2010年 1版
定価:6,300円(本体6,000円+税5%)
JSH2009を徹底活用した高血圧診療ガイドの決定版.厳格な血圧管理とリスク層別化の考え方,糖尿病・CKDなど併存疾患との包括管理のEBMをふまえた新しい高血圧診療の実践ガイド.患者一人ひとりの病態に応じた食事療法・薬物療法から心筋梗塞・脳卒中のリスクモニタリング,4000万人の高血圧者をみる循環器・神経内科など他科専門医まで必携.
日本人の高血圧患者は 4,000万人にのぼるといわれ,現在も増加しています.その発症背景には,これまでの食塩摂取過剰に加えて,最近は,メタボリックシンドローム,肥満が関与することが広く知られ,平成 20年度(2008年度)から特定健診・特定保健指導制度が始まりました.2015年までには糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病を 25%減少することが目標としてかかげられ,このように日本国内での高血圧の対策は心血管疾患予防のうえで急務の課題となっています.
2009年春に改訂された「高血圧治療ガイドライン(JSH2009)」では,メタボリックシンドロームや CKDの概念を取り入れたリスク層別化がなされた明確な治療指針が示されました.心血管リスク管理については,エビデンスが集積されつつあり,高血圧患者ならびにリスクが重積した高血圧患者の厳格な血圧管理が求められてきています.
これらを踏まえて,大規模臨床試験によって集積されたデータとあわせて,EBMを広く実践していくことが重要となりますが,臨床の現場で,個々の症例にどのように適用していけばよいのか,具体的にわかりやすく解説された診療のための参考書・テキストはまだ十分とはいえません.また生活習慣改善の重要性の確認とあわせて,生活習慣改善→生活習慣改善+薬物治療併用(第 1選択薬→併用薬剤選択)など,患者の病態や状況に合わせたテーラーメイドの治療のポイントなどの情報も求められています.
本書では,高血圧専門医から循環器内科,腎臓内科,内分泌代謝内科,神経内科・外科など第一線で活躍される先生方に,それぞれの専門領域からの解説をお願いいたしました.患者数が 4,000万人を超え,さらに増加が予想される高血圧という国民病に対し,本書が新たな高血圧診療の実践の一助となることを心より願っています.
2010年 7月
札幌医科大学 学長
島本 和明
第Ⅰ部 高血圧における心血管リスク -疫学と病態-
1章 高血圧の疫学(高血圧合併症を含む) 上島 弘嗣
1 脳卒中・心筋梗塞の危険因子としての高血圧
2 種々の血圧指標と循環器疾患発症危険度との関係
3 リスク評価チャート
4 リスクの重積と循環器疾患死亡・社会的日常生活動作低下のリスク
5 高血圧者の推移と高血圧未治療者の実態
6 まとめ
2章 高血圧の病態 神出 計 楽木 宏実
1 血圧調節機序
2 本態性高血圧における 4つの昇圧機序
3 本態性高血圧における遺伝素因の関与
4 二次性高血圧
5 まとめ
3章 高血圧における糖尿病の心血管リスク 波多野 雅子 片山 茂裕
1 糖尿病患者における高血圧の頻度と予後
2 糖尿病患者における高血圧の成因
3 糖尿病患者における動脈硬化の成因
4 糖尿病患者における大血管障害・細小血管障害の頻度と高血圧のインパクト
5 まとめ
4章 高血圧における脂質異常症の心血管リスク 高橋 敦彦 久代 登志男
1 心血管危険因子の集積
2 脂質異常症合併高血圧の病態
3 脂質異常症合併高血圧の介入試験
4 まとめ
5章 高血圧における肥満・メタボリックシンドロームの心血管リスク 斎藤 重幸
1 肥満と心血管リスク
2 日本人の肥満の疫学
3 高血圧発症における肥満の意義
4 MetSにおける高血圧の心血管リスク
5 肥満・MetSに高血圧が合併した場合の予後
6章 高血圧と冠動脈疾患(CAD) 甲斐 久史 今泉 勉
1 わが国における冠動脈疾患の疫学
1)わが国の冠動脈疾患の疫学的特徴
2)冠動脈疾患発症率の経年的変化
3)高血圧と冠動脈疾患
2 冠動脈疾患の病態と高血圧
1)高血圧と冠動脈硬化
2)狭心症と高血圧
3)心筋梗塞と高血圧
3 まとめ
7章 高血圧と脳卒中 加藤 裕司 棚橋 紀夫
1 疫 学
1)高血圧と脳卒中発症リスク
2)高血圧と脳卒中再発リスク
3)降圧と脳卒中発症リスク
