2009年 1版
定価:2,310円(本体2,200円+税5%)
在宅医療の最前線に立ってはや10年になる著者が,実践で重要な観点や手法を実用的な形にまとめた.これから在宅医療に取り組む医師はもちろん,すでに関わっている医師にもその醍醐味を再認識できる一冊.
手技,疾患・病態,マインドなど在宅医療に取り組もうとする時,切実に知りたいテーマを取り上げていく実践書シリーズの第1弾.
私は親しい友人二人(前田浩利,川越正平)と千葉県松戸市に,あおぞら診療所を開設し,十年の歳月を迎えた.私たちはプライマリ・ケア全般に深い関心を持ってきたが,おびただしい在宅医療のニーズに応えているうちに,いつのまにか在宅医療の専門家と言われるようになってしまった.
私たちはこの十年で1700 名の在宅患者さんを診療させていただき,実に多くのものを教えて頂いた.そのエッセンスを本書に記載しようと試みた.もとより,臨床家は目の前にある現実への対応が本業であり,「一瞬一瞬消えていく自らの行為」に情熱を注ぐものである.優れた臨床家は,その瞬間に力を尽くすことに関心があり,それを書いたり残したりすることに興味を持たないことが多い.なぜなら,紙の上に残されたものは形骸に過ぎないからである.
そのような大きな制約はあるものの,在宅医療を実施するにおいて,重要な観点や手法を,私なりに実用的な形で言語化して読者の方々に伝えたいと思って書いてみた.私の能力の乏しさから,紙面に尽くしえたことは多くはないが,読者の方がわずかでも私たちの経験からヒントをえることがあれば幸いであると思う.
また,この書を読んだ諸賢のご批判をぜひ賜りたいと思う.
序論 現代の在宅医療
旧来の「往診」による在宅医療と「現代の在宅医療」
第1章 在宅医療の導入
1. 初診の患者さんに往診を行うべきか
2. 往診導入面接
3. 医療に関してネガティブな印象を持っている患者さんに対して
4. 訪問時の一般的な留意点
5. 初回訪問時の対応
6. 導入初期の臨時往診や臨時訪問看護
第2章 診 察
1. 必要な診療機器
2. 問診と家族からの病状聴取
3. 身体所見
4. その他の身体所見
5. 複数医師による診察
第3章 検 査
1. 在宅医療でどのような検査をするか
2. 導入時の情報取得と定期的な検査
3. 急性疾患への対応と自宅で可能な検査
4. 在宅医療における設備や病診連携の考え方
第4章 家族のエンパワメント
1. 在宅医療を取り巻く環境と家族の境遇について
2. 家族の方法論を学ぶこと
3. 家族の構造変化を知る
4. 家族には歴史がある
第5章 緩和ケア
1. 「バーチャルな告知」の現実
2. せめぎあいとの対面
3. 人間関係の中で死のあり方を選択していくこと
4. 自己決定はしばしば社会的なものである
5.家族への対応
6. 独居者の在宅医療
7. 在宅医療ではがんがあまり痛くないかもしれない話
8. 非がん患者の緩和ケア
9. 在宅緩和ケアにあたっての私たちの価値観について
第6章 24時間対応
1. 24時間対応は日中の診療内容と不可分である
2. あおぞら診療所の医師の夜間呼び出しの実態について
3. 電話を受ける手法
第7章 訪問看護師との連携
1. 訪問看護ステーション制度
2. 訪問看護の適応
3. 「医療機関から行う訪問看護」と「訪問看護ステーションから行う訪問看護」
4. 医療サポートとケア全体の構築を訪問看護師に期待する
5. 本人と家族の支援
6. 24時間対応
7. 訪問看護ステーションとの情報交換
8. 医療処置などについて
9. 訪問看護ステーションの選定
第8章 薬局連携と処方
1. あおぞら診療所が行う面分業
2. 在宅医療における薬物療法の技術特性
3. 訪問薬剤指導
4. 在宅医療における投薬知識
5. デッドストックへの配慮
6. ホームヘルパーによる服薬介助
第9章 歯科連携
1. 在宅生活の基本的条件としての「食べること」
2. 歯科適応について
3. 歯科医師にどのような情報を提供するか
第10章 社会資源活用
1. 介護支援専門員(ケアマネジャー)との連携
2. 地域包括支援センター
3. 老人介護支援センターとは
4. 障害者福祉制度の活用
5. 生活保護制度
6. 成年後見人制度
7. 長期生活支援資金貸付制度
8. 生命保険と住宅ローンについて
第11章 居宅虐待への対応
1. 虐待の定義を知る
2. 居宅での虐待のパターン認識と対応
3. 多職種連携の重要性
4. 具体的な支援について
第12章 後継者を養成する
1. 学生実習
2. 臨床研修
付録 在宅医療導入時の面談フォーマット
索 引