書籍カテゴリー:産婦人科学|小児科学

もっとよくなるはず!新生児蘇生 5つの提案
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もっとよくなるはず!新生児蘇生 5つの提案

1版

  • 公益財団法人田附興風会医学研究所 北野病院小児科 水本 洋 著

定価:2,750円(本体2,500円+税10%)

  • B5判 83頁
  • 2021年6月 発行
  • ISBN978-4-525-23591-8

概要

もう一度、今の蘇生を見直してみませんか?

もう一度,今の蘇生を見直してみませんか?具体的な10のシナリオから,出生直後の赤ちゃんに必要な処置がみえてきます.
「3つの神器(心電図,CO2センサー,ラリンゲアルマスク)」で私たちの新生児蘇生は,もっとよくなるはず!【解説動画付き】

【解説動画はこちら】

序文

2020年10月,5年ぶりに新生児蘇生ガイドラインが改訂されました.2010年や2015年の改訂のときにはいくつか大きな変更点がありましたが,今回はどうでしょうか.

1.出生前ステップとしてブリーフィング(情報共有・役割分担)の表記が追加された.
2.胸骨圧迫時の酸素投与を忘れがちなので,表記が追加された.
3.薬物投与の中でもアドレナリンが優先されるため,独立ステップとして表記された.
4.安定化の流れに入る条件について,努力呼吸とチアノーゼを「共に認める場合」ではなく,「どちらかを認める場合」に変更された.一方で,CPAP や酸素投与による介入開始の条件としては「SpO2モニターを装着し必要時」と明記された.
5.肉眼的なチアノーゼの評価よりもSpO2モニターの値で酸素化不良を評価するべく,表記が追加された.
6.CPAPまたは酸素投与を開始した後の行動として,努力呼吸やチアノーゼに「改善傾向なし」の場合,従来は人工呼吸開始とされていたが,「原因検索を行いながら対応を検討」に変更された.
7.努力呼吸やチアノーゼが続く場合の対応について,具体的な表記が追加された.

1〜3は救命の流れにおいて推奨される行動がアルゴリズムにも反映されました.4〜7は安定化の流れにおける行動ですが,「チアノーゼのみ,努力呼吸のみの場合でも安心してはいけません」など,若干の変更がありました.ただ,「遅延なき有効な人工呼吸が最重要」という基本的なコンセプトは同じです.

その新生児蘇生に何が足りないのか?
次のシナリオをご覧ください.

妊娠40週,赤ちゃんの推定体重は3,000 g.胎児遷延性徐脈のため緊急帝王切開となりました.最初は看護師1名が蘇生を担当し,のちに医師が駆け付けました.
0:00 女児が出生.筋緊張は低下し,呼吸もしていません.
0:30 口と鼻を吸引しても,羊水を拭き取って背中を刺激しても・・・赤ちゃんは無反応です.
1:00 何回か人工呼吸をしてみましたが,反応せず,赤ちゃんは真っ黒でぐったりしたままです.(私には無理だわ!)「先生! 早く赤ちゃんのほうに来てください!」右手にSpO2モニターを装着してみましたが・・・数値は表示されません.
1:30 医師が到着しました.「胸骨圧迫を開始して! もう挿管しよう!」.
3:00 3 回目の気管挿管がようやく成功したようです.看護師は必死に胸骨圧迫を続けました.心拍は聴診できず,SpO2モニターも表示していません.
3:30 「次は・・・次はアドレナリンを気管内に投与!

懸命の蘇生は続きました.
この新生児に対する蘇生は有効といえるでしょうか.
皆さんの施設で明日このような場面に遭遇したら,どんなふうに対応されるでしょうか.

成人や小児の蘇生と,出生直後の新生児の蘇生を比べると,決定的に違う点があります.それは「直前までお母さんのお腹の中にいた」ということです.水浸しの肺を空気で置き換えて肺呼吸が開始されない限り,子宮外環境で生きてゆくことはできません.これは水中生活から陸上生活に進化するほど,とてつもなく大きな変化です.
シナリオの医師のように「少しでも早く脳に血液を届けなければ,後遺症が心配だ」と考えることはわかります.それでも水浸しの肺のまま胸骨圧迫や薬物投与をすることは,水中で蘇生をしているのと同じことです.陸に上げなければ絶対に助かりません.

「新生児蘇生では人工呼吸が最も重要である」.この言葉の意味を深く掘り下げてみましょう.人工呼吸は開始するだけではなく,成功させなければ意味がありません.そして実際の赤ちゃんに対する人工呼吸は,人形で練習するほど簡単とは限りません.
緊迫した場面で行う人工呼吸が成功していることを,どうやって確認していますか? 胸の上がり? でも出生直後の人工呼吸において,胸の上がりはわかりにくいです.
人工呼吸が成功していなければ,どうやって成功させますか? 気管挿管? 気管挿管は最も確実な気道確保の手段ですが,常に食道挿管や片肺挿管のリスクと隣り合わせです.気管挿管が確実に成功するならば誰も悩みません.そんな成功するかどうかわからない気管挿管を,何度も何度も試みて,何十秒も貴重な時間が過ぎてしまう….本当にそれしか方法はないのでしょうか?
著者は本書を通じて「3つの器具」の素晴らしさを伝えたいと思います.お産を扱うすべての施設にこれらの器具が普及し,本書を読んでいただいた皆さん一人ひとりの意識が変わり,定期的にシミュレーション実習が開催されるようになれば…,私たちの新生児蘇生はもっとよくなるはずだと信じています.
本書の編集・校正にあたって,たくさんの助言をくださった南山堂の高見沢恵さんに感謝申し上げます.高見沢さんとは2014年夏に開催された学会でお声がけをいただいて以来のお付き合いです.表現することの愉しみと貴重な情報発信の機会をいただきありがとうございます.