2 病 態
1)機能的変化 ―脳循環自動調節能の障害 ―
2)構造的変化―血管病変の進展―
3)レニン-アンジオテンシン(RA)系
3 まとめ
8章 高血圧におけるCKDのリスク 土肥 靖明 木村 玄次郎
1 高血圧診療における CKD ―臓器障害,危険因子―
2 CKD発症の機序
3 高血圧は腎機能障害を引き起こす
4 高血圧は腎機能障害を進展させる
5 高血圧とアルブミン尿
6 まとめ
9章 高血圧における高尿酸血症の心血管リスク 浜田 紀宏 久留 一郎 重政 千秋
1 尿酸沈着症と生活習慣病マーカーとしての血清尿酸値
2 高血圧に合併する高尿酸血症の血管障害の病態
3 高血圧患者における心血管リスクとしての高尿酸血症
4 高血圧患者における血清尿酸値は心血管リスクか生活習慣病マーカーか
第Ⅱ部 高血圧における心血管リスク -診断と検査-
1章 診断と検査:基本方針 柴田 洋孝 伊藤 裕
1 病 歴
2 診察(身体所見)
3 臨床検査(一般検査)
4 特殊検査
5 二次性高血圧の精査
2章 高血圧を評価する 診療時血圧とは 松浦 秀夫
1 血圧測定の歴史
2 診察室(医療環境下)血圧測定法
3 診察室(医療環境下)血圧測定の意義と限界
4 まとめ
3章 高血圧を評価する 家庭血圧の活用 小原 拓 今井 潤
1 ガイドラインにおける家庭血圧測定
2 家庭血圧測定から得られる情報
3 家庭血圧測定の付加価値
4 まとめ
4章 高血圧を評価する 24時間血圧の重要性 福冨 基城 苅尾 七臣
1 24時間平均血圧の評価
2 白衣高血圧の評価
3 仮面高血圧の評価
4 早朝高血圧の評価
5 夜間高血圧の評価
6 短期血圧変動性の評価
7 治療抵抗性高血圧の評価
8 prehypertensionの評価
9 まとめ
5章 二次性高血圧の診断 石光 俊彦
1 腎実質性高血圧
2 腎血管性高血圧
3 原発性アルドステロン症
4 褐色細胞腫
5 クッシング症候群
6 甲状腺機能亢進症
7 睡眠時無呼吸症候群
8 まとめ
6章 高血圧合併症としての冠動脈疾患(CAD)の診断 岩田 曜 小室 一成
1 患者の初期評価
1)患者リスク,胸部症状および理学所見の評価
2)高血圧患者における一般的検査
2 慢性冠動脈疾患
1)心筋虚血の評価
2)冠動脈形態の評価
3 急性冠症候群
4 冠攣縮性狭心症
7章 高血圧合併症としての脳血管疾患の診断 丸山 恵子 内山 真一郎
1 脳血管障害の診断
2 脳出血・くも膜下出血の診断
3 未破裂脳動脈瘤の診断
4 無症候性高血圧性微小脳出血
5 まとめ
8章 高血圧合併症としてのCKDの診断 角田 一男 伊藤 貞嘉
1 CKDと微量アルブミン尿
2 高血圧における CKDと CVDの直接的連関機序
3 CVDにおけるアルブミン尿の危険域値
4 今後の対策と展開
5 まとめ
9章 高血圧合併症としての閉塞性動脈硬化症(ASO)の診断 岡島 年也 河野 雄平
1 危険因子
2 疫学・予後
3 症 状
4 検査法・診断の手順
第Ⅲ部 高血圧ならびに高血圧合併症としての各種疾患の治療 -心血管疾患予防のための厳格血圧管理-
1章 治療方針 リスク層別化を含めて 大石 充 荻原 俊男
1 初診時の対応
2 リスクの層別化
3 治療対象と目標
4 治療法の実際
5 まとめ
2章 生活習慣改善 食事療法 河野 雄平
1 生活習慣修正と食事療法のガイドライン
2 食塩制限
3 野菜,果物およびミネラルの摂取
4 カロリー制限による減量
5 アルコール制限
6 コレステロール,飽和脂肪酸の制限と魚の摂取
7 食事療法の効果と限界
8 まとめ
3章 生活習慣改善 運動療法 太田 久宣 長谷部 直幸
1 運動療法の効果
2 運動療法の実際
3 運動時の一般的注意
4 まとめ
4章 生活習慣改善 禁煙 大木元 明義 岡山 英樹 檜垣 實男
1 タバコの有害性
2 高血圧と喫煙
3 ニコチンに対する心理的依存と身体的依存
4 非薬物療法(カウンセリング・行動療法)
5 薬物療法
6 タバコと相互作用のある降圧薬
7 まとめ
5章 降圧薬療法の進めかた 松岡 博昭
1 降圧薬治療による相対リスクの減少と絶対リスクの減少
2 第 1選択薬
3 併用薬
4 合 剤
5 まとめ
6章 副作用からみた降圧薬の選択上の注意 茂木 正樹 堀内 正嗣
1 副作用を考えた処方のポイント
