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カテゴリー: 神経学/脳神経外科学  |  検査・診断学

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神経診察の極意

1版

金沢医科大学 名誉教授 廣瀬源二郎 著

定価

2,970(本体 2,700円 +税10%)


  • B6変型判  164頁
  • 2018年4月 発行
  • ISBN 978-4-525-21231-5

オールカラーでわかる!廣瀬神経学の神髄!

本書はポケットサイズでありながら,神経診察の理解において重要な神経徴候と神経解剖の知識と相関がわかる書籍となっている.筆者の豊富な経験・知識・知見を盛り込み,これから神経を診る医師に最適な内容になっている.特に本文中に散りばめられた「極意」コーナーは著者でしか語ることが出来ない内容となっており,必見である.

  • 推薦のことば
  • 序文
  • 目次
推薦のことば
 私は1976年(昭和51年)から自治医科大学神経内科で臨床研修を受ける機会に恵まれた.当時の自治医大では毎週のように,米国でレジデントを経験された水野美邦先生,清水夏絵先生が神経学的診察法を繰り返しデモしてくださり,新入院が10人あれば10回,研修医・医学生はあたかもビデオを何度もみるように,米国式の系統的な診察法と局在診断の考え方を目の当たりにしながら学ぶことができた.研修医や医学生が神経学的診察の技法を身につける上で,こうした方法は極めて有効であったが,教職につく時代になると,患者さんから「たくさんの人の前に引き出されて,モルモットにされた」というクレームを受けることがあり,このようなやり方は難しくなった.爾来,神経学的診察の技法を次世代にどのように伝えるのがベストの方法か,ずっと模索することとなった.
 神経学会の専門医試験で実技の試問を担当すると,神経学的診察法の習得が不十分な受験生の多いことがすぐに実感された.また,症例サマリーを査読すると,診察に続いて画像検査をした上で神経学的局在診断に入るものが多くあり,神経学的診察の結果から局在診断を考察し,病変部位を想定した上で画像検査に進むという神経学的診断法の基本的な考え方が,現場ではもはや守られなくなっているように感じられた.
 こうした状況に危機感を覚え,MDSJ(日本パーキンソン病・運動障害疾患学会)恒例のビデオカンファレンスで鋭いご意見を述べてこられた廣瀬源二郎先生に,この数年お目にかかる度に,「先生の神経学的診察法をぜひ書物として書き残していただきたい」とお願いしてきた.なかなか前向きのお返事をいただけなかったが,この度,廣瀬神経学の神髄を平易に書き下ろされた書籍が刊行されることになった.一読すれば,廣瀬先生がどのように病変の局在を考えながら神経学的診察を進めていくのか,鑑別が必要な時はどのような所見を確かめて判断を下すのか,が分かり易く明示されており,神経学的局在診断の道筋を,先生に直接指導していただいているように学ぶことができる.
 本書は随所に廣瀬神経学の特色が溢れている.枚挙に暇はないが,赤ガラス試験,眼振とその検査法・解釈,不随意運動,小脳における機能局在,false localizing signs,筋強剛の増強法など,類書にはみられない詳しい解説がなされている.また「一口メモ」や「極意」に取り上げられた項目は,いずれもポイントが簡潔にまとめられている.一方,わが国でよく用いられてきた上肢Barre徴候やMann試験などの用語の是非についても,オリジナル文献に遡って適切な解説がある.
 本書は,これから神経内科専門医試験を受験する際に,神経学的診察法についての知識を改めて整理するのに極めて有用である.臨床神経学のもう一歩先の地平を目指す次世代の皆さんに,本書を強く推薦する.