2021年6月
水本 洋

目次

私たちの新生児蘇生はもっとよくなるはず 5つの提案
提案その1 出生直後だからこそ,“蘇生”と“支援”の2つの要素が重要です
・出生が特別なタイミングである理由
・人工呼吸を待ってはいけない理由
・出生直後だからこそ必要な“支援”
・“支援”の5つのレベル
・“支援”が不十分ならば,出生後に低酸素症が進行する
・“支援”と“蘇生”を同時に考えることで,必要な処置がみえてくる
 シナリオ1 緊急帝王切開で出生した正期産女児
 シナリオ2 緊急帝王切開で出生した正期産女児
 シナリオ3 早産時の出産立会いで気合い満点の研修医
 シナリオ4 何度も心音が低下し,羊水混濁を認め,吸引分娩で出生した正期産児
 シナリオ5 何度も心音が低下し,羊水混濁を認め,吸引分娩で出生した正期産児
 シナリオ6 すぐに元気に泣いたのに・・・
 シナリオ7 すぐに元気に泣いたのに・・・
 シナリオ8 万全の準備が必要な“特殊対応”
 シナリオ9 数年に1回遭遇するかもしれない“本当の”重症仮死
 シナリオ10 昨日産まれた赤ちゃんの急変対応
・蘇生担当者(チーム)はまず人工呼吸を早く成功させることだけを考える
・実際に人工呼吸だけでかなりの赤ちゃんが助けられている
・逆に人工呼吸が不十分ならば赤ちゃんの予後は悪くなる

提案その2 人形で成功しても,実際の赤ちゃんで成功しない理由を考えてみましょう
・気道確保が一番難しい
・吸引に時間をかけすぎないこと─少量の分泌物はバッグ・マスク換気を妨げない
・下顎挙上を意識する
・気道確保が非常に困難な赤ちゃんがいます
・肺水が吸収される過程には3つのステップがある
・出生直後の赤ちゃんに対してバッグ・マスク換気を行う際も3つのステップを意識する
・3つのステップによって最適な吸気圧・吸気時間が変化する
・蘇生人形を使用した実習と実際の人工呼吸の違いを知っておきましょう

提案その3 あなたの人工呼吸を成功に導く2人の名コーチは側にいますよ
★物語:ある満月の夜
・赤ちゃんが生まれる直前にまず確認すること
・初期処置はあくまでも本番(人工呼吸)に向けた準備体操!
★物語の続き:北野さんの妄想と覚悟の瞬間
・人工呼吸を速やかに開始したら,次はその成功を全力で確認する
★物語の続き:北野さんの妄想は続く.「側に2人がいてコーチしてくれたら・・・」
・人工呼吸開始後は心拍数の変化に注目!
・名コーチはあなたの側にいますよ!
・心電図は蘇生において最も重要な情報を正確に,迅速に,連続的に教えてくれる
・注意!心電図にも弱点がある
・CO2センサーは人工呼吸の成功を素早く示してくれる
・CO2センサーは人工呼吸が成功し続けていることを絶えず示してくれる
・注意!換気が成功していてもCO2センサーが反応しない場合がある
★物語の続き:妄想しながらもしっかり蘇生を行う実際の北野さん

提案その4 奥義秘伝「1,2,ラリマ」ラリンゲアルマスクをすべての施設に常備してほしい!
★物語:満月の夜再び
・胸骨圧迫に進む前に「必ず」確認しなきゃ!!
・人工呼吸が不成功の場合にチェックする3つのポイント
・1人でダメならば2人でやりましょう
・両手法はCPAPのレベルをアップさせる
・気管挿管は最も確実かつ最もリスクの高い手技?
・もう貴方の施設にラリンゲアルマスクはありますか?
・古典的なLМの基本構造と挿入時の様子
・LМの利点はめちゃくちゃ多い…もう常備しない理由が見当たらない!
・うまい話ばかりではない?LМの欠点も知っておきましょう
・LM使用における注意点とトラブルシューティング
★物語:満月の夜再びの続き(今度は妄想ではなく現実!)

提案その5 今日,蘇生してから帰らない?インストラクターがいなくても,シミュレーション実習はできるんです
★物語:ブルームーン
・胸骨圧迫に進む前にLМ使用を検討してください
・重症仮死のときこそ心電図が活躍しますが,PEAに注意
・重症仮死のときこそCO2センサーが活躍します
・重症新生児仮死の蘇生においてこそ,施設の実力が問われます
・シミュレーションのススメ まずは“台本通り”からはじめてみましょう
・「進行係」が加わるだけで高度なシミュレーション実習に
・チェックシート
・遠隔シナリオ演習と telemedicine(遠隔診療支援)


Column
・低酸素症と低酸素血症
・20週台の早産児でも挿管が必要ないことがある?
・羊水混濁がある場合の立会いは,“支援”も“蘇生”も必要になる確率が上がる
・CPAPから人工呼吸に進むタイミング
・羊水混濁がある場合の気管吸引
・Sustained Inflation
・人形の胸を上がりにくくしてみましょう
・濡れたリネン
・人工呼吸だけで回復する赤ちゃんは 15 秒で結果がわかる?
・心電図が赤ちゃんの予後を改善する?
・上級者のCO2センサーの使い方
・Sustained Inflation と胸骨圧迫の組み合わせ
・Primary airway としてのLМ使用
・簡単ですが緊張感を持って練習を!
・LMを介した気管内挿管
・LМの歴史:もはや導入することが当たり前の時代