書籍カテゴリー:地域医療|臨床看護学

在宅復帰支援
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在宅復帰支援
思いのほか自宅に帰れます

1版

  • 和田忠志 編

定価:3,240円(本体3,000円+税8%)

  • A5判 214頁
  • 2018年4月 発行
  • ISBN978-4-525-20751-9

概要

在宅復帰率アップ↑を目指す病院の皆さま,必携の書籍です!

患者を退院させていくことは,病院にとって喫緊の課題である.そのためには在宅医療との連携が必要だが,実践にあたってとまどいを感じる連携担当者も多い.本書は,連携の意義,帰れる患者さんの見出し方,病棟の特徴を踏まえた連携方法,各職種の役割,先進的な取り組みなどを示した病院スタッフ向けの在宅医療連携の教科書である.

序文

―推薦の言葉―

 
 「はじめまして,おうちに帰ることをお手伝いする看護師です!」
 2002年,「退院支援」なんて言葉もまだなかった時代,それまで院内で孤軍奮闘していた医療ソーシャルワーカー(MSW)と一緒に,病棟から「退院困難患者」として支援依頼が入る患者・家族に,こんなあいさつをしていた.
 「えっ,帰れるの?」と笑顔になる患者,「大丈夫でしょうか?」と不安いっぱいの家族.専門医と,大学病院の経験しかない看護師たちと,「治癒できない病気・生きづらさに折り合いをつけながら,どんな暮らしを送ることができるのか,患者にとってのこれからの人生を再構築するのが退院支援だ」という共通認識をもち,チームカンファレンスや,病状の説明場面からの同席といったさまざまな方法で,「在宅移行支援」に取り組み始めた.
 今では,診療報酬の後押しも大きく,退院支援に取り組んでいない病院はないと言っていい.しかし,「誰のための退院調整?報酬請求が目的になってない?」と嘆く声も聞こえてくる.これでは,なるべく,望む暮らしの場で安心して豊かに生き続けること(aging in place)にはつながらない.在宅療養移行は,患者・家族を真ん中に,病院医療者と,受け手側の在宅医療やケアチームとが,連携そして協働して取り組めているかが,カギであると考えている.
 この書籍では,早期から実践されてこられた病院のさまざまな在宅復帰をサポートするための取り組みが紹介されている.病院だけではなく医師会や地域支援者と共に,ICT(情報通信技術)も含め,地域みんなで行う在宅復帰支援への取り組みになっていることが意味深い.退院直後の不安定な時期に,集中的に医療や看護が提供されることで安定在宅着地を目指す支援や,在宅療養をバックアップする入院支援という形についても紹介されている.
 皆さんの病院,そして地域全体で,できていること,課題は何ですか?
 2018年4月から「在宅医療・介護連携推進事業」が全国市区町村で稼働する.市町村が音頭をとりながら,在宅療養移行支援が,患者さんの笑顔につながるよう取り組んでいただきたい.

在宅ケア移行支援研究所 宇都宮宏子オフィス代表 宇都宮宏子 



―はじめに―

 本書は,病院スタッフのための在宅医療連携の書である.
 現在,在宅医療は,官民あげて推進されている.これまでの在宅医療推進は,とりわけ,在宅医療従事者に着目して行われてきた.しかし,在宅患者の多くは「病院」において発生する.
 そして,患者が自宅に帰れるかどうかは,「病院のスタッフが在宅療養を想定して退院支援をするかどうか」にかかっている.病院スタッフが,在宅療養可能な患者を適切に見出し,在宅医療に円滑につなげてくれることで,それは実現する.
 平均在院日数の短縮要請や,在宅復帰率などの診療報酬上の新たな制約に応えるべく,病院連携担当者は日々,努力を重ねていると思う.しかし,在宅医療は病院スタッフからは遠い存在であり,在宅医療連携にとまどいを感じる医師や連携担当者は少なくないと思う.本書は,そのとまどいに,一つの指針を与えると思う.本書では,高い理念をもち,豊富な在宅医療連携の経験のある病院スタッフの方々に執筆をお願いし,実践的立場から退院支援をリアルに記載している.
また,患者に在宅医療が開始されてからは,病院には「在宅医療を支援する機能」も期待される.在宅医療は,病院との連携によって,より力を発揮する特性をもつ.病院の意識的な取り組みにより,在宅医療は豊かな内容となり力強く推進される.これからの在宅医療の課題は,在宅医療現場の課題とともに,病院医療従事者の課題でもある.
 本書は,入院治療に携わる医師,医療ソーシャルワーカー(MSW),連携担当看護師の方々の「在宅医療連携の苦悩」に応えうるものと信じる.時代の要請に応える病診連携の羅針盤として,本書を世に送りたい.