2 各降圧薬の副作用
3 各合併症患者に対する副作用を考慮した降圧薬の選択
4 二次性高血圧患者(原疾患の鑑別が最優先だが,疑った際の薬剤選択)
5 まとめ
7章 高血圧合併症としての糖尿病の治療 高橋 友乃 小田原 雅人
1 高血圧合併症としての糖尿病の疫学
2 高血圧治療ガイドラインと糖尿病診療ガイドライン
3 糖尿病の治療 ―治療目標とコントロールの目安―
4 生活習慣の修正
5 糖尿病の薬物療法
6 まとめ
8章 高血圧合併症としての脂質異常症の治療 王子 剛 竹本 稔 横手 幸太郎
1 脂質異常症の診断
2 脂質異常症の治療
1)生活習慣の改善
2)薬物治療
3)LDLアフェレーシス
3 まとめ
9章 肥満・メタボリックシンドロームに伴う高血圧の治療 清水 亜紀 船橋 徹
1 メタボリックシンドロームとは
2 肥満・メタボリックシンドロームに伴う高血圧
3 肥満・メタボリックシンドロームに伴う高血圧の治療
4 薬物治療
10章 高血圧における心疾患の治療 古本 智夫 筒井 裕之
1 心不全
2 心肥大
3 心房細動(予防)
4 まとめ
11章 高血圧における冠動脈疾患(CAD)の治療 山田 浩之 松原 弘明
1 降圧による冠動脈疾患抑制のエビデンスと降圧目標値
2 降圧治療による拡張期血圧の低下と Jカーブ現象
3 冠動脈疾患の各病態における降圧薬の選択と降圧目標値
4 まとめ
12章 高血圧における脳血管疾患の治療 宝金 清博
1 脳血管疾患と高血圧
2 脳内出血と高血圧
3 脳動脈瘤と高血圧
4 脳梗塞と高血圧
5 脳梗塞慢性期の血圧管理
6 脳卒中の外科治療と高血圧治療
13章 高血圧におけるCKDの治療 柏原 直樹
1 CKDと高血圧
2 CKDにおける降圧目標
3 腎障害進行の共通機序
4 生活習慣の修正
5 CKDにおける降圧薬の選択
6 第2選択薬
7 その他の降圧薬:β遮断薬
8 まとめ
14章 高血圧合併症としての閉塞性動脈硬化症(ASO)の治療 岡島 年也 河野 雄平
1 禁 煙
2 薬物療法
3 人口炭酸泉足浴
4 運動療法
5 血行再建術(カテーテル治療,バイパス手術)
6 血管新生療法
7 まとめ
15章 高血圧における高尿酸血症の治療 齊藤 郁夫
1 高血圧の非薬物療法と血清尿酸
2 降圧薬治療と血清尿酸
3 高血圧に伴う高尿酸血症と腎機能
4 高血圧に伴う高尿酸血症と心血管イベント
5 高血圧に伴う高尿酸血症の治療
6 まとめ
第Ⅳ部 ライフステージ・ライフプランに応じた高血圧の心血管リスク管理
1章 高齢者高血圧 柴崎 誠一 島田 和幸
1 高血圧患者における 高齢者高血圧の割合
2 高齢者高血圧の特徴
3 高齢者高血圧の疫学
4 診 断
5 治 療
6 降圧薬治療の対象と降圧目標
7 生活習慣の修正
8 降圧薬の選択
9 薬物相互作用
2章 小児・若年者の高血圧 内山 聖
1 高血圧基準値
2 2つの基準値の妥当性と問題点
3 小児高血圧の診断
4 肥満と高血圧
5 母乳育児の効果
6 小児本態性高血圧の問題点
7 高血圧の管理
8 まとめ
3章 治療抵抗性高血圧 土橋 卓也
1 高血圧患者における降圧目標達成状況
2 治療抵抗性高血圧の実態と要因
3 治療抵抗性高血圧の対策
4 今後の課題
5 まとめ
4章 高血圧緊急症 崎間 敦 大屋 祐輔
1 高血圧緊急症および切迫症の定義と 分類および治療の原則
2 他科との連携・コンサルテーション
3 おもな高血圧緊急症および切迫症
1)高血圧性脳症 271
2)超急性期~急性期脳血管障害
3)肺水腫を伴う高血圧性急性左心不全
4)重症高血圧を伴う急性冠症候群
5)急性大動脈解離
6)褐色細胞腫クリーゼ
7)加速型―悪性高血圧
5章 妊娠高血圧 鈴木 洋通
1 正常妊娠では血圧はどう変動するか
2 妊娠に伴いどのようにして血圧上昇が起こるのか
3 妊娠高血圧症候群の定義
4 妊娠高血圧症候群はどのくらいあるのか
5 妊娠高血圧症候群に対する考えかた
6 実際の治療をどうするか
7 重症妊娠高血圧への対応
8 授乳について
9 妊娠高血圧症候群が女性の心血管疾患に与える影響
6章 高血圧専門医への紹介 梅村 敏
1 専門医への紹介が望ましい(必要な)症例
2 高血圧専門医への紹介の方法
3 わが国の専門医制度と日本高血圧学会認定専門医
4 まとめ
和文索引
欧文索引