2018年1 月
新潟大学名誉教授
西澤正豊
序文
 内科学的患者の診察で神経学的検査について論ぜられるようになったのは1800年代後半のこととされ,それ以前の医学ではもっぱら観察による診断がされていたのはJames Parkinsonが1817 年に書いた小冊子“An essay on the shaking palsy”のパーキンソン病患者の臨床記載からも明らかである.すなわち患者の手,足を触り,動かし,反射などをみる身体検査法physical examinationは1870?80 年頃に始まった.1888年に英国で出版されたGowers の有名な神経学教科書“A Manual ofDiseases of the Nervous System”では症候学の中で症候の検査法として,筋力muscular strength,協調運動coordination,知覚sensory perception,トーヌスtone,振戦tremor,反射reflexes,個々の筋の作用actions of individual musclesがあげられている. 現代神経学の創始者といわれるJean-Martin Charcot 率いるフランス神経学では臨床徴候と解剖・病理との相関“Methode anatomo-clinique”の優れた研究で神経学の創設者的方向が示され,個々の症候の検査法は詳しく報告されているが,系統的な神経学的検査法は残されていない.米国ではフィラデルフィアの神経学者Millsが1898 年に発行した教科書“The Nervous System and its Diseases”の中で神経症候学と検査法について初めて記載している.これらの神経症候に伴う検査法が体系的,系統的に確立したのは1900年に入ってからの英・仏・米の神経学者による多くの業績からであり,1946年にGordon Holmesが発刊した“Introduction to Clinical Neurology”の巻末付記に神経系機能の臨床検査のスキームとして,特殊感覚,脳神経系,運動系,反射,知覚,膀胱・直腸,性的機能の聴取,意識状態および言語をあげて以来,現在我々が一般的に行う神経系の系統的検査法が確立したといわれている.
 この手引きは医学部5・6年生および研修医に標準的な神経学的検査法を学んでもらう目的で書かれたものである.筆者は日本の医学部を卒業したが,医学教育で神経学的検査なるものを教えられたことはなかった.立川米国空軍病院でのインターンと内科レジデントのトレーニングで,当時米国での3年間の神経学レジデント修練を終えたばかりの医師達の行う内科学的検査,および神経学的検査の実際を目の当たりにして感激して,その手法に見入ったものである.2 年間の研修後筆者も神経科医を生涯の仕事と決め,米国での神経学レジデントおよび臨床研究員(clinical fellow)のキャリアを積み,筆者なりの神経学的検査法を確立した.あくまでも全身身体検査の一部となる神経学的検査ではあるが,詳細で正確な病歴聴取と患者を体系的,系統的にみることで神経疾患の正しい診断ができる神経学的診断法である.Sir Henry Head は神経学の魅力は神経系の構築と機能の原理を日々引き出して,患者に当てはめて科学的に考えることにあると説いたが,これこそ筆者のモットーでもある.

一口メモ
 Sir Henry Head(1861-1940)は体性感覚系研究のパイオニアである.彼の残した言葉をここにあげる.
“The charm of neurology, above all other branches ofpractical medicine, lies in the way it forces us into daily contact with principles. A knowledge of the structure andfunctions of the nervous system is necessary to explain the simplest phenomena of disease, and this can be only attainedby thinking scientifically.”

