿ペプチドの新たな展開
1. 閉塞性動脈硬化症に対する効果
2. CNPの多彩な作用
3. メタボリックシンドロームにおける意義
第12章 心腎連関 北川正史 杉山 斉
12-1 心腎連関の概念,分類,疫学
1. CRSタイプ1(急性心腎症候群)
2. CRSタイプ2(慢性心腎症候群)
3. CRSタイプ3(急性腎心症候群)
4. CRSタイプ4(慢性腎心症候群)
5. CRSタイプ5(二次性心腎症候群)
12-2 ?CRS(cardio-renal syndrome)のメカニズム
1. CRSタイプ2(慢性心腎症候群)のメカニズム
2. CRSタイプ4(慢性腎心症候群)のメカニズム
第13章 肺腎連関 湯沢由紀夫
13-1 ミッドカイン
13-2 ミッドカインとレニン-アンジオテンシン系
13-3 CKDにおける高血圧とミッドカイン
13-4 慢性腎障害における新たな肺腎連関
第14章 脳腎連関 松本昌泰
14-1 脳卒中のインパクトとその動向
14-2 アテローム血栓症の概念と実態
14-3 脳と腎の関連
1. 解剖・循環生理の視点
2.基礎病態(RAA系,酸化ストレスと炎症)の視点
14-4 CKDと脳血管障害
1. 脳卒中発症予防とCKD
2. 脳卒中再発予防とCKD
第15章 ADMA 上田誠二 奥田誠也
15-1 血管内皮障害とCRS
15-2 血管内皮障害とNO-ADMA系
15-3 ADMAとその産生代謝
15-4 ADMA上昇のメカニズム
15-5 ADMAとCRS
1. 動脈硬化,CVDとADMA
2. 高血圧とADMA
3. 尿蛋白とADMA
15-6 腎障害進展因子としてのADMA
第16章 低酸素症とCKD進展の機序 -final common pathway- 山口純奈 南学正臣
16-1 CKDの進行と尿細管間質障害 -final common pathway-
16-2 腎臓が低酸素に陥る機序
16-3 CKDと慢性低酸素?in vivoでのエビデンス?
16-4 低酸素への細胞応答(in vitro)
16-5 低酸素とHIF
16-6 低酸素状態を標的としたCKD治療
1. RAA系阻害薬
2. 赤血球生成促進剤(ESA)
3. 尿細管間質毛細血管の保護
4. HIFを標的とした治療
第17章 CRAS 猪阪善隆 椿原美治
17-1 エリスロポエチン産生細胞
17-2 貧血とCKD
1. CKDに伴う貧血
2. 貧血によるCKD進展
17-3 貧血と慢性うっ血性心不全(CHF)
1. 貧血によるCHF
2. CHFに伴う貧血
17-4 CKDとCHF
1. CKDに伴うCHF
2. CHFに伴うCKD
第18章 腎間質線維化進展機序におけるfibrocyteの意義 坂井宣彦 和田隆志
18-1 fibrocyteの生物学的性状
18-2 腎間質線維化におけるfibrocyteの役割:動物モデル
1. 腎間質線維化病変におけるfibrocyteの同定
2. fibrocyteとケモカイン/ケモカイン受容体システム
3. fibrocyteとレニン?アンジオテンシン系
4. fibrocyteとTh1/Th2サイトカイン
18-3 ?腎間質線維化におけるfibrocyteの役割:ヒト腎疾患
第19章 BMPとその調節因子USAG-1が織りなす腎障害進展のメカニズム 柳田素子
19-3 BMPによる作用の差異は発現部位によって決まる?
19-4 腎障害とBMP調節分子
1. 腎臓で最も多いBMPアンタゴニストUSAG-1/wise/ectodin
2. 糖尿病性腎症とGremlin
3. 近位尿細管に発現するBMPモジュレーター:Chordin-like1
4. Crim1:糸球体に発現する膜結合型BMPアンタゴニスト
5. Follistatin:腎再生を促進するactivinアンタゴニスト
6. BMP促進因子:Kielin/chordin-like protein(KCP)とCv2
第Ⅳ部 臨床での進歩
第20章 RAS阻害薬は腎障害の進行を抑制するか?-大規模臨床試験より- 今井圓裕
20-1 高血圧性腎障害にRAS阻害薬は有効か?
20-2 正常血圧,蛋白尿陰性患者にはRAS阻害薬は他の降圧薬と差がない
20-3 尿蛋白減少は腎疾患治療の有効性の指標になるか
20-4 糖尿病性腎症
1. 血圧コントロール
2. RAS阻害薬の有効性を評価した臨床研究
20-5 非糖尿病性腎症
1. 大規模臨床試験
2. IgA腎症
20-6 心腎連関から見たRAS阻害薬の有効性
第21章 直接的レニン阻害薬 市原淳弘
21-1 レニン/プロレニンとレニン活性
21-2 レニン活性の臨床的意義
21-3 直接的レニン阻害薬によるレニン阻害
21-4 降圧効果とそのPRA依存性
21-5 腎保護効果
21-6 ACE阻害薬,ARBとの違い
21-7 DRIの安全性
21-8 受容体随伴プロレニン系を介した作用の可能性
第22章 尿中バイオマーカー 山本 格
22-1 尿の組成
22-2 腎臓病の尿バイオマーカー
22-3 腎臓病で期待される新しい尿バイオマーカー
22-4 新しい尿バイオマーカーの探索と問題
22-5 尿バイオマーカーをめぐる国内外の取り組み
和文索引
欧文索引