  2018年3月
和田忠志

目次

◆特別対談:連携担当者の「極意」と「心得」

Ⅰ.病院・在宅医療連携の重要性
  1 なぜ,今,在宅医療連携か
    A.病院医療の確固たる地位
    B.専門医療の重要性について
    C.在宅医療連携は病院の専門医療機能を高め得る
    D.病院の在宅医療支援機能
  2 拠点病院の在宅医療連携 ①
     ─どう地域にアプローチするか─
    A.愛媛県のがん対策
    B.愛媛県における在宅医療支援体制の整備
    C.地域がん患者支援における「在宅緩和ケアコーディネーター」
  養成の重要性
    D.「がん緩和ケア」「がん在宅医療」連携における今後の課題
  3 拠点病院の在宅医療連携 ②
     ─どう病院内部にアプローチするか─
    A.がん地域連携パスの創設
    B.医師会連携を拠点にネットワーク構築
    C.地域連携室の立ち上げ
    D.緩和ケア外来の開設
    E.緩和ケア病棟の開設に向けて
    F.地域のバックアップベッドとしての緩和ケア病棟
    G.自宅療養を見越したケアの構築を行うことの重要性
    H.「患者を地域で支えるケア」は 安定した病棟運営につながる
  4 医師会が期待する在宅医療連携
     ─退院時カンファレンスを通して顔の見える関係から
      役割,能力の見える関係へ─
  5 自宅に帰れる患者をどう見出すか?
    A.退院後訪問指導を病棟看護師が行う
    B.在宅医療従事者に相談する
    C.患者の歴史を考慮する
    D.かかりつけ医療を活かす
  6 在宅療養現場に患者を帰すにあたって
    A.とりあえず退院する(とりあえず在宅療養を開始する)
    B.在宅医療における意思決定支援
    C.病院の連携担当者は在宅療養の入口を周到に行うほうが有利である
    
Ⅱ.病院や職種の特性を活かした支援の実際
  1 在宅医療を支援するバックアップベッドの重要性
    A.「ときどき入院,ほぼ在宅」がキーワード
    B.かかりつけ医が在宅医療について不安に思っていること
    C.救急担当医と在宅医療担当医との相互不信の現実
    D.在宅医療を支えるバックアップベッドの整備
  ─名古屋市医師会の試み─
  2 急性期病院と在宅医療連携 ①
      ─急性期病院と在宅医療との隔たりから─
    A.病院→在宅の流れから起こりがちなこと
    B.在宅→病院の逆の流れでみられる状況
    C.急性期病院内での強制力を発揮して
  ─名古屋第二赤十字病院での例─
    D.職員教育─名古屋第二赤十字病院での取り組みの例─
  3 急性期病院と在宅医療連携②
     ─地域医療連携の充実への歩み─
    A.在宅医療を行う医師の支援を行うまでの経過と取り組み
    B.在宅医療支援を行うことでの変化
    C.今後の課題
  4 中小病院と在宅医療連携
    A.地域に密着した中小病院の役割
    B.在宅療養支援病院とは
    C.地域の在宅療養支援診療所との機能連携
  ─機能強化型在宅療養支援診療所・病院─
    D.かわな病院地域包括支援センターの取り組み
    E.かわな病院緩和ケア在宅療養支援センターの取り組み
    F.地区医師会,病院,行政,地域の介護事業所などとの
  連携の取り組み
  5 医療過疎地の病院における在宅医療連携
    A.医療過疎地の病院医療の特徴
    B.医療過疎地における病院の果たすべき機能
    C.医療過疎地の病院のあり方について
  6 在宅医療連携における病院医療ソーシャルワーカーの役割①
     ─家に帰ることを目指す急性期病院の医療ソーシャルワーカーの退院支援─
    A.医療ソーシャルワーカー(MSW)と退院支援
    B.在宅療養を可能にするかどうかは「医療」よりも「生活」の問題
    C.在宅療養に向けられない問題とは
    D.在宅療養に向けてMSWの背中を押す支援
    E.今後に向けて
  7 在宅医療連携における病院医療ソーシャルワーカーの役割②
     ─緩和ケアの在宅医療連携における 病院医療ソーシャルワーカーの役割─
    A.在宅療養の選択へ向けた患者・家族への支援
    B.在宅療養へ向けた院内専門職への連携と合意形成
    C.患者と家族中心の地域におけるネットワーク構築
  8 在宅医療連携における病院医療ソーシャルワーカーの役割③
     ─地域の中小病院を中心とした約20年の実践から─
    A.医療ソーシャルワーカー(MSW)が在宅医療とかかわる
3つの場面
    B.在宅医療連携において病院のMSWが果たす役割とは
    C.外来,在宅におけるMSWの位置づけの明確化と
  積極的な配置を目指して
  9 高度急性期病院における連携看護師の役割
     ─patient flow management─
    A.名古屋第二赤十字病院の取り組み
    B.患者支援センターとは
    C.患者支援センターの役割
    D.早期退院支援を行う上での問題と対策
    E.退院の考え方
    F.退院支援体制構築に向けた課題
  10 在宅医療連携における中小病院看護師の役割
    A.かわな病院・緩和ケアサポートチームについて
    B.緩和ケア患者の退院支援
    C.これからの病院看護師の退院支援
  11 病院リハビリテーション部による退院支援
    A.リハビリテーションの立場から
    B.地域特性と北島病院の紹介
    C.医療と在宅療養をつなぐための
  リハビリテーションチームアプローチの展開
    D.在宅療養を前提とした入院から退院までのアプローチの実際
    E.自宅復帰支援を通した地域包括ケアシステムづくりへの貢献