2018年1 月
廣瀬源二郎


目次
第一章 病 歴
 1 正しい病歴のとり方
 2 2種類の病歴のとり方
   A 時系列順の病歴
   B 病因を考える病歴
 3 システムレビューの重要性

第二章 神経学的検査法
 1 精神状態のみかた
    1.意識レベルのみかた
    2.見当識
    3.記 憶
    4.言 語
    5.失 認
    6.失 行
 2 脳神経系のみかた
  1 第1脳神経:嗅神経(特殊感覚性脳神経)
   A 基礎知識
   B 検査法
  2 第2脳神経:視神経
   A 基礎知識
   B 検査法
    1.視力検査
    2.視野検査
    3.眼底検査
  3 第3脳神経:動眼神経・第4脳神経:滑車神経・第6脳神経:外転神経
   A 基礎知識
   B 検査法
    1.瞳孔検査
    2.外眼筋運動検査
  4 第5脳神経:三叉神経
   A 基礎知識
   B 検査法
    1.顔面の温痛覚,触覚
    2.角膜反射
    3.三叉神経第三枝運動枝の検査
    4.頤反射
  5 第7脳神経:顔面神経
   A 基礎知識
   B 検査法
    1.顔面運動検査
    2.味覚検査
  6 第8脳神経:内耳神経
   A 基礎知識
   B 検査法
    1.聴覚検査法
    2.平衡感覚検査法
  7 第9脳神経:舌咽神経および第10脳神経:迷走神経
   A 基礎知識
   B 検査法
    1.軟口蓋・咽頭検査
    2.嘔吐反射(咽頭反射)
    3.喉頭検査
  8 第11脳神経:副神経
   A 基礎知識
   B 検査法
    1.僧帽筋検査
    2.胸鎖乳突筋検査
  9 第12脳神経:舌下神経
   A 基礎知識
   B 検査法
 3 運動系のみかた
   A 基礎知識
   B 検査法
    1.視 診
    2.触・打診
    3.筋トーヌス検査
    4.機能的検査
    5.徒手筋力検査
    6.不随意運動のみかた
 4 深部腱反射のみかた
   A 基礎知識
   B 検査法
    1.頤反射(反射弓:三叉神経下顎枝)
    2.上腕二頭筋反射(反射弓:C5-6)
    3.上腕三頭筋反射(反射弓:C7-8)
    4.腕橈骨筋反射(反射弓:C5-6)
    5.指屈曲反射(反射弓:C9-T1)
    6.膝蓋腱反射(反射弓:L3-4)
    7.くるぶし反射(反射弓:S1-2)
 5 表在反射のみかた
   A 基礎知識
   B 検査法
    1.腹部皮膚反射(反射弓:T5-T12)
    2.挙睾筋反射(反射弓:L1-L2)
 6 病的反射のみかた
  1 Babinski徴候(反射)
    1.Babinski手技(Babinski JJFF:1857-1932)
    2.Chaddock手技(Chaddock CG:1861-1936)
    3.Oppenheim手技(Oppenheim H:1858-1919)
    4.Gordon手技(Gordon A:1874-1953)
  2 Marie-Foix屈筋退避反射
   A 基礎知識
   B 検査法
  3 手掌頤反射
   A 基礎知識
   B 検査法
  4 眉間反射
   A 基礎知識
   B 検査法
  5 把握反射
   A 基礎知識
   B 検査法
 7 感覚系のみかた
   A 基礎知識
   B 検査法
    1.温痛覚試験
    2.触覚試験
    3.深部感覚検査;位置覚試験
    4.深部感覚検査;振動覚試験
    5.複合感覚;2 点識別覚試験
    6.複合感覚;皮膚書字覚試験
    7.複合感覚;立体認知試験
    8.複合感覚;重量認知試験
    9.複合感覚;両側同時刺激試験
 8 協調運動のみかた
   A 基礎知識
   B 小脳協調運動検査法
    1.鼻指鼻試験
    2.指鼻試験
    3.手首回内・回外試験,膝叩き試験
    4.踵膝試験(踵脛試験)
    5.立位・歩行試験(継ぎ足歩行試験,Romberg 試験,tandem Romberg試験)
    6.手首回内・回外試験
    7.Holmes-Stewart 試験
 9 姿勢と歩行のみかた
   A 基礎知識
   B 検査法
    1.立位・歩行試験
    2.継ぎ足歩行試験
    3.片足立ち試験
 10 極意:『昏睡患者の神経診察』
  1 昏睡患者への救急対応
   A 局在症状の有無からみた原因疾患の鑑別
   B 肢位からみた病巣診断
   C 片麻痺と共同偏視方向の関係からみた病巣診断
   D 呼吸パターンからみた病巣診断
   E 瞳孔変化からみた局在診断
   F 人形の目試験とカロリック試験からみた局在診断

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