Ⅲ.退院調整の実際 ─ effective discharge management ─
  1 退院時カンファレンス
    A.長崎大学病院緩和ケアチーム
    B.病院スタッフと地域の医療従事者との連携
    C.在宅医療スタッフに配慮したカンファレンス開催
  2 退院前訪問指導 ─ 看護師の立場から
  3 退院患者の継続支援 ─ 退院後訪問活動の実際
    A.背 景
    B.トランジショナル(移行期)・ケアのケアプログラム
    C.TCT介入患者の状態把握・アセスメントのポイント
    D.具体的な看護アプローチ
    
Ⅳ.病院の行う在宅療養支援とは
  1 「在宅医療支援病棟」のあり方
    A.在宅医療支援病棟とは
    B.在宅医療支援病棟の体制
    C.在宅医療支援病棟におけるアドバンス・ケア・プランニング
    D.病棟開棟後の経過状況(開棟後4年までの実績)
    E.在宅医療支援病棟と地域包括ケア病棟
    F.地域在宅医療支援拠点としての役割
  2 地域包括ケア病棟における在宅支援
    A.地域包括ケア病棟の誕生
    B.地域包括ケア病棟の在宅支援の実際
  3 急性期病院における在宅医療支援入院の受け入れについて
    A.在宅医療支援入院プロジェクト
    B.在宅医療患者の入院の状況
    C.入院中に行っていること
  4 精神医療退院支援
    A.どうしても入院が必要な場合
    B.「寛解」から「リカバリー」へ
    C.アウトリーチ支援
    D.多職種チーム
    E.ストレングスモデル
  5 ICT(情報通信技術)①─在宅医療連携におけるICTの重要性─
    A.ICTとは
    B.ICTの活用─情報の結合と共有─
    C.ICTの活用─ビッグデータの作成とその解析─
  6 ICT(情報通信技術)②─在宅医療分野における長崎「あじさいネット」
     の取り組み─
    A.ICTを使った医療情報ネットワークの普及
    B.在宅医療や介護分野におけるICT利用
    C.ICTを使った在宅医療情報共有システムの課題
    D.在宅医療における「あじさいネット」の取り組み
  7 ICT(情報通信技術)③─病院スタッフが在宅医療で活躍できる
     医介連携専用SNSの実際─
    A.在宅医療に最も適したICTである医介連携専用SNS
    B.医介連携専用SNS を活用した病院スタッフの活躍の実際
    C.将来の地域包括ケアシステムにおける
      医介連携専用SNSの可能性
    
Ⅴ.これからの病院・在宅医療連携を見すえて
  1 病院・在宅医療連携研修の実際
    A.誰が在宅医療を学ぶべきか
    B.病院・在宅医療連携研修会において期待される効果
    C.決定から実施までのプロセス
    D.研修会のプログラム構成
  2 欧米におけるトランジショナル・ケアの現状
    A.トランジショナル・ケアとは
    B.米国老年医学会のトランジショナル・ケアの立場表明(2003年)
    C.トランジショナル・ケアの主体
    D.各国からのトランジショナル・ケアの報告例
    E.トランジショナル・ケアの考察


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